軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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牙狼の迷宮、地下二十五階でワニ型魔獣の門番を斃す事に成功した。振り返ってみれば、魔砲の威力が高いのと、角質化した表皮が硬かったなと言ったところか。

過去に挑戦したパーティーが何故撤退をしたのかは判らないが、予想するとすれば、水中で体力を回復するのを止めれなかったのだろう。

所詮は地下二十五階、他所の迷宮は百を越える地下階があるのだ。基本的な能力値が飛びぬけて高かったわけではないだろう。魔水の大雨という苛酷な環境、水中に逃げると言うバトルフィールドの構成が、何年もの間討伐される事のなかった最大の理由なのだろう。

そんな事を考えながら、ギフトBOXの上に腰を降ろして、門番部屋の様子を見ていた。

多数のTH3焼夷手榴弾を放り込み上昇させた門番部屋の水温は、未だに湯気を漂わせ高熱である事を示唆している。門番は消滅し、地下二十六階へと続く迷宮の門の鍵は開いたようだが、水温が下がるまで今しばらくの時間が必要なようだ。

俺しかいない門番部屋で、何をするわけでもなく周囲を見渡していると、目の錯覚だろうか? 広い門番部屋の壁がこちらに迫っているような気がする。

壁だけではない。いつの間にか、水に浸かっていた門番部屋の床が見えている。水位が下がっている?

門番部屋の出口の門に不審な点がない事を確認しながら、壁と水の動きを注視しながらその変化を見守った。

どのくらい見ていただろうか、広いボスフィールドを形成していた門番部屋は、ここまで下がってくるまでに通過した門番部屋同様の広さにまで収縮していた。部屋を水浸しにしていた水も全く消え、門番が逃げていた水中の水も床に染み込むように消えていった。

水深の深い部分も、収縮する壁同様に盛り上がっていき、その動きを止めた時には真四角の部屋になっていた。

この門番部屋を見るに、10層ごとの対門番戦、もしくは 迷宮の主(ダンジョンマスター) の手前の門番は特異なバトルフィールドを持っている場合があるということなのだろう。

緑鬼の迷宮での門番戦は、目の前に広がる四角い部屋だったが、あの時に戦ったオーガファイターに専用のフィールドが必要か? と聞かれれば、四角い部屋で十分だな、と答えるだろうがな。

高熱になった水が消え、門番部屋の変化が収まったところで、座っていたギフトBOXから降り、 TSS(タクティカルサポートシステム) を起動し、インベントリから弾薬や特殊手榴弾を取り出し、SHOPから新品のバリスティックシールドを購入し取り出す。装備を整え、地下二十六階へと続く迷宮の門へと向かった。

入り口と全く変らない白い迷宮の門を越え、続く階段を降りていく。

迷宮の主がいる最下層は、迷宮と言うよりは真っ直ぐ進む地下道になっていた。明かりの全くない通路を、SCAR-Hに付けたタクティカルライトの明かり、そしてヘッドゴーグルを NV(ナイトヴィジョン) モードに変更して進んでいく。

ヘッドゴーグルに映るマップも、マッピングしているのは直線通路だけだ。ひたすら歩いて進んでも光点はなく、魔獣・亜人種の湧く様子はない。

この階層は迷宮の主しかいないのかもしれないな。15分ほど地下道を進み、マップに門番部屋よりも狭い長方形の部屋が映りだした。タクティカルライトが照らす先にも迷宮の門と同じような白いオブジェクトが見えてくる。

近付いていくと、白柱や門に刻まれている意匠は、これまでと同じものだったが、唯一違う場所が扉の上部の玉座がない。

玉座はこの奥と言うわけか……。

白い扉を押し開き中へと入っていく。

迷宮の主(ダンジョンマスター) がいる最深部は、20m程の長方形で扉から真っ直ぐ紅い絨毯が伸びている。絨毯の伸びる先で三段ほど上に上がり、そこに一台の玉座が置かれていた。

玉座が置かれていた……が、そこには誰もいない……。

ここも迷宮の主がいないのか? 石造の部屋の壁面には壁燭台が設置され、そこには蝋燭もないのに火の玉だけが浮き、照明となっている。ヘッドゴーグルをNVモードから通常モードに戻し、周囲を見渡しても誰もいない。

玉座の奥には扉が見える。更に奥…… 大魔力石(ダンジョンコア) が置かれている場所に通じているのだろう。

もしや、そこにいるのだろうか? 右手に持ったMPS AA-12を握り締め、一歩、二歩と中央へ進んだところで――。

「臭っ」

何か物凄い異臭が顔の横に漂ってきた。思わず後方へとスライドジャンプし、部屋の入り口まで戻ってしまった。

漂ってきた異臭は、腐った汗の臭いとでも言おうか、脂臭く、独特な獣臭さが漂い、この部屋に、俺が進んだ中央に、何かがいることを示唆していた。

しかし、異臭の 本(もと) はどこにも見えない――見えない?

俺はヘッドゴーグルをFLIR(赤外線サーモグラフィー)モードへ変更し、周囲を見渡すと……いた!

俺が進んだ中央部分の少し右にそれはいた。紅く熱が脈打つ2mを越える体躯に狼のような顔、毛の先まで熱を持つ大きな尻尾。

「――ウェアウルフ」

俺の零した一言に反応したのか、ウェアウルフの顔がこちらを向く。

「VuOoooooooo!!」

その咆哮と共に、隠れていた姿を現し、更に声を上げていく。

『ツイニキタカ!!!』

何? ウェアウルフの咆哮と重なるように、VMBの自動翻訳機能が動いてる。

『ヤットコロセル! ヤットチヲノメル! ヤットニクヲクエル!』

なんだこいつ、今までは俺に気付いていなかったのか? バリスティックシールドの上部にAA-12を載せ、そこを覗き込むようにダウンサイトし、クロスヘアとウェアウルフの顔を線で結ぶ。

「貴様が 迷宮の主(ダンジョンマスター) か?」

「VuRooooooooo!」

こいつ、俺の言葉はわからないのか?

俺の問いへの答えは、突き出された貫き手。俺の体の中心を狙った貫き手に、バリスティックシールドを割り込ませて直撃を防ぐ。

ウェアウルフの爪だけが接触しているにもかかわらず、押し込まれるような負荷を感じる。これは相当に力がある……。

貫き手に押されながらも、右手に持つAA-12のクロスヘアをウェアウルフの腹に合わせ、トリガーを引いていく。

連続する三つの発砲音とバリスティックシールドの向こうで着弾し小爆発が起こる。

「Guaaaaa」

押し込まれる貫き手の力が弱まり、ウェアウルフが左脇腹を押さえながら後方へ跳躍していく。通用する――門番のワニ型魔獣の角質化した表皮にはあまり通用しなかったが、この迷宮の主には間違いなく効いているようだ。

『クワセロ! ヤラセロ! スワセロ! ソノタマシイヲササゲロ!!』

距離をとった先でもまだ言っている。あまり知性はないのか? それとも、狂っているのか? 咆哮と、翻訳される言葉を叫びながら左脇腹に手を当て、そこが青白く光っている。

回復しているのか! すぐさまクロスヘアを飛ばし、Hipfireの態勢からトリガーを引いていく。

だが速い。ウェアウルフは一足で壁際まで飛び、AA-12 から放たれるFRAG-12を躱してみせた。

最初の一撃で飛び道具だと悟ったか……。更に開いた距離でお互いに睨みあう。

理性が、知性があるのかわからない。奴の言葉が理解できようと、今は関係はない。奴が迷宮の主で、俺が迷宮の討伐者。ただそれだけ、ただそれだけの戦いだ!