軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

取引の匂い

領都の外れの寂れた安飲み屋。

灯りは弱く、酒も薄い。

「ちぃっ……面会もさせてくれねぇのかよ」

卓に肘をつき、男が吐き捨てる。

「まあ、そう言うな」

向かいの男が肩をすくめる。

「俺らの拠点はあっちだ。要は敵国の商人だぞ?簡単に会わせてくれる訳ねぇさ」

「しかしよ」

酒をあおる。

「金になる話なのによ」

「……」

「まあまあ。飲み過ぎるな」

苦笑混じりに言う。

「不作で酒も制限されてるんだ。酔うにも酔えねぇよ」

「……そうだな」

軽く頷く。

「じゃあな」

席を立つ。

「おい、お前さん」

背後から声が飛ぶ。

「あー?」

振り返る。

そこにいたのは——

頬に古傷を残した老人。

「何だ?」

「さっきの話だがな」

老人はニヤリと笑う。

「金になるなら、俺にも一枚噛ませろ」

「……あー?」

男は眉をひそめる。

「聞いてたのか?」

「ばーかー」

老人は鼻で笑う。

「そんなでかい声で話してりゃ、聞きたくなくても聞こえるさ」

「で?」

身を乗り出す。

「何を探してる?」

「……薪だよ。薪」

「何だよ。薪かよ!」

拍子抜けした様に言う。

「必要なんだ」

「……」

老人は少しだけ考えた。

「……それならよ」

声を潜める。

「少し生木が混じってても平気か?」

「……まあ、少しぐらいならな」

「なら、手に入るコネあるぞ」

「……本当か?」

「おう」

老人は笑う。

「お前さん、正面から領主に会おうとしただろ?」

「そりゃ……」

「だから追っ払われるんだよ」

指で卓を叩く。

「よーく考えろ!薪は資源だ!大事なもんだ!そう簡単に売る訳ねぇだろ?」

「……じゃあ、どうする?」

男が身を乗り出す。

「簡単だ」

老人は酒を一口飲む。

「薪になる前の物を頂けばいい」

「……どういう事だ?」

「乾燥中の木だよ!まだ薪になってないやつ。それを“譲ってもらう”」

「……」

男は考える。

「……確かに」

小さく頷く。

「だが、どこに窓口がある?」

「窓口は俺だ」

即答だった。

「……あ?」

「俺は元兵士だ」

軽く胸を叩く。

「しかも補給隊にいた」

「……!」

男の目が変わる。

「という事は……」

「ああ」

老人はニヤリと笑う。

「手に入れられる……どれくらい必要だ?」

「荷馬車三台分だ」

「……」

一瞬の沈黙、そして。

「大丈夫だ」

あっさりと言う。

「だがな……」

少し顔をしかめる。

「ここの領主はケチでな退職金もその……」

「……ああ」

男はすぐに理解した。

「なるほどな」

「よし、飲もう。それに小遣いも払うぞ」

杯を持ち上げる。

「それ以外にもな」

老人が続ける。

「金で黙らせなきゃならん奴が、数人いる」

「……」

男は頷く。

「任せろ」

「準備金として渡す」

指を折る。

「物が手に入ったら薪代。それと」

少し笑う。

「終わった後に、最後の金だ。どうだ?」

「……」

老人は一瞬考え——そして。

「よし、乗った!」

力強く言った。

「三日後だ」

指を立てる。

「午後、十四時前後。ここで会おう。金を持って来い。その足で取りに行くぞ」

「……解った」

男も頷く。

二人の間に、笑みが浮かぶ。

安い酒に薄暗い店。

そこで交わされた話は決して、軽いものではなかったが誰も気付かないまま何かが、確実に動き出していた。