軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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マルタ邸で受け取ったアシュリーからの手紙。中に書かれていたのは、王城への登城要請だった。たぶん、俺が保管している転送・模写魔法陣に関連した話だろう。目前に迫った王競祭に備え、すぐにでも登城することに決めた。

朝食後、『平穏の都亭』を出発し、まずは王都の外へと向かった。王城に呼ばれているのは、シャフトではなく、シュバルツなので、入都の記録を作らなければならない。

それと、“ 覇王樹(サボテン) ”の動きだ。王都内を移動しているときは、常にマップに映る光点を意識し、尾行してくる光点がないかを確認しているが、今のところそのような影は見えなかった。

俺を狩ることを諦めたのか、それとも計画的な襲撃を企んでいるのか。どちらかは分からないが、シャフトとして王都に滞在している内は、決して気を抜くことができないだろう。

王都を出て街道を歩く。俺以外に王都から出てくる光点もなく、周囲を通常モード、FLIR(赤外線サーモグラフィー)モードで確認するが監視の目は見当たらない。

念のためにと上空を見渡すが、飛ぶ鳥一羽も見当たらなかった。やはり、尾行されている様子はない。

ゆっくりと街道から外れ、樹木が生い茂る方へと移動する。周囲からの視線を切れる場所を探し、少しの間、身を隠し続け TSS(タクティカルサポートシステム) を起動してアバター衣装のセットをシュバルツへと変更した。

シュバルツに戻ったことで、追尾とは別に確認しなければならないことがある。

用意しておいたFive-seveNにサイレンサーをつけ、マガジンには射撃演習場で回収してきたハンドガン用のマガジンを挿す。

確認したいのは、この演習用マガジンの光弾が、この異世界でどのような性質に変容しているのか、もしくは演習場そのままなのか、だ。

まずは、ある程度の年輪を刻んだ大樹に向かってダウンサイトし、一発撃ってみる。サイレンサーをつけているので、発砲音は空気の抜ける小さな音しかいないが、確かに光弾は撃ち出され大樹に弾痕を打ち付けた。

大樹に近づき、弾痕を触ってみると、フェイクグラフィックで実際には抉れてはいなかった。攻撃力はゼロか? 狙いを変えて樹木の葉にサイトを合わせ、トリガーを引く。

狙いをつけた葉は光弾の着弾で弾け飛び、粉々に砕け散った。

攻撃力は……あるようだな。

そこからは小さく、細いものから順々に撃っていき、どのくらいの衝撃力、貫通力があるのかを確認していった。

結果として判ったのは、この演習用マガジンを使用した光弾は、貫通力こそ低めだが、素手で殴る程度の衝撃力が発生していることだ。

最終的には、俺自身の手のひらに向けて発砲もしたが、衝撃と打ち付けられた痛みに手が少しの間しびれていた。殺傷能力はないが、射程の長い打撃武器としてみれば、十分有用かもしれない。

今回はFive-seveNというセミオートのハンドガンで試したが、これがP90やSCAR-Hなどのフルオート銃ならば、十分脅威にもなるだろう。

迷宮探索や討伐依頼ではまず使わないが、街中を歩くときには演習用マガジンを最初に装填しておいてもいいかもしれない。

確認を終え、ショルダーホルスターにFive-seveNを戻す。王城へ向かう前にやっておかなければならないのがもう一つ、TSSのガレージから74式特大型トラックを召喚し、荷台に並べてある転送魔法陣と模写魔法陣をギフトBOXへと回収した。

これで確認作業と、準備が完了した。俺は周囲の警戒をしつつ、王都へと向かって歩き出した。

王都へと戻り、第一区域の王城へと向かう。明日から始まる王競祭は、日を追うごとに参加料が高くなるが、初日の参加費用は比較的安く、記念参加とばかりに買い手として参加する都民も多い。

また、会場であるハイラシアを中心として、この時期だけは特別に第三区域や第二区域の露店が第一区域に集まってくる。王都の大通りは、祭りを明日に控えた期待に湧き上がっていた。

「明日はどなたが来られるのだろうな!」

「昨年は第一王子だったわ。今年は陛下が来られるのでは?」

「ガッハッハ! お前ら見てろよ? バッチリ俺様がとってやるからな!」

「 覇王花(ラフレシア) は全員戻ってきているらしいぞ! 第二王子が来るんじゃないか?」

「おい聞いたか? 『黒面のシャフト』が王都に来ているらしいぞ!」

「あの魔石も武器も、リーダぁーにこそ相応しいっす!」

「じゃぁ最終日の大魔力石を出品したのは、本当にシャフト様なのね!」

「二日目の 魔法武器(マジックウエポン) も良い物が多いらしいぞ」

「そうでさぁ! “ 闇の刃(シャドウエッジ) ”も狙うべきでさぁ!」

「『黒い貴公子』様はどこに宿泊されているのかしら? 一目会いたいわぁ」

「あら、あなた会うだけでいいの? 私なら一晩お供したっていいのに」

大通りの道行く人々が、王競祭やシャフトについて話をしているのが聞こえた。王競祭という祭りは、一年で一番大きなオークションであり、出品されるものも非常に高価なものが多い。そして、なにより都民に期待されているのが、主催する王族の参加者だ。

普段は王城からあまり出ることのないクルトメルガ国王や、その王子達。王城から会場であるハイラシアまでをパレード進行し、王競祭の三日間はハイラシアでオークションを見届けるのが毎年の恒例である。

この機会に王族と繋がりを持とうという人々も多く、王族もまた様々な考え、意志を持つものと出会う機会を作ることを望んでいた。

当然ながら、警護を担当する中央第四騎士団にとっては、失敗の許されない期間であり、もっとも気の抜けない三日間になる事だろう。

何という名前だったか、たしか……オード・サマタだったか。盗賊団“ 鬼蓮(オニバス) ”のリーダーを殺った報奨金を貰った時に出会った第四騎士団の副団長。

あの中年の騎士はさぞ気を張って警備計画などを練っているのだろう等と考えながら王城へと続く大通りを進んだ。

「止まれ! この先はクルトメルガ王家の住まう王城だ。何用で参った?」

王城に近づいていくと、城門へと通じる吊り橋の前に立つ衛兵に止められ、誰何の声を掛けられた。何用と言われても、呼ばれてやってきたわけだが、名を名乗ればそれで通れるのだろうか?

「Dランク冒険者のシュバルツです。アシュリー・ゼパーネルより登城の要請を受け参りました」

ギルドカードの提示と共に、名乗りを上げる。

「確認する、その場で待て」

衛兵は俺のギルドカードを受け取り、吊り橋の横に立つ見張り小屋へと向かっていった。中でファイルのような冊子を見ているのが見える、確認が取れたのか、すぐにこちらへと戻ってきた。

「Dランク冒険者のシュバルツ、確認が取れたので通過を許可する。橋の向こうでもう一度ギルドカードと名を伝えてくれ。それと、武器の類と道具袋を持っている場合はそこで預かる」

「わかりました」

ギルドカードを返してもらい、吊り橋を進み、目の前にそびえたつ巨壁で囲まれた王城へと進んだ。