軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

変えられぬもの

気付けば、一日が終わっていた。

紙。報告書。戦記。地図。

読み、比べ、また戻る。

「……」

積み上がった記録。

勝ち。負け。撤退。反撃。

結論は、重いほど単純だった。

「……地の利、か」

ぽつりと漏れる。

やはり——大きい。勝敗を決める程に。

狭い道に身を隠せる森。

移動を阻む川。見渡せる丘。

あるだけで、変わる。

だが。

「……変えられん」

低く言う。

地形そのものは、どうにもならない。

山は作れない森も、急には生えない。

北部方面は、開けている。

それが前提。

なら——変えられないものに、執着しても仕方がない。

次に速度。

兄の隊。

「……まだ、いい」

少数だが馬がいる。動ける。準備も違う。

だが——

「……俺は、遅い」

ぽつりと漏れる。

歩兵が基本。補給隊には辛うじて馬が居るが速くはない。

馬が欲しい。だが、無い。

増やしている。育ててもいる。

それでも——

「……間に合わん」

今、必要な数には届かない。

使えない物を数えても、意味はない。

地形は変えられない。

速度も、大きくは変えられない。

なら——

「……タイミング、か」

指が地図を叩く。

トン。

補給線が伸びる。そして長くなる。疲弊する。

「……」

その瞬間。

「……後ろを断つ」

低く呟く。

前を倒すのではない。

後ろ。戻れなくする。届かなくする。

「……殲滅じゃない」

ぽつりと漏れる。

「……壊す」

軍そのものではなく——形。流れ。

それしか、思い付かない。

正面から砕く力は、無い。

なら——崩す。

一歩、間違えば。

「……出たとこ勝負、か」

小さく息を吐く。

確実ではない。

「……今ある手では、これが最善か」

視線を落とす。

兄上なら、どうする。

一瞬、そう考え——首を振る。

「……今は、俺だ」

静かに言う。

出来る事。使える物。その中で、決める。

完璧ではない。

だが——戦は、そういうものなのかもしれない。