作品タイトル不明
第280話 ぴかー
翌日の休みの日。
朝起きると、ゾフィーと共にエーリカの部屋に行き、朝食を食べる。
「エーリカさん、エーリカさんの家族構成ってお父さんとお母さん、それとお兄さんと弟さんだったわよね?」
アデーレがエーリカに聞く。
「ええ。兄が3つ上で弟が4つ下です」
23歳と16歳か。
「弟さんは学生さん?」
「はい。魔法学校ではないですね」
エーリカの家では魔法使いはエーリカだけのはずだ。
「ふむふむ」
「あのー、多分、弟は遊びに出ていると思いますよ。基本、外で遊んでばかりの子なので」
「あ、そうなんだ。アクティブなのね」
「ルッツ君に似た感じですね。昔は兄も入れて、男3人で遊んでました」
すでに明るい家庭なんだなっていうのが見えてくるな。
「仲が良いのね」
「ですかねー? アデーレさんやレオノーラさんってご兄弟がいらっしゃるんですか?」
「兄がいるよー」
「私もそうね」
へー……
「ジークさんは……あー……」
孤児だからいるわけないな。
「いっぱいいましたね」
「個性的なのがねー」
「確かにね……」
俺とゾフィーが顔を見合わせる。
「一門のことか?」
「そうじゃない? 変なのが多いしね。マリーとか」
確かにマリーは変だ。
何しろ、髪の毛が伸びるし、しゃべり方もちょっと変わっている。
なんか生暖かい目で見てくる3人娘が気になりつつも、朝食を食べ、食後のコーヒーを飲むと、皆で外に出た。
そして、エーリカの案内で町を歩いていくと、海にやってくる。
「おー! 海ね! いつ見ても綺麗だし、壮大だわ。私もこんな風に大きくなりたいわね」
小さいもんな。
「ゾフィー、それは仕方がないことだよ。受け入れよう」
なんか同じ身長が低い仲間が慰めるように肩に手を置いた。
「あんたに言われたくない」
「レオノーラさんはねー……」
「壮大だものね」
そんなことより資格を取って欲しいわ。
「エーリカ、どっちだ?」
「あ、こっちですよー」
俺達が海沿いを歩いていくと、前方にドックと併設された建物が見えてきた。
「あれ?」
「はい。実家ですね」
ふーん……結構、大きいな。
まあ、奨学金とはいえ、魔法学校に娘を通わせているくらいだし、裕福な家だわな。
俺達はそのまま歩いていき、ドックの方に回る。
すると、ドックの中には作りかけの船が置いてあり、作業服を着た中年男性とまだ若い男性が作業をしていた。
「お父さーん、お兄ちゃーん」
エーリカが声をかけると、2人がこちらを見る。
「おー、エーリカ!」
「帰ったのか。その人達は?」
お兄さんの方が俺達を見てきた。
「協会の先輩達。見学に来てもらったんだよー」
先輩で良いのかな?
歳は一番下だが、古株はエーリカだ。
「へー……」
「おー、そうか!」
2人がこちらにやってくる。
「錬金術師協会リート支部のジークです。娘さんにはいつもお世話になっています」
主に食事関係で。
「レオノーラ、です」
「アデーレです」
「…………ゾフィーです」
ゾフィーは人見知りが見事に発動し、昨日決めた挨拶が吹き飛んでいる。
「エーリカの父親のモーリッツだ。娘がいつも世話になっている」
名前は鍛冶屋の親方から聞いたな。
「兄のフーゴです。よく来てくれましたね」
うーん……キラキラしてる……
「よろしくお願いします。船を作っていたんですか?」
「ああ。おたくらが作るような魔導船ではなく、普通の漁船だがな。この町も年々、人口が増えているし、冷凍技術が発達したからあちこちで魚が売れる。だから漁師も増えているし、漁船の発注が多いんだ」
この町で獲れる魚は美味いしな。
「全部、手作業ですか?」
俺達は船を見る。
綺麗な船だし、やはり職人の技術だ。
「まあな。もちろん、機械も頼るが、基本的にはそうだ。ウチは設計からやるんだよ」
ただの職人ではなく、技術者か。
当たり前だが、船の設計はバカにはできない。
「すごいですね」
「たいしたことはねーよ。そういやそっちは鉄の方はどうだ?」
やはりその話題になるか。
「こっちも厳しいですね。鍛冶師連中から廃品から鉄の抽出の仕事を受けましたし、どこも厳しいようです」
「やはりそうか……ウチもこの船の分は残っているが、それ以降がな……」
どこも同じか。
「親父、仕事の話はいいだろ。せっかく、エーリカの同僚が来たんだし……」
「ああ、そうだな……あ、思い出した。お前がジークだったか?」
ん?
「ええ。ジークヴァルト・アレクサンダーです」
「そうか……娘の師匠だってな。本当に世話になっている。しかも、王都から来たエリートで大層な思想を持っているらしいな」
まーた新聞を読んでるよ。
まあ、エーリカも載ってたし、この人達は娘の記事を読んでいるだろうが。
「娘さんは才能がありますし、人間性も素晴らしいです。逆に学ぶことの方が多いですね」
そう言うと、エーリカがえへへと照れる。
「そうか……俺達は錬金術のことも魔法のこともわからないから本当に助かる。これからも娘を頼む」
「もちろんです。それ以上に娘さんは頼りになりますから支部のために頑張ってもらいたいと思っています」
これも本当。
エーリカは楽で良いわ。
「ありがとう。フーゴ、家の方に案内しろ。それでシュテファニーに茶でも用意してもらえ」
「わかった。皆さん、どうぞこちらへ」
俺達はお兄さんに案内され、奥の方に行くと、住居スペースに入った。