軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

静かな決断

「ほぅ……ここは景色が良いな」

シュトライヒは足を止め、遠くを見渡した。

山々が連なり、川が細く光を反射している。

「だろう?」

案内役の男が少し誇らしげに笑う。

「もう少し前に来てくれりゃな。山は紅葉で真っ赤だったんだがな」

「いや」

シュトライヒは目を細めた。

「まだ少し残っているな」

わずかに色付いた木々が風に揺れている。

「他はどんな所へ案内してくれるんだ?」

「この先に洞窟がある」

男は顎で示した。

「夏場は寒いくらいだ。食料なんかを保管してる。中々にでかい洞窟だぞ」

「……ほぅ」

興味を示す様に頷く。

しばらく歩くと、口を開けた様な洞窟が見えてきた。

「……確かに」

入口に立つと、冷たい空気が流れてくる。

「冷たいな」

「そうだろ?」

男が笑う。

「今は外も寒くなってきてるがな。夏でもこんな風が吹くんだ」

「それで食料を保管している、か」

「ああ」

男は頷いた。

「昔はここが一番使われてた。肉も穀物もな」

「……」

「今は?」

シュトライヒが何気なく問う。

男は少しだけ視線を逸らした。

「……減ったさ。使う量も、保管する量もな」

「……そうか」

シュトライヒは短く言った。

「済まなかったな」

「いや、いいんだ」

男は肩をすくめる。

「気にするな」

そして、ぽつりと続けた。

「この村は、そのうち無くなる」

風が吹く。

「俺もな。本格的な冬の前には出るつもりだ」

「……そうなのか?」

「ああ」

迷いはない声だった。

「これ以上、ここにしがみついても仕方ねぇ」

「……」

「橋が出来て、流れが変わった。それだけの話だ」

男は軽く笑った。

「まあ、仕方ねぇさ」

「……」

シュトライヒは何も言わない。

ただ静かにその言葉を聞いていた。

「さて」

男が手を叩く。

「戻るとするか」

「ああ」

短く返す。二人は宿へと戻った。

部屋に入り扉が閉まると空気が変わる。

「……で?」

護衛役が口を開く。

「どうですか。何か思いつきましたか?」

シュトライヒは少しだけ間を置いた。

「……そうだな。今日は何を買った?」

「服に油。それと木材を少々」

「……そうか」

短く頷く。そして。

「なら——」

ゆっくりと口を開く。

「村の者を集めて、飲み会を開く」

「……は?」

護衛役が固まる。

「飲み会だ。酒を振る舞え。酔わせろ」

「……」

「酒が飲めない者にも、飲み物を出せ」

「……それは」

「眠り薬を混ぜる」

静かに言った。

「薬草だ。寝かしつける」

「……」

護衛役の表情が固まる。

「その後」

シュトライヒは淡々と続ける。

「あの橋を、下から燃やす」

「……へ?」

思わず声が漏れる。

「言葉の通りだ」

視線が揺るがない。

「橋は要だ。落とせば、流れは止まる」

「……」

「そして」

少しだけ口元が歪む。

「俺達は着ている服を一部焦がし、それを川に流す」

「……偽装、ですか」

「そうだ」

「事故に見せる。火事か、焚き火か、流れ着いた火種か。原因は曖昧でいい」

「……」

護衛役はゆっくりと息を吐いた。

「……成る程。読めました。準備に移ります」

「ああ」

シュトライヒは窓の外を見る。

静かな村。灯りも少ない。人も少ない。

「……」

小さく呟く。

「よく眠れ」

その声は、誰にも届かない。