作品タイトル不明
届きかけた答え
前線拠点。
雪はほとんど消えていた。
残るのは、湿った土と鈍い空気。
エドワルドは地図を見下ろす。
隣国国内で、増えた印。村。町。発生地点。
指でなぞる。
……繋がらない。位置が飛んでいる。発生らしき日付もバラバラ。水路でもない。街道でもない。
だが——増え方は揃っている。
同時期に、複数箇所。
……偶然ではない事は解るが。
思考が進む。
何かに乗っているのか。人か。物か。人なら動線が解るはずだが。
物か?いや。物も人が運ぶ。動線が解る。しかし……
一拍。
……やはり物だ。水源は一致しない。接触も薄い。食料品でもない。
「……なら」
指が止まる。
「……流通」
運ばれている何か。浮かぶ。
「……薪」
各地で使われる。燃やされる。
「……あり得るのか?」
小さく頷く。
「……いや」
首を振る。
「……違う」
薪で、人が死ぬ。説明がつかない。
思考が止まる。
それでも、残る。
「……流れは、そこだ」
完全ではない。
だが、近い。
「……足りん」
低く落とす。
あと一つ。あと一歩。視線を上げる。
違和感は消えない——答えには、届かない。
思考が途切れる。足音。
一通の文が差し出される。
「……領都より」
受け取る。封を見れば、分かる。
兄のクラウス。
開く。
目を走らせる。
父からの文は、届いているな。
——と、前置きがあるが続きは。
領都近郊の防衛態勢について、話をしよう。
淡々とした書き出し。いつも通りだ。
雪解けが始まっている。
動き出すなら、時期は近い。
時期はともかく。
今のうちに、打ち合わせておくに越した事はない。
紙を持つ手が、わずかに止まる。
軽い。あまりにも。
だが——エドワルドはゆっくりと文を折る。
視線が地図へ戻る。
北部方面。領都。街道。
先程までの思考。流通。薪。
一瞬、重なるが繋がらない。
「……領都、か」
ぽつりと漏れる。
エドワルドは顔を上げる。
戦は、いつか始まるがまだ、見えていない。