軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第278話 やっぱり暇なのかな?

翌日も仕事をしていく。

アデーレもステンレス鋼が終わったので皆が銀とアルミの錬成、廃品から鉄や銅の抽出を行っていった。

俺もアデーレが作ったステンレス鋼を使い、メスを作っていく。

「サシャ、どうだ?」

サシャは銀鉱石を銀に変えているのだが、最初にやらせていた時よりも目に見えて早くなっていた。

「だいぶコツがわかってきましたね。銀は鉄なんかとはちょっと違いますけど、基本は同じです」

学生時代にやっているだろうし、一度思い出せば後は上達するだけか。

「今日から帰るまで1日インゴットを1つずつ作ってくれ。後は鉄の抽出を頼む」

「わかりました」

サシャはそれと勉強会で実技をやらせたら大丈夫だろうな。

こっちの仕事に関してもサシャ、マルティナ、ゾフィーがやってくれるからあの廃品の山すべてから鉄を抽出するのもできそうだ。

そう思っていると、ふと横目に人影が見えたので受付の方を見る。

すると、1人の男が入ってきていた。

「エーリカ、どうする?」

「ヴァルター先輩ですね……」

民間のアトリエの息子のヴァルターだ。

今日はマライアと一緒というわけではないらしい。

「俺が行ってこよう」

「お願いします」

エーリカの先輩だが、苦手意識があるようだから仕方がないので立ち上がり、受付に向かった。

「よう。今日は1人か?」

「別にマライアとセットではないぞ。あの時は同じ仕事をしていただけだ」

付き合っているわけでもないようだしな。

「そうかい。この前、軍の詰所の前でマライアに会ったな」

「あー、船の納品か。あそこは結構な数を受注してたからな。しかし、ジーク、支部ってこんなに人が多かったか?」

ヴァルターが奥の共同アトリエを覗く。

「ちょっと応援に来てもらっているだけだ。マルティナとゾフィーのチビ2人は知っているだろ」

「ん? ホントだ……キルシュのところの娘か」

「王都からギーゼラさんと一緒に帰ってきてるんだよ」

「そうか……」

どうも薬屋の話題になると大人しくなるな。

エーリカが言っていたように気にしいのようだ。

「それよりも何の用だ? 民間のアトリエの人間がウチに来るなんて珍しいな」

というか、まったく来ない。

まさか仕事の依頼ではないだろうし。

「ちょっと情報共有がしたくてな。鉄や銅はどうだ?」

それね。

「お前らが買い占めたせいでどこも売ってない。例の緊急依頼は銀とアルミにしている」

「そうか……実は民間の方でも問題になっているんだ」

ほう?

「買い占めて、全部インゴットにし、他所の町に送ってしまったせいで自分達が使う分もなくなったわけか?」

「恥ずかしながらそうなる」

ひどいな。

「民間のアトリエって組合がないのか?」

「ない。俺達は商業ギルドにも所属していないし、個人店が多いから好き勝手やっているんだよ。それが今回のことで災いした。誰も鉄や銅がなくなるとは思っていなかったんだ」

普通、なくなるものじゃないからな。

皆がそう思って、買えるだけ買ったら他所も同じことをしていて、在庫が消えたわけだ。

「別の仕事で繋ぐしかないだろう」

「ああ。そのつもりではいる。しかし、お前も知っているだろうが、この町は港町だ。この前の軍船の仕事はもちろんだが、漁船の作成や修理なんかもする。かなりマズい状況だ」

漁船も鉄や銅は使うからな。

「それで俺達に相談か?」

「さすがにそこまではしない。しかし、お前達はどうしているのかと思ってな」

「俺達はできることをするだけだ。そっちと違って、人も少ないしな。ただ、今は鍛冶屋業界から頼まれて、廃品から鉄の抽出をする仕事をしている」

そう言って、エントランスの隅に積まれている木箱を見る。

「そうか……鍛冶屋は死活問題だからな」

「かなり文句を言ってたぞ。役所に抗議に行ってた」

俺も行ったんだけど。

「抗議されてもな……俺達はその役所に頼まれて、インゴットを納品しただけだ」

それは悪くない。

正直、悪いのは役所の方だ。

「限度がなかったな。それで自分達の首も絞めてしまったわけだ。組合を作れよ」

「まったくな……今、親父達が集まって、連日連夜の会議だ」

ヴァルターが苦笑いを浮かべる。

「赤字が出る感じか?」

「そういうことにはならないが、依頼人や得意先から文句が出るな。長引くようなら少しマズい」

さすがにこの状況では切られることはないだろうがな。

別のところも同じ状況なのだから。

「あの緊急依頼が戦争に関係していることは?」

「もちろん、わかっている。鉄が欲しいなんてそれ以外にない。ただ、戦争が原因だと厳しい。戦地は北部だし、こんなに離れているこの町にも依頼が来ているってことはどの町にも依頼が来ているってことだ。つまり他所から鉄を集められない」

そうなるな。

リートだけの問題ではない。

だから本部長が動いているのだ。

「鉱山から再入荷はどうだ?」

そう聞くと、ヴァルターが首を横に振った。

「目途は立っていない。この町には鉱山があり、安定供給は見込める。しかし、今のところは再入荷する予定がないそうだ」

「鉄のインゴットだけじゃなく、すでに鉄鉱石ごと送ってしまったか……」

採掘し、鉱石屋に卸す前の鉱石のストックがなくなったんだ。

「どうやらそのようだ。急いで新しい鉱石を掘るんだろうが、それらも奪い合いだな。錬金術師か鍛冶師か……いや、建築業界もだな」

鉄はどこも使うからな。

そして、それは船大工も……

「ウチは買えないな」

「ウチも怪しい。こうなると、役所が介入しそうだ」

するだろうな。

「面倒なことになったな」

「ハァ……ウチが潰れたら雇ってくれ」

マライアと同じことを言っている。

「潰れたらな」

さっき赤字が出ることはないって言ってただろ。

「そうだな。いや、仕事中なのに時間を取らせてしまってすまない。鍛冶屋の仕事を頑張ってくれ」

「ああ」

ヴァルターは苦笑いを浮かべると、支部を出ていった。