軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第275話 久しぶり

翌日、この日もサシャとゾフィーに鉄の抽出をやらせていく。

「サシャ、サイドホテルはどうだった?」

アデーレが隣に座っているサシャに聞く。

「すごかったですね。眺めも良いし、ベッドもふかふかでした。あ、優待券ありがとうございました。おかげで良い部屋に泊まれましたよ」

あの券か。

アデーレって何枚持っているんだろう?

「なら良かったわ。ジークさん、今日中にはステンレス鋼の錬成が終わるけど、どうする?」

そうだなぁ……そのままメスを作ってくれって言いたいが、アデーレは刃物がNGだ。

「銀鉱石とボーキサイトに入ってくれ。飽きたら鉄の抽出をやっても良いぞ」

メスは俺が作るか。

「わかったわ」

俺達はその後も仕事をしていく。

そして、午後からも仕事をしていくと、玄関の方に2人の人影が見えた。

1人はマルティナだが……

「エーリカ、マルティナが来たが、ギーゼラさんも来た。ちょっと付き合ってくれ」

あの人、ちょっと苦手なんだ。

「あ、ホントですね」

俺とエーリカは立ち上がると、受付に向かう。

「こんにちは!」

「御無沙汰しております」

2人が挨拶をしてきた。

マルティナは前と変わらず元気なのだが、ギーゼラさんは自然な笑顔だし、なんか輝いているように見える。

「よう、マルティナ。よく来てくれたな。ギーゼラさんもご無沙汰してます」

「お久しぶりです」

俺達も挨拶を返す。

「いえいえ。その節は本当にありがとうございました」

うーん……ギーゼラさんがぴかーってしてる。

リートの人って感じ。

「マルティナ、ハムスターは?」

エルネスティーネがいない。

「あ、お昼寝です」

マルティナが小さな木箱を見せてくる。

前に作ってやった巣箱だ。

「そうか。ゾフィーの隣がお前の席になる。支部長や皆に挨拶してこい」

「わかりました。じゃあ、お母さん、また後でね」

マルティナはそう言って、中に入っていくと、アデーレやレオノーラに挨拶していく。

「ギーゼラさん、体調の方はどうですか?」

エーリカが聞く。

「ええ。だいぶ気が楽になりましたし、王都での生活も慣れました。それにやっぱりエルちゃんがいると賑やかですね」

あいつも結構、おしゃべりだしな。

「そうですか。なら良かったです。お仕事は何を?」

「ハイデマリーさんの御実家で従業員をやってます。主に接客ですけど、楽しいですね」

やっぱりこの人って技術者向きじゃないんだよな。

「良いですねー」

「ええ。一応、薬屋でやっていた経理なんかも生きてますし、王都でもなんとかやっていけています。でも、人が多かったり、給料も物も高くてびっくりしましたね」

この人もこの町から出たことがないだろうし、そう思うかもな。

「私もびっくりしましたよー。すごいですよね。さすがは王都です」

「ええ」

うーん……本当に自然な笑顔だ。

いつぞやのどんよりとした感じもないし、立ち直っている感じはする。

「ギーゼラさん、マルティナはどうですか?」

マルティナのことを聞く。

「あの子も頑張ってますよ。ハイデマリーさんのところでお手伝いと勉強をしているようですし、家でもエルちゃんに教わっています」

本当に頑張っているようだ。

「これから1、2週間くらいマルティナを預かりますが、ギーゼラさんはどうするんですか?」

「実家の管理を業者にお願いしようと思っているんです。あとはあいさつ回りとかですね」

業者……

「役所で紹介してもらった方が良いですよ」

「ええ。エルちゃんがそう言ってましたのでそのつもりです」

あのハムスターはマルティナもだが、ギーゼラさんの役に立つから良いな。

「そうですか。では、そうしてください」

「はい。それでは私はこれで。娘をよろしくお願いします」

「いえいえ。今回は戦力として手伝ってもらいますから」

「こちらこそよろしくお願いします」

エーリカが頭を下げると、ギーゼラさんがにこっと微笑み、支部から出ていった。

「元気そうだったな」

「ええ。良かったです」

エーリカも病院に入院しているギーゼラさんを見ているからほっとした様子だ。

「意外と王都向きの人かもしれんな」

「なんかそんな感じはしましたね」

俺達が共同アトリエに戻ると、マルティナが支部長室から出てきたところだった。

「挨拶は終わったか?」

「はい。支部長さんも元気でした」

元気だな。

「まあ、座れ。お前に頼みたい仕事を説明する」

「ゴミ捨てですか?」

マルティナが自身のデスクに置かれている廃品が入った木箱を見て、首を傾げる。

「惜しいな。お前にはその廃品から鉄を抽出してほしいんだ」

「抽出?」

マルティナが鍋をコンコンと叩き、首を傾げた。

「錬金術の基本は複数の物質を掛け合わせて、違うものを作る技術と分解して素材を抽出する技術がある。前者はポーション、後者はインゴットなんかだ」

「あ、それは知ってます」

さすがに習ったか。

「お前は鉄鉱石を鉄に変えられるだろ。似たような感じでこの廃品から鉄を取り出せばいいんだ。時間はかかってもいい」

「わかりました! やってみます!」

マルティナが木箱を床に置き、席につく。

そして、鍋を取ると抽出を始めたので俺達も席につき、仕事を再開した。