軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第006話 内見

持ってきた私物の仕事道具をデスクの引き出しに入れ終えると、椅子に座り、一息つく。

隣にはエーリカも座っており、ニコニコしながら俺を見ていた。

「そんなに嬉しいか?」

「明日も休みましょうか? そしたら私の気持ちもわかると思います」

まあ、こんな広いフロアで一人は嫌だわな。

家で仕事した方が良い。

「明日もって……今日が休みだったのか?」

「ええ」

休みの日に同僚を案内……

すごいわ。

「悪いな」

「いえいえ。ジークさんはこれからどうされるんですか? せっかくなんで仕事します?」

休みなのに?

「いや、俺は部屋を決めなきゃならん。今日は友人からもらった優待券でホテルだが、明日から住むところがない」

アトリエがまさかの共同だったし、このままではホテル暮らしだ。

貯金が尽きてしまう。

「でしたら案内しましょうか? 不動産屋も知っています」

さすがは地元民だ。

「いいのか? 休みなんだろ?」

「それくらいお安い御用ですよ。どうせ暇ですしね」

この子、後光がさしてない?

「じゃあ、悪いけど、頼むわ」

「はい。どういう部屋がいいとかあります?」

「あまり無理を言う気はないが、せめて、アトリエが欲しいな。2部屋あると好ましい。でも、家賃は抑えたい」

実はこの左遷で俺の給料は半分に落ちてしまっている。

「なるほど……でしたら寮に住みませんか?」

寮?

「寮があるの?」

「はい。まあ、寮と言っても支部が持っているアパートなんで共同生活ではないです」

社宅みたいなものだな。

「家賃は?」

「5万エルですけど、支部の人間は割引が利くので半分です」

2.5万エルか……

安いな……

俺が王都で住んでいた安アパートは7万エルだった。

「内見はできるか?」

「私の部屋なら見られますよ」

「ちょっと待ってな……行ってもいいもんか? 失礼ではないか?」

またもやエーリカにちょっと待ってもらい、ヘレンに相談する。

「エーリカさんがいいって言ってるんですからちょっと見せてもらうくらいならいいと思いますよ。でも、長居はダメです。女性の部屋なんですから」

なるほど。

「エーリカ、少しでいいから見せてくれ」

「はーい。じゃあ、行きましょうか」

俺達は立ち上がると、階段を降り、支部を出た。

そして、寮とやらに案内してもらうことになったのだが、エーリカは支部の横の細い道を通り、支部の裏に来ると、立ち止まる。

そこには2階建てのアパートが向かい合うように2棟あった。

「ここです。例によって、住んでいるのは私とレオノーラさんだけですね。私がそこの部屋でその上がレオノーラさんです」

エーリカが左の方のアパートの手前の扉を指差す。

「支部のすぐ裏なんだな」

「そうですね。朝はゆっくり眠れますよ。通勤時間は30秒なんで」

まあ、それはありがたいがな……

「ちなみに、支部長は?」

「支部長は別のところを借りているそうですよ」

多分、良いところだな。

貴族だし。

「なるほどな。エーリカとレオノーラだけなら部屋は空いてるか」

「はい。じゃあ、部屋にどうぞ」

エーリカはそう言って、部屋の前に行くと、鍵を取り出し、扉を開けた。

俺とヘレンはエーリカと共に部屋に入る。

すると、キッチンのあるリビングだった。

「結構、綺麗だな」

リビングの壁紙も綺麗だし、ぱっと見は古さを感じない。

「ここはリビングです。これとは別に2部屋ありますね。もちろん、浴室とトイレ付きです。恥ずかしいので寝室は見せられないですが、アトリエに使っている部屋なら見てもいいですよ」

エーリカがそう言ってリビングにある扉を開けた。

部屋の中は8畳くらいあり、本棚や色々な器材が置かれている。

デスクもあり、何かの作業をしていた跡もあった。

「個人のアトリエとしては十分な広さだな」

「錬金術師協会支部の寮ですからね。防音もばっちりですよ」

なるほど。

「見せなくていいが、寝室となっているもう1つの部屋の広さは?」

「ここと同じです」

「すごいな……割引前の5万エルでも安い。王都なら倍はする」

俺が住んでいたアパートよりも良い部屋だわ。

「あー、王都は家賃や食べ物が高いって聞いたことありますね」

そうなのか……いや、日本でも東京と地方では全然違ったはずだ。

そういうものなのかもしれない。

「ヘレン、どうだ?」

一緒に住むヘレンにも意見を聞いてみる。

「私は良いと思いますよ。広いですし、安いです。何よりも職場が近いことが良いですね。ジーク様は朝が弱いので」

眠いんだから仕方がない。

「エーリカ、俺もここに住みたいな」

「ジーク様、言い方です」

ん?

あ、確かに変な言い方だったわ。

「この寮の部屋を借りたいんだが、どうすればいいんだ?」

「申請書を支部長に提出すればいいですよ。それで給料から自動的に引かれます。まあ、明日でいいんじゃないですかね? 多分、支部長はもう帰ってますし」

まだ昼なのに帰ったのか……

いやまあ、天下り支部長なんてそんなもんか。

「そうするわ。今日は休みだったのにわざわざありがとうな。おかげで助かったわ」

「いえいえ、当然のことです」

当然、か……

「明日からよろしくな」

「はい」

エーリカの輝くような笑顔を見ると、部屋を出た。