軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

じゃじゃ芋、収穫

乾燥パスタの話題が、ようやく落ち着き始めた頃。

畑に立つエドワルドは、足元ではなく――葉を見ていた。

「……黄色くなってきてるな」

兄が、畝を挟んでそう言う。

「はい」

エドワルドは、頷く。

「枯れ始めています。収穫時期だと思われます」

兄は、しゃがみ込み、一本の株を指で弾いた。

「こういうのは、見た目で分かるもんなんだな」

「ええ。地上が終わる頃、下が出来上がっています」

「なるほど」

兄は、納得したように立ち上がる。

「じゃあ」

剣ではなく、鍬を手に取った。

「やるか」

収穫は、思ったよりも静かだった。

土を崩す。

株を引く。

転がり出る、丸い塊。

「……おお」

最初に声を上げたのは、兄だった。

「出てくるな」

「はい」

エドワルドは、抑えた声で答える。

「複数ついています」

一株。

また一株。

土の中から、次々に現れる。

「これは……」

兄は、思わず笑った。

「楽しいな」

「そうですね」

純粋な労働。

成果が、目に見える作業。

剣の稽古とは、違う満足感だった。

途中から、農家も加わった。

「おお、出来とるな」

「悪くないぞ」

声は控えめだが、表情は明るい。

「数、測りますか?」

エドワルドの問いに、兄が頷く。

「やろう」

計量は、倉の前で行われた。

一袋、また一袋。

数字が、少しずつ積み上がっていく。

「……これで、最後です」

農家がそう言い、秤から袋を下ろす。

兄が、帳面を見る。

「合計――」

一瞬、確認してから。

「八十三キロだ」

「……八十三」

誰かが、呟く。

決して、膨大ではない。

だが、小さくもない。

「初年度としては、上出来だな」

兄は、素直にそう言った。

「はい」

エドワルドは、胸の奥で、静かに息を吐く。

失敗しなかった。

それが、何よりだ。

「これ、どう使う?」

兄が、尋ねる。

「すぐ食べる分」

「保存する分」

「種に回す分」

エドワルドは、即答した。

「三つに分けます」

「迷いがないな」

「決めていましたので」

兄は、少しだけ目を細めた。

「……やっぱり、お前は後ろの人間だ」

その声に、嫌味はなかった。

夕方。

収穫を終えた畑は、少し寂しく見える。

だが、地面の下には、

確かに“成果”があった。

乾燥パスタ。

じゃじゃ芋、八十三キロ。

どちらも、派手ではない。

だが、

「飢えを先送りにできる量」だ。

エドワルドは、空になった畝を見ながら、思う。

急がない。

浮かれない。

けれど――

一つずつ、

確実に。

この領地は、

生き延びる準備を整え始めている。

それだけで、

今日は、十分だった。