軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

前線と後方とその境目

朝の帳簿を閉じて、エドワルドは椅子にもたれた。

「……となると」

指で机を軽く叩く。

「女性兵が増える、か」

昨日のレオンの報告が頭をよぎる。

志願。しかも一人二人じゃない。

増殖中。

「はは……本当に軍になってきたな」

苦笑が漏れた。

本来は“救護隊”のはずだった。

保護して、回復させて、南町や曙町に送り出す。それだけのつもりだったのに。

気が付けば。

槍。盾。クロスボウ。訓練。哨戒。要塞化。

どう見ても——軍だ。

「……まあ、今さらか」

ペンを取り、補給品の一覧に追記する。

・革鎧 四十

・槍 四十

・軽盾 四十

・短剣 四十

・クロスボウ予備 四十

・矢 大量

「予備は多めだな」

装備は壊れるし失くす。血で滑る。

現場に立つと、物はすぐ消える。

「予備が有るだけで安心感が違うしな」

兵はな。

武器が足りないだけで、不安になる。

逆に。

余裕があると、落ち着く。

それだけで生存率は変わる。

「次の補給で輸送して貰うとしよう」

書き終えて、ふと窓の外を見る。

広場では。

元騎士が号令を出し、民兵が槍を構え、

女性兵がクロスボウの装填訓練をしている。

カチン、カチン、と乾いた音。

整然とした列。まるで正規軍。

「……完全な軍隊だなぁ」

思わず漏れた。

俺が目指してたのは、こんなのじゃない。

もっと。

静かで、畑があって、子供が走ってて、

商人が値段で揉めてる。

そういう普通の町だったはずだ。

「少し違うんだよな……」

だが、すぐに首を振る。

「まあ、仕方ないか」

ここは前線だ。元領主館の町。王都寄り。

野盗も出る。難民も来る。

敵か味方か分からない連中も現れる。

安全とは程遠い。

「前線基地みたいなもんだ」

そう考えれば納得がいく。

軍事色が強いのは当然。

戦える町でなければ、生き残れない。

視線を西に向ける。

そこには——曙町。

農地。畑。復旧中の家々。子供の声。

「……やっぱり、あっちが“町”だよな」

曙町は後方。

安全地帯。守られている場所。

だからこそ。

「後方があるから、前線が保てる」

逆に言えば。

ここが崩れたら、曙町も危ない。

ここで止めなきゃ、全部流れ込む。

「……盾、か」

俺たちは。盾をやってるだけだ。

みんなの代わりに殴られてる。

それだけだ。

そう考えると、少し気が楽になる。

「よし」

立ち上がる。

「今日もやるか」

外から声が聞こえる。

「装填!」

「構え!」

「撃て!」

バシュッ!

矢が飛ぶ音。

もう、迷う暇は無い。

理想の町は——後ろにある。

だから。

前線は、泥臭くていい。

血と汗まみれでいい。

「……守れてるなら、それでいい」

そう呟いて、エドワルドは訓練場へ歩き出した。