軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第095話 え?

「別に何点でもいいわ。とにかく、これが圧縮だ。たいした技術じゃないし、効率も良くないからおすすめはせんぞ」

こいつらを見る限り、今は質より量だろう。

「ジーク君、本当に発表とかしないの? 多分、表彰されるよ?」

それに惹かれる人間だったらとっくの前にしている。

他にも色んなものを作っているし、研究している。

ヘレンが習性で飛び掛かって撃墜したラジコンヘリを見せてやろうか?

「せん。したかったらお前がしろ。ただし、絶対に俺の名前を出すなよ」

「なんで? すんごい名誉だよ?」

「いらん。俺の名前を出したら確実に学会に呼ばれて、説明と論文を求められる。さらには研究に付き合わされ、やいやい言われるだけだ。人の時間は有限だし、俺はそんな時間の無駄なことはしない」

レオノーラと釣りに行った方が100倍は有意義だ。

「もったいないなー」

「活用できる時があるかは知らないが、活用したかったらしろ。ただし、何度も言うが、絶対に俺の名前を出すなよ。あと、その抽出機で鉄鉱石を鉄に変えて、インゴットを作ってくれ。自分でやるより早そうだ」

「わ、わかった」

テレーゼが鉄鉱石を抽出機に入れる。

「お腹空きましたねー」

ヘレンがそう言うので備え付けの時計を見てみると、すでに12時を回っていた。

「鉄ができたら飯でも食いに行くか。ドロテー、来るか? 奢ってやるぞ」

クリスと会えなくて落ち込んでいるこいつを見ているとなんか可哀想だし。

「おー、ありがとうございます。ジークさんも人間性が35点になりましたね」

あと5点か……

「お前らも行くか?」

人間性アップのために一応、聞いてみる。

「行く行くー」

「私はお弁当だからやめておくわ」

「私も」

マルタと先輩さんは来ないらしい。

正直、来られてもちょっと困った。

「弁当? 自炊しているのか?」

「いや、私は実家暮らしだからお母さんが作ってくれたやつ」

「私は作った。旦那がいるしね」

へー……

「じゃあ、テレーゼ、ドロテー、行くか」

「ちょっと待ってねー。ぱぱっと鉄をインゴットに変えてしまうから」

テレーゼが抽出機から取り出した。

「テレーゼ、インゴットは私が作っておくから昼食に行きなよ。せっかく弟弟子さんが来ているんだし」

先輩さんが行くように勧めてくる。

「良いんですか?」

「鉄をインゴットにするなんてすぐだよ」

「ありがとうございます」

良い先輩だな……

「ジークさん、あれが人間性高得点ですよ」

うーむ……本物だな。

俺のナンパ本で鍛えた付け焼き刃とは違う感じがする。

「でも、クリスもそんなことせんだろ」

「失礼な。クリス様もしますよ。優しさの塊ですよ」

だから弟子に舐められているような気も……

いや、そういう考えが良くないわけだな。

「ちゃんと勉強しているんだけどなー……まあいいや。俺も腹減ったし、行こう」

「どこ行く?」

どこ……確か近くに店があったような気はするが、覚えていないな。

「おすすめとかないか? 俺は詳しくないんだ」

「あ、そういえば、パンと栄養剤しか食べない人だったね。案内するよ。じゃあ、コリンナ先輩、すみませんが、昼に入ります」

「あいよー」

俺達は部屋を出て、廊下を歩いていく。

「ジーク君、なんか丸くなったね」

「だろう? 人間性を40点にしようと頑張っているわけだ」

目標は50点だけどな。

「良いことだと思う。以前のジーク君なら絶対にマルタさんやコリンナ先輩に話しかけなかったし、無視してたもん」

してたな……

「マルタはクラスは違うが同級生らしい」

「らしい?」

「事前にアデーレに聞いていたんだ。顔はまったく覚えていない」

同じクラスであり、毎日顔を合わせていたアデーレのことすら覚えていないのだから当然、違うクラスのマルタのことなんか覚えているはずもない。

「な、なるほど……それなのにあたかも知っているかのように話すのはすごいね」

我ながらうまく誤魔化せたと思う。

「こういう本があるんだ」

俺とレオノーラの愛読書を見せる。

「えーっと、仲良くなれる? 女性とのしゃべり方? 何これ?」

「ナンパ本。男性とのしゃべり方編も持ってる」

あと、【職場での人間関係 ~後輩編~】も持ってる。

今度、【職場での人間関係 ~上司編~】も買おうと思っている。

「あー……だから食事に誘ってきたんだ……変だと思った」

「変か?」

「私を誘うのも微妙なのにあの2人を誘うのは違和感がありすぎた。いくらなんでもキャラじゃない」

キャラって言われてもな……

「俺なりに嫌われキャラを変えようと思っているんだよ」

「普通にさっきの感じで良いと思うな。無理して食事に誘いまくってると本当にナンパ男に思われちゃうかもよ?」

うーん……

「ヘレン、ドロテー、どう思う?」

「やめた方が良いと思います。それで喜ぶのはジーク様の良いところも知っているあの御三方だけです」

「性格の悪いナンパ野郎なんて人間性が0点どころかマイナスですよ。悪いことを言いませんからキャラに合わないことはよした方が良いです」

そうか……

「テレーゼ、そういうことだから一人で食え」

俺は猫とカラスと食べる。

「ひっど……」

「ジーク様、そういうことじゃないです」

「同門の姉弟子でしょうが。今さら、あなたにリスペクトを大事にしろとは言いませんが、いわば家族なんですからアホなこと言わないでください」

ドロテーがめっちゃ責めてくる。

「冗談だったんだが……」

さすがに一緒に食うわ。

「めちゃくちゃつまんないわよ!」

「ジーク様、間違ってもそんな冗談を御三方にしてはいけませんよ」

ナンパ本に時には辛辣で小粋なジョークも有用って書いてあったんだがなー……

「悪い……テレーゼ、奢ってやるからな」

「いや、私が出すよ。お姉さんだもん」

お姉さん……

確かに姉弟子だし、年上だが、姉感ゼロだな……

俺達がそのまま話をしながら歩いていると、階段までやってきたので降りていく。

すると、短髪の男が階段を昇ってきた。

「あっ……」

テレーゼが小さな声を出したのが気になったが、足を止めずに降りていく。

すると、短髪の男とすれ違ったのだが、その男がものすごく見てきた。

しかし、まったく思い出せない。

多分、俺が怒らせた誰かだろうな。

「お疲れ様です」

挨拶は大事と思いながら軽く頭を下げると、そのまま階段を降りていく。

「おい……」

何故か、呼び止められた。

「何だよ……」

「貴様、なんでここにいる?」

何だこいつ?

人のことは言えんが、口の利き方には気を付けろ。

「ちょっとした仕事だよ」

「よく顔を出せるものだな」

そこまでか、俺?

「ほっとけ。誰だか知らんが、邪魔をするな。俺は忙しいんだ」

「「「え?」」」

男だけじゃなく、何故かテレーゼとドロテーも呆ける。

「え?」

「……ジーク様、アウグストさんですよ」

え?