作品タイトル不明
繰り返された形
紙をめくる。一枚。また一枚。
北部方面。
「……多いな」
ぽつりと漏れる。
数十回の小競り合い。局地戦と大規模侵攻。
規模は違えど——繰り返されている。
視線が細くなる。
被害は、村、畑、備蓄。
「……深い」
毎回、軽くはない。
やはり——地形。攻めやすい。守りにくい。
開けた土地で進める。だが、防ぎきれない。
ページを追う。
侵攻速度。
「……早い」
補給より先に、前へ出る。
だから——
「……伸びる」
伸び切った補給線。そこを突かれる。
押し返し、勝つ。守る。
だが——
「……その先が、無い」
小さく漏れる。
反撃は出来ても、侵攻は続かない。
今度は、押し返した側の補給が追いつかない。
つまり。北部方面は……勝っても、削られる。
消耗が大きい。
紙を置く。
次、領都方面。
数は、少ない。直接侵攻。
前回を含めても、数回。
理由は明白。
深い森と二本の街道。
攻めにくい。そして——守りやすい。
小さく頷く。
なら。
「……今回も」
思考が繋がる。領都直撃は、薄い。
二本の街道。守りに徹すれば——防げる。
問題は、そこではない。
北部が引いた後。
「……追うか」
旧領都へ、そのまま。あるいは……南下か。
そこだ。指が地図をなぞる。
もし、南下。北部方面から、側面。
逆に、そのまま北へ進むなら——
「……兄上と俺か」
配置が活きる。
中央。側面。
「……合っているな」
ぽつりと漏れる。
戦略としては、通る。
大きな破綻も——今は見えない。
だが。紙の上で、指が止まる。
「……本当に、それだけか?」
低く呟く。
過去は、過去。今回は——
「……兄上が、いる」
そこだけが、違う。視線が落ちる。
報告書。戦記。地図。
今まで通りなら、読める。
「……今まで通り、か?」
小さく息を吐く。
「……」
そこにだけ。まだ、答えが無かった。