軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

積み重ねの中

書庫。扉を開けた瞬間、乾いた紙と木の匂いが鼻を抜けた。

何度見ても、思っていたより広い。

壁一面。棚。積まれた本。束ねられた報告書。

「……ある、か」

小さく呟く。

農業や制度関連ばかりと思っていたが——違う。

奥の分類。年代別。領地別。戦術。戦略。

指先で背表紙をなぞる。

「……こっちか」

視線が止まる。戦果報告書。過去の戦。

さらに隣。戦術。戦略。戦記。

「……まずは」

少し考える。

「……実際、か」

選ぶのは報告書。理論より、結果。

どう戦い、どう負け、どう勝ったか。

机へ運ぶ。かなり重い。

開く。古い紙。擦れた文字。

読み進める。

「……ほう」

思っていた以上に、細かい。

兵数。地形。損耗。判断。

勝った戦だけではない。

負けた戦。撤退。補給不足。

「……そこも、残しているのか」

小さく漏れる。

都合の良い話だけではない。

旧北領との共同戦線。

視線が止まる。

「……共同、か」

昔は分かれた土地。だが、今は同じ側。

その時の戦。兵の流れ。指揮系統。

「……流石だな」

ぽつりと漏れる。

残すべきものを、残している。

ページをめくる。一つ、また一つ。

気付けば、時間が過ぎていた。

視線を上げる。

今度は、本棚。

戦記。戦術書。戦略書。想像以上に、多い。

「……面白いな」

小さく笑う。

知らなかっただけか。

農地も、民も、制度も重要。

だが——戦もまた、積み重ね。

今まで読まなかった事が、少し惜しくなる。

一冊、手に取る。

「……さて」

まだ、時間はある。

なら——読めるだけ、読む。

答えが無いなら。過去に、探せばいい。

静かな書庫で、紙をめくる音だけが続いていた。