軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第090話 食は大事

繁華街に来ると、まだ昼間なのでそこまで多くの人はいなかった。

そして、そのまま繁華街の大通りを通っていくと、ホテルの前までやってきた。

「ここか……」

セントラルホテルと書いてある。

しかし、高そうなホテルだな……

リートのサイドホテルより豪華に見えるぞ。

「すごっ……こんなところに泊まるんですか?」

庶民代表のエーリカも驚いている。

「さすがにスイートじゃないけどね。入ろ、入ろ」

レオノーラがホテルに入っていったので俺達も続き、受付に向かった。

「こんにちはー」

「いらっしゃいませ。御予約のお客様でしょうか?」

レオノーラが挨拶をすると、受付にいる女が丁寧に頭を下げ、ビジネススマイルで聞いてくる。

「4名で予約したレオノーラです」

「少々お待ちを……」

受付の女がリストを確認し始めた。

「リートからお越しのレオノーラ・フォン・レッチェルト様でしょうか?」

「合ってる」

「ようこそいらっしゃいました。個室が4部屋でよろしいですね?」

「うん」

受付に両手を置いて見上げるレオノーラが子供にしか見えない。

「朝食と夕食はいかがいたしましょうか?」

「朝食は食べるけど、夕食はその都度言う。今日はホテルで食べる」

「かしこまりました。夕食は1階のレストランでもお召し上がりになることができますし、お部屋にお持ちすることも可能です」

受付の女がそう言うと、レオノーラが俺の方を振り向いた。

「うーん……この人の部屋で食べる」

んー……俺、これから本部行くし、遅くなるかもしれないんだが……

いや、明日が試験だし、今日はいつもと同じにした方が良いか。

「7時くらいでいいぞ」

残業はしないことにしよう。

「かしこまりました。朝食は1階のレストランでバイキングになります。それでは少々お待ちください」

受付の女が奥に向かう。

「レオノーラ、料金は?」

「事前に振り込んだ。帰ったらちょうだい」

4人分だと結構するだろうに……いや、待てよ。

「今回は出張だから申請して、宿泊費を請求しろよ」

「さすがにセントラルホテルはきつくない?」

「1万エルは出るだろ。何日いるかはわからんが、まとめて請求しとけ。後で精算しよう」

「んー? わかった」

レオノーラが頷くと、受付の女が戻ってきた。

「お待たせしました。こちらが鍵になります。お部屋の清掃を希望する場合は出発時に鍵を御返却ください」

「わかった」

レオノーラは4つの鍵を受け取り、俺達に配っていく。

受け取った鍵には304と書かれていた。

「3階か」

「普通の部屋だからねー。行こう、行こう」

俺達はすぐ近くにある階段を昇り、3階までやってきた。

そして、304号室を探す。

「ここか……」

3人娘も自分達の部屋の前に立っており、左にアデーレ、レオノーラ、エーリカの並びだ。

「これからどうするの?」

アデーレが聞いてくる。

「俺は本部に行って、本部長に今回の仕事のことを聞いてくる」

「私達も行った方がいいかしら? 一応、手伝いって話だけど」

「いや、試験前日にすることじゃない。最後のおさらいでもしてろよ」

さすがにそっちに集中するべきだろう。

「そうするかな……」

「6時くらいには戻ってくるし、夕食は皆で食べよう」

「わかったわ。じゃあ、頑張って」

頑張るのはお前らだろ。

「ああ。じゃあ、またな」

そう言って、3人と別れ、部屋に入る。

部屋の中はサイドホテルのスイートルームほどではないが、十分に広く豪華な部屋だった。

「にゃー!」

ヘレンは肩から降り、ベッドに駆けていくと、可愛い鳴き声を発しながら大きなベッドにダイブする。

「良かったな」

「はい! やっぱり良い部屋に泊まる方が良いですよ!」

お前が嬉しいならそうなんだろうな。

「俺は本部に行くが、どうする? ベッドでゴロゴロしててもいいぞ」

「何を言いますか。私の居場所はジーク様のもとなのです。どっかの愛されなくなったカラスとは違うのです」

別にドロテーも愛されなくなったわけじゃないんだろうけどな。

「じゃあ、行くか」

「昼食はどうされるんですか?」

備え付けの時計を見ると、11時を回ったところだ。

「本部の近くの定食屋でいいだろ。時間的に戻るのも面倒だし」

さすがに3人娘も勝手に食べるだろう。

「わかりました。では、参りましょう」

ヘレンがベッドから降り、身体をよじ登ってきたので部屋を出て、階段を降りた。

そして、ホテルを出ると、来た道を引き返し、本部に向かう。

「ジーク様、御三方は受かりますかね?」

「多分、大丈夫だと思う。勉強して苦手分野も対策したし、実力は十分にあるからな。あとは落ち着いて試験を受けられればいいが、今日の様子を見る限り大丈夫そうだ」

いつもと変わらなかったし、何ならテスト後の話もしていた。

これは試験がプレッシャーになっていない証拠だろう。

「ジーク様は偏屈で人間嫌いですが、案外、こういうことに向いてるのかもしれませんね」

「こういうこととは?」

偏屈で人間嫌いはスルーだ。

合ってるし。

「お弟子さんを取り、指導していくことです。ジーク様は御三方をよく見ておられました」

「今まで見てこなかったからな。見るようにしただけだ」

「苦痛じゃなかったです?」

「別にそんなことはなかったな。何度も『なんでこんなこともわからないんだ?』って思ったが、あいつらは素直だし、ちゃんと学べる」

正直、上手くいったのはあいつらの人間性だろうな。

これがクリスの弟子のような言動が鼻につく奴だったら無理だ。

いや、ドロテーからそう聞いただけでどういう奴かは知らんが。

「ジーク様はあそこが合っていますよ」

「お前もそう思うか? 皆がそう言う」

「出世の悪魔より良いでしょ」

「まあな」

他人を蹴落とすことしか考えていない悪魔で人生が楽しめるかどうかはわからない。

少なくとも、2度の人生で楽しかったと思ったことはない。

「パンと栄養剤より、エーリカさんのご飯の方が美味しいじゃないですか」

「それははっきりと頷けるな。ハンバーグ美味い」

「アクアパッツァ美味しいです」

まあ、生き急いでいたあの時よりかはずっと楽しいか。