軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

混ぜるという事

「上手く接触出来た模様で、三日後だそうです」

報告を受け、クラウスは小さく頷いた。

「……ギリ間に合うな」

机に視線を落とす。

「本来なら道を切り開いてからだったが……」

「はぁ」

文官が頭を下げる。

「人が担げるだけ担いで持ってくるように指示は出しましたが……」

「それでいい」

クラウスはあっさりと言った。

「渡す薪の束に」

一拍置く。

「一巻きにつき、その木を最低、二本ずつ紛れ込ませろ」

「……承知しました」

迷いは無い。

「……しかし」

クラウスが少し言いにくそうに口を開く。

「何故、大隊長自ら……?」

「……ああ、それですか」

文官は軽く息を吐いた。

「その元老兵を紹介してもらおうと思いましたら話をしたら……」

少しだけ苦笑する。

「“俺がやる”と駄々を捏ねられてな」

「……」

「私では、剣で勝てませんし……」

「……どうせ」

クラウスは淡々と言う。

「“俺に勝ったら紹介してやる”とでも言われたんだろう?」

「……はい」

「まあいい」

それ以上は追及しない。

「三日後だ」

短く言った。

三日後。

「おう、来たか」

例の老人が手を上げる。

「じゃあ荷馬車に乗るぞ」

「……ああ」

商人は頷き、乗り込む。

軋む音と共に、馬車は進み出した。

しばらくして。

「……ここか?」

森の外れ積み上げられた木材。

「そうだ」

老人は顎で示す。

「切った木をここで保管して乾かす。持ち込みの時は、細かくは見ねぇ。ここから薪になる段階で、数を管理し始める」

「……ほぉ」

商人は周囲を見渡す。

「となると……念の為に聞くが」

「分かってる」

老人はニヤリと笑う。

「まだまだ取れる。まあ、生木が多くなっちまうがな」

「少しぐらいなら構わん」

即答だった。

「……よし」

老人は手を差し出す。

「金を寄越せ。門番に話をつけてくる」

「おう」

袋を放る。

「ほら、持ってけ。足りるか?」

「十分だ」

老人は中身を確かめ、頷く。

「よし」

振り返る。

「進め!」

「……あの前だ。積み込むぞ!」

商人達が動き木が運ばれる。

そして——

紛れ込む。誰にも気付かれずに。

「……」

商人はそれを見ている。

気付かない。

ただの“生木”にしか見えない。

「……どうだ?」

老人が振り返る。

「上手く行っただろ?」

「ああ」

商人は満足そうに頷く。

「助かったぜ」

少し間を置く。

「その……」

「また欲しかったら」

老人は肩をすくめる。

「あの安飲み屋の店長に話せ。そうすりゃ、俺の耳に入る」

「……分かった」

商人は頷く。

「この足で国に帰る。また頼む」

「おう」

軽い返事。

「クラウス様」

文官が報告に来る。

「商人は、国に戻ったとの事です」

「……そうか」

クラウスは短く答えた。

「よし」

視線を落とす。

「後は、噂を待つか」

「……」

「報告通りなら」

わずかに口元が上がる。

「また来るだろうな」

「……そうですな」

文官は頷く。

「まだ、渡すのですか?」

「当然だ」

即答だった。

「生木に混ぜる。それだけでいい」

「……承知しました」

「来たら、同じ様に対応しろ」

「はっ」

文官は頭を下げ、部屋に静けさが戻る。

クラウスは机を軽く叩く。

トン——

「……さて」

小さく呟く。種は、撒いた。

後は——どう広がるか、だ。