軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第036話 良い人作戦

「お待たせしましたー」

しばらく待っていると、エーリカが完成したハンバーグを持ってきてくれた。

ハンバーグは丸くて、前世でよく見た形をしており、さらにはちゃんとソースもかかっている。

「おー、なんか美味しそうだね」

「ですよねー。あ、ワインを注ぎますね」

エーリカが席につき、3人分のグラスにワインを注いでくれた。

「師匠、乾杯だけど、何かある?」

レオノーラが聞いてきたのでヘレンを見る。

「2人共、よく頑張った。良い仕事だったし、これからも頑張ってほしい……ぐらいでいいんじゃないですか?」

「それだ。乾杯」

「はーい」

「はい、乾杯」

俺達は乾杯をし、ワインを飲んだ。

確かにこのワインはアルコール度数が低く、どちらかというと、ぶどうジュースのようで飲みやすい。

「熱っ! でも、おうひいでふー」

ワインを飲まないヘレンは先に食べており、嬉しそうな声をあげる。

俺達も続いてハンバーグを食べてみた。

「美味しいです!」

「すごいね。本当に美味しいよ」

うん、美味いな。

エーリカが作ってくれたソースもよく合うわ。

「チーズとかパンに合うんだぞ」

「チーズは良さそうですね。今度やってみます」

「妻よ、任せた」

まあ、喜んでもらえたなら良かったわ。

俺達は明日が休みなため、ワインと料理を楽しみながらゆっくり過ごしていく。

そして、料理を食べ終え、話をしていると、何かの揺れを感じた。

「ん? 地震か?」

「この辺は地震なんて起きないよ」

そうなんだ……

「というか、ドーンという音が聞こえませんでした?」

え? 聞こえた?

「レオノーラは聞こえたか?」

「いや、聞こえなかったよ」

「あれ? 気のせいですかね?」

酒に弱いって言ってたし、酔ったんじゃないか?

「私も聞こえましたよ」

ヘレンも聞こえたらしい。

「ドーンって何だ? 花火か……ん?」

外からカーンカーンという鐘の音が聞こえてきた。

「これは警報ですね。火事です」

「エーリカとヘレンが聞こえたとかいうドーンという音と関係しているかもね」

2人がそう言って立ち上がった。

「野次馬か?」

「ジーク君、この町にはエーリカの実家もあるんだよ?」

あ、失言だった。

「すまん。支部の3階からなら見えるかもしれんな」

すぐそこだし。

「行きましょう」

エーリカがそう言うので部屋を出て、支部に向かった。

そして、階段を上がり、3階の倉庫にやってくると、窓を開けて、外を見る。

すると、真っ暗な夜の中、かなり先が明るくなっているのが見えた。

「ありゃ火事だな。エーリカ、お前の実家の方か?」

「いえ……あっちは工場なんかがある方向ですね」

工場……なんかのトラブルか?

「ヘレン、ひとまずは安心だなって言っていいもんか?」

「ダメですね」

やっぱりか。

何となくそんな気はした。

これがわかるようになったということは俺も成長したんだな。

「この町も消防隊なんかはいるよな?」

「もちろんです。しかし、私達にできることはありませんかね?」

「水曜石はあるか?」

水曜石は水をストックできる便利な石だ。

「ないですね……」

「じゃあ、手伝えることはないだろう。俺らみたいな非力な人間が行っても邪魔なだけだ」

バケツリレーをするのかはわからないが、どちらにせよ、野次馬にしかならんし、迷惑になるだけだ。

「ですか……」

「エーリカ、気持ちはわかるけど、適材適所ってやつだよ。私達が貢献するのは火事が治まった後」

燃えたものの修復や建物の復旧があるからな。

「――ジークさーん!」

「ん?」

下から声が聞こえたので見下ろしてみると、ルッツが手を振りながら見上げていた。

「どうした?」

「ちょっといいかい!? 頼みたいことがある!」

こんな時に?

「ちょっと待ってろ。そっちに行くわ」

「頼む!」

俺達は窓を閉め、1階に降りる。

そして、玄関から外に出ると、ルッツが待っていた。

「何だ?」

「工場の方で火事が起きてるのは?」

「上から見てたから知ってる」

「実は工場に隣接する倉庫で火が上がったんだよ。しかも、その倉庫内には火曜石の在庫があって、それが爆発したんだ」

火曜石は火の勢いを強くする石であり、石炭のようなものだ。

「爆発の前から火事があったわけか……原因は?」

「不明。調査は後だね。それでちょっとマズいのは火事になっている倉庫に隣接する倉庫には比じゃないくらいの火曜石が置いてあるらしい」

火曜石の火は中々消えないし、被害が大きくなるな……

「それはさっさと消火する必要があるな。それで用件は何だ? 言っておくが、ウチに水曜石のストックはないぞ」

「それはわかっている。頼みたいのは錬金術関係ではなく、5級国家魔術師としての君の力の方だ」

あー、俺の魔法で火を消せって言ってるわけだ。

実際、こういう非常時には魔術師協会の連中が緊急依頼で出張ることはある。

「それ、俺の仕事――」

「ジーク様ぁ!!」

突如、肩にいるヘレンが顔にへばりついてきた。

「何だよ? 構って欲しいなら後にしろ」

甘えん坊の使い魔だな。

「会議です! 緊急会議です!」

「何?」

ヘレンを引きはがしながら聞く。

「何を言うつもりでした?」

「俺の仕事じゃないだろ。俺は錬金術師協会に所属する錬金術師だ。そういうのは魔術師協会の人間に頼め」

俺は関係ない。

「やっぱり…………マズいですって」

「どこが?」

「人の道です。きっと正しいのはジーク様なんでしょう。でも、そういうのをやめて、生まれ変わろうっておっしゃってたじゃないですか」

人の道……

え? 外れてる?

「関係ない俺が火を消すのが人の道か?」

「良い人はそうします。きっとここでジーク様が手を貸さなくても誰も責めません。だからこそ、ここで動く人間が称賛され、良い人と呼ばれるのです」

俺は良い人じゃない……

「うーん……メリット、デメリットで考えてはダメなわけだ」

別に称賛されることはメリットではない。

「では、こう考えましょう。現在の支部の評判は良くないです。だからこその地域貢献です。支部に所属するジーク様の評判が支部の評判になるわけです。ほら、メリットです」

「なるほど……さすがはヘレン。賢いな」

確かにメリットだ。

「ささっ、5級国家魔術師試験を鼻で笑ったジーク様の実力を見せつけてやりましょう」

「よし! 火なんてすぐに消し飛ばしてやろう。ルッツ、案内しろ」

「え? あ、うん……何の会議だったの?」

ルッツが従妹のエーリカに聞く。

「大事な会議。温かい目で見守ってあげて」

エーリカはそれしか言わんな。

「ルッツ、時間がないぞ。車は?」

「あ、こっち。乗ってくれ」

ルッツが向こうの方に停めてある車に向かった。

「よし、行くぞ」

エーリカとレオノーラに声をかける。

「え?」

「私達も行くのかい? 邪魔では?」

「新参の俺が行っても錬金術師協会の人間だとわからないかもしれないだろ。顔が売れているお前らも来るんだよ」

支部の評判を上げるためなんだから『誰、あいつ?』では意味がない。

その点、この町の出身のエーリカと特徴的な背丈と格好をしているレオノーラは適任だ。

「な、なるほどー」

「ジーク君は本当に優秀なんだね……」

「わかったな? 行くぞ、弟子共」

「「おー」」

俺達は急いでルッツが乗ってきた車に向かった。