軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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海賊船団” 海棠(カイドウ) ”の本拠地、岩壁の島で救助した少女、ミミ。彼女を連れ、一旦Uボートへと退避する事にした。気絶から目を覚ましたミミの前に幽霊船長ヨーナの姿で出てしまったが、マリーダ商会の迷宮弁当を餌になんとか話が出来る雰囲気を作ることができた。

「ミミ、あの島にはどれくらい前からいたんだい?」

「……二ヶ月く、くらい前です」

「海賊達とは何故一緒にいるんだい?」

「わ、わたしが働いていた商船が襲われて、あの島につ、連れて行かれました」

「あの島にはミミの他に何人くらい連れてこられた人がいるんだい?」

「わ、わたしと一緒に――」

コミュニケーション機能のボイスチェンジャーを使い、俺はヨーナの声をシュバルツともシャフトとも違う、少ししゃがれた声にしていた。そのしゃがれた声に少しビクつきながらも、ミミは俺の質問に答えてくれていた。

ミミの話によると、海棠は襲った船の乗組員の内、若い男女だけを攫い、あの岩壁の島に連れてきていたらしい。ミミは着ていたのは貫頭衣だけだったが、その首には魔力攪乱リングが着けられていた。

他の攫われた人たちも魔力攪乱リングを着けられ、男達は数日間本拠地で囚われた後、最下層にある倉庫に連れて行かれてそのまま戻ってこないらしい。

女達は二つのグループに別れ、一つは男達同様に倉庫へ行き、もう一つは本拠地で色々な仕事をさせられていると言う。

その倉庫というのは中を確認する必要があるな、中で何かをおこなっているのか、それともどこかへ通じているのか。

昨日の段階で囚われている人数は女七名、男五名。話に聞いたとおりだと、男五名はいつ倉庫へ連れて行かれるかわからない状態だ。

女達も夜は海賊達の相手をさせられ、日中は掃除や食事を作らされていると言う。休める時間は深夜遅くから早朝付近のみ。

人数も多く、男女十二人を一度に連れ出すのは難しい。今日明日にも護衛船団はここに現れるだろう。包囲された海賊たちが、攫ってきた男女をどうするか? 人質にするか、倉庫の奥へ連れて行くか、もしくは放置か。

護衛船団は岩壁の島を包囲した後にどう動くだろうか? 船団の帆船では内部まではいけない、内部がどのような構造かを捕虜から聞きだしているとすれば、外部からの魔法攻撃で岩壁の島を破壊する選択肢を取ることも考えられる。

それをされるのはあまり気分がよくない。助ける義理があるわけではないが、話を聞いた以上は何とか連れ出したい。

他にもミミからは海棠のリーダーの話が聞けた。ミミを投げ落とした大男、獅子系の獣人種のカダと言う男は気性が荒く、また飽きやすい。岩壁の洞窟住居の最上部に個室を持ち、飽きたおもちゃを最下層の港に投げ落とすのが癖になっているのだという。

ある程度話が聞けたころには、日も昇り、お昼が近くなる頃だった。「ハラが減ったら喰え」と、新しい迷宮弁当と魔道具の水筒を居住スペースに残し、俺は発令所を挟んで反対側の船長室へと向かった。

昨日の出発から一睡もしていない、このまま休息をとりたいところだが、ミミをいつまでもUボートに残すわけにもいかない。中に人がいると、Uボートを TSS(タクティカルサポートシステム) のドックへ戻せないからだ。

残り十二人の事も考えても、ガレージなり、ドックなりが必要な時に使えないのは困る。幸いにも護衛船団の帆船をターゲットロックした黄色い枠は、まだ俺の視界に浮いたまま動いていない。

護衛船団がこちらに現れる前に中継地点の島へ戻り、ミミを降ろすべきだな。これから間違いなく戦場になる場所と兵器にいつまでも居させるべきではない。

俺はTSSをUボートのコントロールに切り替え、中継地点の島へと向け移動を開始した。

Uボートが中継地点の無人島に到着したのは陽が暮れる少し前だった。潜望鏡で中継地点の島に停泊している船舶を確認すると、ターゲットロックしていない船舶が三隻増えていた。

