軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第173話 誰?

「まあ、なんでもいいだろ。とにかく、まずは木材の加工から始めよう」

「結局、木材か……」

アデーレはずっと木箱だったからな。

「嫌なら動力エンジンでもやるか?」

「無理ね。私には難易度が高すぎる」

アデーレは設計図に描かれているエンジンを見て、きっぱりと頷く。

「その辺りは精密機械になるからな。エンジン自体を買ってもいいけど、せっかく専門家のゾフィーが来るからあいつにやらせる。というわけで俺達は木材だ。といっても曲線の部材もあるし、ミリ単位の作業だから難易度は高いからな」

「頑張りましょう」

俺達は設計図を見ながら手分けして、作業を開始した。

「意外と難しいですね」

「うん。というか、一つ一つの部材が大きい」

「それなのに細かいわねー……」

3人はぶつくさと言いながらも木材を加工していく。

「暑っつ……」

「ここ、エアコンがないわね……」

さすがは貴族令嬢。

早くも文句が出てきた。

エーリカは笑顔で……あ、いや、エーリカも笑顔が曇っている。

「アイスフィールド」

正直、俺も暑いと思っていたし、ヘレンが機材の方でべたーっとなっているので魔法を使った。

すると、温度が一気に下がっていき、汗が引く。

「涼しいです!」

「ジーク君、すごーい!」

「あなたって何でもできるわね」

まあな。

魔法は得意だ。

「もう夏になるもんなー。熱中症だけは勘弁だ」

これからどんどん温度が上がると気を付けないといけない。

このドックは風通しも良くないし、当然のようにエアコンもないし。

「海が近いと泳ぎたくなりますね。泳げませんけど」

「今日はエーリカが作ってくれたお弁当があるけど、昼休みに魚でも釣って食べようよ」

「まあ、あの謎の餌のおかげで爆釣りだものね」

「良いと思います!」

あ、ヘレンが復活した。

俺達は雑談をしながら作業を続けていく。

すると、シャッターの方からこちらを覗いている2つの人影が見えた。

「ん?」

2人は黒髪の男女の組み合わせであり、若く見える。

俺達とはそう変わらないだろう。

そして、まったく見覚えがない。

「あ……」

エーリカが俺の視線に気付き、2人の方を見ると、声を出した。

それにより、レオノーラとアデーレも2人を見る。

「やあ、エーリカ」

「久しぶりね」

2人がエーリカに声をかけた。

知り合いだろうか?

「御無沙汰してます……」

エーリカがそう言って、頭を軽く下げる。

「支部も船の依頼を受けたんだね? おかげでこっちは大損だよ」

「すみません……」

謝るなよ……

「あー、別に責めているわけじゃないのよ。あなた達にはあなた達の仕事があるもの」

女の方がフォローした。

「……誰?」

小声でレオノーラに聞く。

「……知らない」

「……エーリカさんの知り合いのようだけど」

2人も知らないなら俺は絶対に知らんな。

「……ジーク様、エーリカさんが困っておいでです。助けましょう」

涼しくなったことで戻ってきたヘレンが小声で助言してきた。

「よし……エーリカ、こいつら、誰だ?」

「あ、魔法学校の2個上の先輩です」

あー……なんとなくわかった。

しかし、今度は先輩か……

対応に困るな。

「失礼。私はジークヴァルトと申します。何か御用でしょうか?」

とりあえずは外向けの対応で聞いてみる。

「君がジークヴァルトか」

「あまり優秀そうには見えないわね」

あん?

「こちらが名乗ったのだから名前を名乗れ、無能。その程度の魔力でよく人を評価できるな」

「ジーク様ぁ……」

こいつらは民間の錬金術師だ。

敵だからどうでもいいわ。

「いきなりの挨拶だな……俺はヴァルター・ヤンセンだ。9級になる」

「私はマライア・バルツァー。7級ね。怒らせちゃったかしら?」

9級と7級風情がよく言えるな……

まあ、エーリカの2個上ってことは俺達と同級になるからそれを考えるとすごいけども。

「別に……そっちも町から船の依頼を受注したのか?」

「ええ、そうよ。私達の家はアトリエを経営しているからね。それぞれ依頼を受けたわけ」

マライアとやらが答える。

「民間もここのドックを使うわけか……」

「ええ。どこが受注しようとここを使うのよ」

民間と一緒かよ。

めんどくせ。

「ふーん……それで何の用だ? こっちは職務中だぞ」

「いえ、特に用はないわ。ただの挨拶ね。協会が受注したのは知っていたし、だったらエーリカがいるかなって思っただけ」

様子見かな?

「そうかい。まあ、そっちも頑張ってくれ」

「ええ。お互いに頑張りましょう」

「王都の天才錬金術師のお手並み拝見ってところだな」

当然のように新聞を読んでる……

「はいはい……」

めんどくせ。

「じゃあ、エーリカ、頑張ってね」

「じゃあな」

「あ、はい。先輩方も……」

2人はエーリカに挨拶をすると、ドックを出ていった。

「仲良いのか?」

2人がいなくなったので一応、聞いてみる。

「えーっと、お世話になった先輩です。私、生徒会に入ってまして……」

せ、生徒会?

部活と並んで時間の無駄でしかないと思っている謎の組織か?

「へー……エーリカさん、生徒会に入ってたのね。私も入ってたわ」

え?

そうなの?

同じ学校なのに知らない……

「2人共、すごいね。私はまったく入る気がなかったよ」

レオノーラだけが心の頼りだわ。

「となると、あの2人も生徒会だったわけか?」

「はい。私が1年の時の生徒会長がマライア先輩で副会長がヴァルター先輩です」

生徒会長だって。

俺、在学していた3年間の生徒会長も覚えてないぞ。

「ふーん……お前、まさか3年時の生徒会長とかじゃないよな?」

「そのまさかです」

おー……エーリカには悪いが、まったく想像ができない。

「あ、私と一緒」

へ? アデーレ、生徒会長だったの?

やっべ……久しぶりの地雷だ。

レオノーラー、話題を変えろー。

「2人共、すごいねー……じゃあ、あの2人は優秀だったわけ? ヴァルター君は私達と同じ9級でマライアは7級って言ってたし」

ナイスだ、レオノーラ!

「とても優秀な方々でしたね。学年1位、2位を争ってました。ただ、御二方も言っておられましたが、実家がアトリエを営んでいますのでそのまま家に就職しましたね」

「ふーん……じゃあ、宣戦布告かな?」

レオノーラがアデーレを見る。

「じゃない? 多分、新聞で話題になっているジークさんが気になったところでしょう」

やっぱりあの新聞は良くなかったかもしれん。

「お手並み拝見って言ってましたね……」

「ジーク君に勝てるわけないのにねー」

「まあねー…………ハァ、あからさまにしゃべらなくなってる……ジークさん、あなたが私のことを覚えてないのはわかったから急に黙らないでよ」

あ、バレてる。