軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

切り分ける影

「武器工房の人員をざっくりですが……約三十名ほど」

報告が上がる。

シュトライヒは地図の上に指を置いたまま、小さく息を吐いた。

「……多いな」

三十。

一度に崩すには多すぎる。

「だから分ける」

ぽつりと呟く。

護衛役が視線を向ける。

「何か思いつきましたか?」

シュトライヒはわずかに口元を歪めた。

「手間は掛かるが五名ほど、強盗に見せかけてやる」

「……強盗?」

「まずは一人暮らしの奴からだ」

淡々とした声。

「家族がいない。騒ぎも小さい。消えても“偶然”に見える」

護衛役がゆっくりと頷く。

「……成る程。狙いは?」

「一気に減らす必要はない」

シュトライヒは指で机を軽く叩く。

「少しずつだ。“不運”を積み重ねる。そうすれば——」

視線が細くなる。

「誰も気付かない」

「……」

「工房は回らなくなる。原因も分からずにな」

護衛役は息を吐いた。

「……分かりました。段取りを整えます」

「ああ」

シュトライヒは短く答えた。

「雑にやるな。必ず“強盗”に見せろ」

「承知しました」

数日後。

「準備、完了しました」

報告が入る。

シュトライヒは椅子に腰掛けたまま、顔を上げる。

「内容は?」

「まず、この五名」

紙が差し出される。

名前。

年齢。

住まい。

「飲み仲間です」

「……ほう」

「同じ工房で働いておりますが、終わった後に酒場で顔を合わせる程度の関係です」

「……いいな」

シュトライヒは頷いた。

「繋がりはあるが、深すぎない」

「はい」

護衛役が続ける。

「帰り道、もしくは家に着いたところを狙います。時間帯は夜。人目が少なく、騒ぎになりにくい時間です」

「……いい」

シュトライヒは立ち上がる。

「やり方は?」

「複数人で襲い、金品目的に見せます」

「やる、か」

「はい」

一瞬、沈黙。

だが——迷いはない。

シュトライヒはゆっくりと頷いた。

「よし。抜かるなよ。深追いはするな。欲張ると崩れる」

護衛役が深く頭を下げる。

「承知しました。ご報告をお待ちを」

夜。

町は静かだった。

酒場から、笑い声が漏れる。

その中に、五人の男たちがいた。

「ははは!」

「今日も疲れたな!」

「一杯やって帰るか!」

どこにでもある光景。

誰も疑わない。

誰も気にしない。

その帰り道。

暗がりの中に“何か”が待っている。

離れた場所。屋根の上。

シュトライヒは静かに町を見下ろしていた。

灯りが揺れ人が行き交ういつも通りの夜。

「……始まるな」

小さく呟く感情は無い。ただ、確認するだけ。

「一つ目だ」

それがどうなるか。どう崩れるか。

全て、計算の内。

「さて」

わずかに目を細める。

「どこまで持つ」

その視線の先で静かに。

見えない戦が、進んでいた。