護衛船団の第一陣のキャラベル風の船舶よりも船体が太く見える。たぶん、アシュリーたち第二陣の輸送船団だろう。

まだ到着して間もないのか、輸送船から大きな木箱やら資材らしき木材を降ろし、中継地点の島へと輸送を繰り返しているようだ。

潜水した状態でUボートを停止させ、居住スペースからミミを発令所につれてくる。ミミは気を失った状態で居住スペースまで運ばれたので、初めて見るUボート内の狭い通路、剥き出しの配管と数え切れないほどの計器に目を回す勢いで周囲を見渡しながらついてきた。

「あ、あの……ど、どこへいくのですか?」

「オマエを家に連れて行ってくれる船に乗せる」

「えっ! 帰れるの?!」

「帰れるとも」

「でも……ても……帰れない――」

そこでミミは膝から泣き崩れてしまった。

なぜ帰れない? とは聞けなかった。ミミは蹲り、母親の名を何度も呟きながら自身の体を強く抱きしめていた。

俺に何か返せる言葉があるだろうか? しかし、何も思い浮かばなかった。

だが、一つだけわかることがある。

「ミミ、オマエの母親はオマエの帰りだけをひたすらに願っていると思うゾ」

「……でも……でも」

「親とは子の全てを受け入れてくれる者だ、何も心配はいらなイ」

まだ泣き続けるミミを抱き起こし、片手で胸に抱き上げたまま、発令所から上部の司令塔一階へと梯子を上がった。

司令塔でTSSを操作しUボートを移動させていく、中継地点の沖に停泊している輸送船の内、一番大きい輸送船がたぶんアシュリーの乗船している船だろう。

その船にアシュリーが乗船している事を願いながら、Uボートを急速浮上させた。

「な、なによあれは!」

「あ、あの黒船だ! さっき言っただろ! 海棠との戦闘に介入してきた帆の無い船だ!」

「あ、あれは……」

大型輸送船の百メートルほど横に浮上すると、輸送船の船上でのざわめきが明確に聞こえてきた。

「戦闘水兵を集めろ! あの黒船を拿捕するんだ!」

「レイツェン! あなた何言ってるのよ! みんな荷降ろしの作業中よ!」

「シャル、レイツェン、上部から誰か出て――」

司令塔上部のハッチを開け、外に出て輸送船を見ると、船側に立っている三人の姿が見えた。シャルさん、豚レモン、それにアシュリーだ。

「なっ! アンデッド?! 総員戦闘態勢をとれ!! アンデッドが出たぞ!」

俺の姿を見て豚レモンが反対側の船側へ走っていき――ドボンッ! と落水というか、海へ飛び込む音が聞こえた……。

「姉様下がって!」

シャルさんがアシュリーを庇うように前に出る、手にはすでに魔動弓が引かれ、手元が光を放ちだしていた。

だが、俺は何も声には出さない。ただただアシュリーの目を、骸骨の眼底に灯る青い炎の目で見つめていた。

これだけの距離があっても、わかるだろ?

「シャル、弓を下げて」

「姉様なんで!?」

「少し、少しだけ様子を見ます。戦闘水兵も魔法攻撃を放たないように! ただし、防御魔法は即時詠唱準備!」

シャルさんとアシュリーの周囲には、何人もの水兵と思われる男たちが集まっていた。だが、どうやら時間をもらえたようだ。

司令塔を出るときに取り出しておいた救命ボートを海上に放り投げる。空気の噴射する音と共に膨張した救命ボートにミミを降ろす。

すでに泣き止んでいたミミが、何かを言いたげに俺を見上げるが、それを聞くことなくすぐにハッチへと飛び込み司令塔に降りた。アシュリーたちが乗る大型輸送船の陰から、レイツェンの乗る旗艦が顔を出したからだ。

Uボートを急速潜航させ、海中へと退避していく。

アシュリーならば、必ずミミをアマールに送り届けてくれるだろう。俺はUボートの進路を再び岩壁の島へと変更した。