軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第208話 晴れ時々曇り

支部長との話を終え、デスクに戻ると、エーリカが淹れてくれたコーヒーを飲む。

「どうでした?」

コーヒーを一口飲み、デスクに置くと、エーリカが聞いてくる。

「支部長に話したら許可を得られた。マルティナの様子も気になるし、俺も同行するわ」

「おー、良かったです。確かにマルティナちゃんは気になりますね。冷凍したお魚さんを持っていってあげましょう」

そういう話もしてたな。

「そうするか。そういうわけだから今週は仕事を頑張ろう」

「わかりました!」

俺達は仕事に入り、各自が黙々と作業を続けていく。

俺は軍からもらった魔導船の修正設計業務の報告書のチェックだ。

あれから提案通りにそういう業務が出たので俺がそれを担当していた。

まあ、図面はもうできていたし、それの報告書を書くだけだったので非常に楽だった。

「こんなものか……ちょっと軍の詰所に行ってくる」

報告書のチェックを終えたので立ち上がる。

「あ、一緒に行きましょうか?」

こいつらって本当に一人行動をしないんだよな……

でもまあ、俺の言動がよろしくないのはもう十分にわかっているのでエーリカに対応してもらった方が良いか。

「そうだな。軍だし、ついてきてくれ」

「わかりました。では、いってきます」

エーリカが正面にいるレオノーラとアデーレに声をかける。

「いってらっしゃーい。ユリアーナの彼氏さんとルッツ君の彼女さんによろしく」

「それはもう名前でいいじゃないの……」

ホントだな。

俺とエーリカは支部を出ると、軍の詰所に向かう。

「王都、楽しみですね」

エーリカは今日も満面の笑みだ。

なんかキラキラしてる。

「一応、試験だぞ?」

「わかってますよ。受かるとは思ってませんが、やれるだけのことはやります」

ああ、賢い子だ……

同じ結果でもそこで努力をしたのか、そうでないのかでは次が違う。

俺にストレスしか寄越さなかった薬屋の娘の最大の功績は3人娘がとんでもなく優秀であることに気付かせてくれたことだ。

「鑑定はレオノーラみたいに最初からできる奴もいるが、経験で補えるものだ。だから落ちたとしてもいずれは必ず受かるから安心しろ」

「はい。頑張ります。まあ、落ちるのは本当にわかってますよ。むしろ、受かっても困ります。全然、鑑定ができない鑑定士なんかになりたくないですよ」

なんでウチの3人娘はノンストレスなんだろう?

マルティナは子供だし、仕方がない部分もあったが、世の中というのは基本的にストレスしか与えてこない奴らばっかりなのに。

「そうだな。鑑定士の勉強は錬金術の勉強にもなるし、錬金術の勉強は鑑定の勉強にもなる。頑張ってくれ」

「はい。ジークさんに教えてもらえればできるような気がします」

俺じゃなくてもお前らは伸びると思うけどな。

「鑑定士はともかく、8級の国家錬金術師試験の方はどうだ?」

今、大事なのはそっちだ。

「やはり難易度は上がりますね。特に筆記がすごいです。アデーレさんはよくほぼ独学で受かったなーって思います」

アデーレの前回の試験は実技の方を重視していたのでほぼというか、筆記に関してはまったく教えていない。

「アデーレは頭が良いし、勉強もできるから筆記試験には強いからな。まあ、それはお前もだ。学生時代、成績が良かったんだろう?」

「頑張りましたから。アデーレさんはこの国一番の王都の学校ですからすごく賢いんでしょうね」

かもな。

「あいつ、どれくらいだったんだろう?」

首席でないことは確かだけど。

「御本人に聞かれたらどうですか?」

エーリカが笑いながら提案してくる。

多分、からかっている。

「聞かない」

多分、地雷でアデーレがジト目になるだけ。

「大丈夫だと思いますけどね」

「やめとく」

「そうですか。まあ、来月の試験も頑張ります」

来月、年4回ある国家錬金術師試験がある。

年に4回もあるのは管理する側は大変だろうが、人手不足だし、国が錬金術師育成に力を注いでるので仕方がない。

まあ、3級以上で試験官に指名された奴は頑張ってくれ。

「実際、感じはどうだ?」

「筆記はなんとか……実技がどうでしょうかね? こればっかりは受けたことがないのでわかりません」

安心しろ。

アデーレでも受かった8級だ。

エーリカなら受かる。

「大丈夫だと思うぞ。お前は錬成も学力も安定感があるから試験には強い。あとはちゃんと準備をし、当日までに備えればいい」

「わかりました! あの、今日、ちょっと物理を見てもらえませんかね?」

「いいぞ」

お前らの物理ならいくらでも見てやるわ。

どっかのバカに教えるよりずっと楽。

今頃、ハイデマリー一門はマルティナの物理を見て、目が点になってるんじゃないかね?

俺達が話しながら歩いていると、軍の詰所にやってくる。

そして、中に入ると、奥にユリアーナを発見した。

「ユリアーナさーん」

エーリカが明るく声をかける。

すると、ユリアーナが振り向き、これまた明るい笑顔でこちらにやってきた。

「おはようございます。今日は御二人で来たんですね」

こいつもキラキラしている。

ルッツもだし、この町の人間はこれがデフォなんだろうか?

「ええ。例の魔導船の修正設計業務を終えました」

エーリカが頷く。

「また早いですね……」

ユリアーナが呆れた表情で俺を見てくる。

「船を造る前に設計図の方は描いたからな。それに細かいのはゾフィーが描いてくれた。あとは報告書をまとめるだけだ」

そう言って、報告書と図面をカウンターに置いた。

「それでも早いですよ……すみませんが、確認します」

ユリアーナはそう言って、図面や報告書を確認し始める。

「お前にわかるのか?」

別にバカにしているわけではない。

「わかるわけないじゃないですか。指定されたものがあるかの確認です。照査の方は後日、担当の者が確認します」

それはそうか。

「じゃあ、何かあったら言ってくれ。ミスはないが、わからないことがあったら説明してやる。あ、でも、今週末から来週の初めにかけては留守にするからな」

「出張ですか?」

「いや、試験だ。鑑定士の試験があるから王都に行くんだよ。日帰りできる距離じゃないから数日は空ける」

ちょっと遊んでから帰るし。

「あー、錬金術師や魔術師の方々は試験がありますもんね。就職してからも勉強で大変そうです」

「人生は死ぬまで勉強だぞ」

「ご立派です」

こいつも勉強嫌いだな……

ルッツとお似合いだ。

まあ、軍人は頭の良さよりも強さや体力が大事だからな。

「お前らも昇級試験があるだろうに……ところでルッツは?」

「今日は警邏です。町を歩いていたら会えると思いますよ」

じゃあ、無理だ。

もう帰るし、帰ったら外に出ない。

「最近、暑いのに大変だな」

「それが仕事ですよ」

軍人にならなくて良かった。

「王都に行くけど、お土産は期待しとけよ。ウチの女性陣がちゃんと良いものを選んでくれるから」

「ありがとうございます。私達が出張でどこかに行く時はお返ししようねってルッツと話していますよ」

あ、キラキラが曇った。