軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

噂が音になる

保護民を運んでいる商人から、重たい話が入ってきた。

どうやら各地で暴動が起き始めているらしい。

特に酷いのは隣領。

しかも、王都に近ければ近い街ほど荒れているという。

……嫌な場所から燃え始めたな。

食糧不足。

嘘で塗り固めた報告。

税の引き上げ。

条件は、全部揃っている。

後は、誰かが最初に石を投げるだけだ。

「王都には……もう噂くらいは届いているはずだよな」

独り言の様に呟く。

いや、正確には“届いていなければおかしい”。

それとも――

もう父上の元には情報が集まっているのか?

王政への対応は、父上の管轄だ。

そこに俺が口を出すべきではない。

だが、その一方で思う。

だからといって、俺が止まっていい理由にはならない。

王都が動くまでに、どれだけの村が潰れる?

どれだけの人が、声を上げる前に消える?

俺に出来る事は限られている。

だが、限られているからこそ、全部やる。

保護民の受け入れ。

南町の整備。

商人との流れの維持。

傭兵団の管理。

一つでも手を抜けば、ここも同じ運命を辿る。

俺は深く息を吸い、吐いた。

――これはもう「備え」じゃない。

「進行中」だ。

嵐は、もう遠くない。

その頃、父上の元には王政からの文が届いていた。

封を切り、目を通す。

――随分と、呑気な文だ。

「現時点において大きな混乱は確認されず。

各領地においても同様との報告が上がっている」

……か。

父上は、文を机に置いたまま、しばし動かなかった。

時間差があるのは解っている。

情報が上に届くまでに、どうしても遅れは出る。

だが――これは、遅れの範疇か?

「何を言っとるのだ……」

小さく、しかし鋭く呟く。

大きな混乱は起きていない?

各領地も同じ?

「それとも……隣領だけの事だと言いたいのか?」

いや。そんな筈は無い。

父上の脳裏に、商人達から届いた“生の話”が次々と浮かぶ。

村単位の放棄。

兵による強制徴収。

食糧を奪われ、衰弱した民。

それらは、書類の上には一行も現れない。

だが、確実に起きている。

「……上は、まだ“数字”しか見ておらん」

帳簿が崩れ、税が滞り、初めて混乱と呼ぶつもりか。

その時には、もう遅いというのに。

父上は、静かに息を吐いた。

「エドワルドが前に出る訳だ……」

王政が動かぬなら、領として動くしかない。

そして、その動きは――

いずれ必ず、上の目にも触れる。

それが、救いになるのか。

それとも――火種と見なされるのか。

父上は文を畳み、次の指示を書き始めた。

ズレは、もう無視出来ない段階に来ている。