軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第227話 普通、普通

俺達はテレーゼのアトリエにやってくると、仕事と勉強を始めた。

俺はテレーゼのデスクで杖用の魔石の作成の仕事をし、3人娘がソファーの方で次の試験の勉強である。

「ふう……」

一息つき、エーリカが淹れてくれたコーヒーを飲む。

エンチャントは得意だし、魔石作りもよくやっていたのだが、求められているのが最上級なため、やはり時間がかかりそうだ。

これに加えて、試験問題作りや休暇も入るし、1週間でなんとかってところだな。

「ん?」

魔石を作りながら工程を考えていると、ノックの音が部屋に響いたので全員が扉の方を見た。

「入れー」

テレーゼかなと思い、声をかける。

すると、扉が開き、テレーゼではなく、マルタが部屋に入ってきた。

「お疲れー」

「お疲れ」

アデーレが応対する。

「勉強? 真面目ねー」

「どうかしら? 一応、今は私達も職務中なのよね」

偽出張だからな。

「それにしても偉いわよ。私なら遊ぶ」

「あなたは遊びなさい。全然休めてないでしょ……それで何か用?」

「今夜だけど、ご飯に行かない? サシャとエルヴィーラも来るよ」

エルヴィーラも加わったらしい。

「あー……そうね……」

アデーレがこちらを見てくる。

「行けよ。せっかくだろ」

「そうですよ。王都に来たんですし、お友達と会うべきです」

「私達はホテルで夕食を食べるよ。でも、あまり遅くなったらダメだよ。明日は王都観光だからね」

エーリカとレオノーラも勧めた。

「じゃあ……終業後でいい?」

頷いたアデーレがマルタに確認する。

「うん。受付で集合ね。じゃあ、ジーク君、そういうことだから。彼女さんを借りるねー」

マルタはそう言って、部屋を出ていった。

「合コンだったらすぐに帰るんですよ」

「彼女さん、楽しんできてね」

エーリカとレオノーラがからかうようにニヤニヤしながら忠告する。

「彼女言うな、奥さん」

そいつはお前の奥さんでもあるぞ。

「アデーレ、エルヴィーラにマルティナのことを気にかけてやるように言ってくれ」

「そうね。伝えておくわ……ん? 電話よ?」

今度はデスクにある電話が鳴っている。

テレーゼの部屋だし、取るべきか悩んだが、取ることにした。

「もしもし?」

『あ、ジーク先輩ですか?』

サシャだ。

「どうした? テレーゼは魔導石製作チームの共同アトリエだぞ」

『いえ、ジーク先輩に用です。お忙しいところをすみませんが、1階の受付まで来てもらえませんか?』

何だろ?

「わかった。すぐに降りる」

『よろしくお願いします』

電話が切れたので受話器を置いた。

「どうしたんですか?」

エーリカが聞いてくる。

「サシャから呼ばれた。誰か来たのかな? よくわからんが、ちょっと降りてくる」

そう言って、立ち上がると、デスクで寝ているヘレンを抱え、アトリエを出た。

そして、階段を降りていき、サシャがいる受付に向かう。

「あ、ジーク先輩、わざわざすみません」

俺に気付いたサシャが申し訳なさそうな顔で謝ってきた。

「構わんが、どうした? 来客か?」

その割には誰もおらんが。

「いえ、外線があったのですが、折り返し、こちらからかけるようにしました」

ん?

「回してくれれば出たぞ」

「えーっと、実は相手が軍のお偉いさんだったんです」

は? 軍?

「なんでそんなのが俺に電話をする? 本部長の間違いじゃないか?」

「いえ、ジークさんです。そのお偉いさんというのはイグナーツ・フォン・ヨードル元帥閣下です」

元帥って……

この国の軍で一番偉い奴じゃないか。

なんでそんな奴が俺に……待て。

「ヨードル?」

「はい。アデーレ先輩のお爺様です」

アデーレの爺さんが軍のお偉いさんとは聞いていたが、軍のトップかよ。

そんなのが俺に連絡ということは弟子にしたこととリートに引き抜いたことだな。

「あー、それで外線を回さなかったんだな?」

「はい……アデーレ先輩の耳に入っていいものか判断がつかなかったもので」

サシャは受付が向いているかもな。

ここで普通の奴は元帥という立場にビビって繋いでしまう。

でも、そうせずに一度切った。

それでいい。

相手は軍であり、こちらはあいつらに武器や資源を供給する錬金術師協会なのだから強気で良い。

「電話番号は?」

「こちらに」

サシャがメモ書きを渡してくれる。

「電話を借りるぞ」

「どうぞ」

許可を得られたのでメモ書きに書いてある番号に電話する。

『こちら統合参謀本部です』

女性の声が聞こえてきた。

「こちら錬金術師協会リート支部のジークヴァルト・アレクサンダーだ。イグナーツ・フォン・ヨードル元帥を頼む」

「失礼ですが、元帥にどのような用でしょう?」

ちょっと怪訝な感じが伝わってくる。

「電話をかけてきたのは元帥の方だし、それはこちらのセリフだ。こちらは陛下から直接依頼をもらっており、非常に忙しい。用件がないならこちらは用もない。電話を繋ぐ立場のお前が把握していないならイタズラ電話と判断する。失礼」

そう言って、電話を切った。

「おー、ジーク先輩……強気ですねー」

「これは向こうが悪い。見とけ。1分以内に折り返しの電話がかかってくるぞ」

軍はこういうのに厳しいのだ。

「相手はアデーレ先輩のお爺様とはいえ、軍のトップですよ? 怖くないですか?」

「まったく。俺は陛下に直接資格証を渡され、国家のために尽くすように命じられた3級国家錬金術師だ。それに孫娘の師匠だぞ。敬意をもって接するべきだ」

電話ではなく、直接出向いてくるべきなのだ。

本当に来られても困るけど。

「ジーク先輩はやはり普通の人とは違いますねー。すごいと思います……って、電話です」

もう来たか。

早かったな。

まあ、どうせ俺を見極めるためにわざとああいう対応をしたんだろうけどな。

バカが。

俺以下の分際で人を試すな。