作品タイトル不明
持ち帰るもの
「エドワルド様。そろそろ冬が本格化します。戻る準備をなさる頃合いかと」
レオンが静かに告げる。
「……そうだな」
エドワルドは頷く。
「そろそろか」
窓の外を見る。
冷たい空気。
冬は、もうすぐそこだ。
「戻る準備をする。必要な物を買い込め」
「はっ。すぐに手配致します」
レオンが頭を下げ、動き出す。
エドワルドは一度、視線を落とした。
そのまま歩き出す。
「エドワルド。戻る準備を始めたのか?」
声が掛かかり振り返る。
「兄上」
クラウスがそこにいた。
「はい。本格的に冬が始まりますと、戻るのも難しくなりますので」
「……そうだな」
クラウスは軽く頷く。
「必要な物があれば、言え」
「ありがとうございます」
「積み込みは文官達も使え。人手は足りている」
「助かります」
一瞬の間。
「それと」
クラウスが続ける。
「まだ手元には無いが、北部方面の防衛体制が決まり次第、お前の所にも早馬で送る」
「……そうですか」
エドワルドは頷く。
「助かります」
「……」
「敵は、来ると思うか?」
クラウスが何気なく問う。
「……来るでしょう」
即答だった。
「前回の失敗があります。軍としても、面目を潰されております」
「……だよな」
クラウスは苦笑する。
「しかも今回は、前回とは比べ物にならんだろうな」
「……恐らくは」
エドワルドも同意する。
「春明け辺りか……」
クラウスが空を見上げる。
「多少のズレはあるかもしれませんが……」
エドワルドは続ける。
「その辺りか、それ以降に」
「……だよなぁ」
短く息を吐く。
「まあ」
クラウスが肩をすくめる。
「気を付けて帰れ。落馬して、くだらん怪我するなよ」
「……勿論です」
エドワルドはわずかに笑う。
「兄上も、体調にはお気をつけて」
「ああ」
短い返事。
「じゃあ、俺も少し手伝うか」
クラウスが言う。
「……宜しいので?」
エドワルドが一瞬驚く。
「いいじゃないか」
軽く笑う。
「時間はある」
「……では、お願いします」
「おう」
二人は並んで歩き出す。
荷の積み込みと人の動きに声。
いつもの光景。
エドワルドは箱を持ち上げる。
その手が、一瞬だけ止まる。
エドワルドは荷を運びながら、視線を落とした。
違和感は、消えていない。
だが——それを掴むには、何かが足りない。
「……」
エドワルドは、そのまま手を動かし続けた。
答えを持たないまま。
それを抱えて、帰るために。