軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

近づく地

エドワルドは短く指示を出した。

数十名。最小限の随行。

準備が整い次第、出る。

領都へ。

言葉はそれだけで足りた。

動きは早い。

兵は静かに支度を整え、列を組む。

やがて出発。前線拠点を離れる。

雪はまだ残っていた。

だが固くはない。踏めば沈む。崩れる。

日差しは柔らかくなり、風も痛みを失っている。

その代わり——足元が重い。

泥。

溶けた雪が道を変え、進みを鈍らせる。

踏み出すたびに、靴が取られる。

進まない。だが止まるわけにもいかない。

森を抜ける。枝先には、小さな芽。

まだ硬いが、確かに膨らんでいる。

春は近い。だが地は、まだ冬の名残を引きずっていた。

冷えた土に、湿った空気。重い足取り。

数日。速度は上がらない。

予定より遅れながらも、進む。

やがて、領都の外縁が見える。

低い建物。煙。人の気配。

一行は足を止めない。

その姿は——泥にまみれていた。

衣も、靴も、裾も。

乾いた白より、よほど厄介な汚れ。

「……」

雪より、質が悪い。

落ちない、重い。まとわりつく。

エドワルドは何も言わない。

ただ、前を見る。

領都。そこに——次がある。

どうにか、領主館へ辿り着く。

門をくぐり、石畳は乾いているが、足元は重いまま。泥が離れない。

「……」

息を吐く。

雪中の行軍より、時間を取られた。

溶けた道は底が見えない。踏めば沈み、抜けば絡みつく。

焚き火も満足に使えない。

湿り、燃えず、煙ばかりが立つ。

むしろ、雪の方が扱いやすい。

踏み固め、場を作り、火を起こせる。

泥は——それすら許さない。

足を止める。

その時、視線の先に、クラウス。

何かを言いかけ——

止まる。

「……」

一行の姿を見て、理解した。

泥にまみれた装備。重い足取り。

疲労の残り方。

短く、手を上げる。

「先に、湯を使え」

それだけ。

「……」

「休め」

付け足すように、もう一言。それ以上は、無い。指示は簡潔。だが、十分だった。

エドワルドは頷く。

言葉は交わさない。

今は——それでいい。