作品タイトル不明
繋がり始める思考
「……」
ページをめくる音だけが、静かに部屋に響く。
エドワルドは手にした本から目を離さない。
「敵国の本とは言え……流石だな」
小さく呟く。
「その気候や地勢を反映した建築学、か」
指で図面をなぞる。
「……確かに。冷静に考えれば、理に適っている」
一度、本を閉じる。
そして、ふと視線を落とす。
「……俺が前線で造ったものは」
ぽつりと零す。
「ここ領都の再現……か」
思い出す配置と構造に防備。
「……それで良かったのか?」
短期的には問題は出ていない。
実際、持ち堪えている。
「……」
少しだけ目を細める。
「考慮は必要だな」
次の本を開き次のページ。
「……橋梁構造か」
図を見つめる。
「俺が通った街道には、大きな川は無かったが……」
指で線を追う。
「橋作りは勿論、建築にも応用が効くな」
構造と支え方。力の流れ。
「……これは使える」
次の本。
「水利……井戸の構造」
「……」
読み進める。
「そのまま、うちの領でも使えるな」
水の流れに管理方法。それに伴う維持。
本を置き天井を見上げる。
「……敵としてしか見ていなかったが」
ゆっくりと言葉を選ぶ。
「これらが普通に買えるとはな」
小さく息を吐く。
「……これが、隣国の強さか」
静かな納得。
だが——視線が、再び本へと落ちる。
橋に水。そして構造。
「……ん?」
手が止まる。
「……水源関係と……橋?」
頭の中で、何かが繋がり、思考が加速する。
「……まさか」
ぽつりと呟く。
「兄は……」
言葉が途切れる。
「向こうで情報を収集して仕掛けたのか……?」
橋の破壊に井戸の異常。それを引き金に村の崩壊。
「……」
だが、すぐに首を振る。
「いや……それにしては、対応が早すぎる」
目を細める。
「領都に居る間に準備をして向こうで確認してから、やったのか……?」
沈黙。完全には分からない。
確実に一つ、言える事がある。
「……繋がっている」
ぽつりと呟く。
点と点が、線になり始めている。
本を閉じる。
「……聞かねばな」
静かに立ち上がる。
「その辺りを、詳しく」
扉へと向かう。
「兄に」
その目は——先程までとは違っていた。