軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第156話 隣の芝生は青く見える

ゾフィーとテレーゼが帰っていったので席に戻り、抽出機と分解機で盛り上がっている3人娘を眺めながら作業を再開する。

以降、今週はハイデマリーもテレーゼも訪ねてこなかったのでいつもの日常に戻った。

そして、週末の夕方、ようやく1週間の仕事も終わったので腕を伸ばす。

「レオノーラさん、帰りますか」

「そうだね」

エーリカとレオノーラは終業時間と共にすぐさま立ち上がり、帰っていった。

「3度目になるんだが、言うぞ。皆で帰ればいいじゃん」

「2人で帰り、待ち合わせをする。なんか良くない?」

わからん……

わからんが、3人は良いと思っているからやっているんだろうな。

「まあいいわ。帰るか」

「ええ」

俺とアデーレは片付けと戸締りをすると、支部を出た。

そして、30秒だけ一緒に帰り、アパートの前で別れると、部屋でヘレンとゆっくりと過ごす。

「ようやく最後だ」

「ようやくというセリフは不要ですが、そうですね」

今回の失敗は同じところにしたことだな。

正直、またあそこに行くのかって思ってる。

「次の試験は3人まとめてにしようかな」

もちろん、全員合格したらの話。

「お祝いはそれでいいでしょうね」

お祝いは、か……

今度、本屋にでも行くかな……

俺とヘレンがゆっくりと過ごしていると、チャイムが鳴ったので玄関まで行く。

そして、扉を開けると、いつぞやも見た白いドレス姿のアデーレが立っていた。

「白いな」

「言うと思った」

アデーレが笑う。

「冗談だ。お前は華やかだな」

別にエーリカとレオノーラが華やかじゃないというわけではない。

「どこで覚えてきたの?」

ナンパ本のせいだな。

「感想を言っただけだ。覚えてきたのだと『良いよー、すっごく似合うよー』になる」

「それはひどいわね……」

俺もそう思う。

「色んな本を読んでわかったことだが、キャラじゃないのは良くないわ」

「それはそうね。でも、あなたは本当に変わったと思うわ。本部にいた時のあなたからそんな言葉が出ると思えないもの」

ヘレンしか褒めたことない。

「関係性も変わったしな」

仕事と関わり合いがなく、まったく眼中になかった受付から同僚になった。

もっと言うと、弟子だ。

「それもそうね。では、行きましょうか」

アデーレがそう言ってきたので手を差し出す。

「あら? 気が利きますね」

「俺は貴族じゃないからこれの意味がいまいちわからないんだけどな」

「意味なんてありません。ただ、そうしておけば女性が喜ぶのです」

喜ぶらしい。

あと、敬語モードに変わってる。

俺達は表まで行き、車に乗り込むと、ホテルに向けて出発した。

「今回は車なんですね」

前回は歩きだった。

「歩きも悪くないが、ちょっと遠かっただろ」

「確かにそうですね。そろそろ暑くなってきましたし、こちらの方が良いですね」

「ちなみに、エーリカは恥ずかしいんだと」

かなり周りの目を気にしている様子だった。

「慣れてないでしょうからね。王都で選んだ時も無理無理言ってました」

「間違っているイメージかもしれんが、ドレスって派手だったり、露出が多いイメージがあるな」

「そういうのもあります。ですが、そういうのは選びませんよ」

そうなのか?

「何か基準でもあるのか?」

「あなたが好まないからです」

うーん……まあ、そうかもな。

「心配が勝つ気がするな。あと派手なのは目が痛い」

「でしょうね。でも、どうしたんです? そういうことを聞いてくるとは珍しいですね」

「いやさ、俺もドレスコードに合うような服を買うか、クリスに恵んでもらわないといけないと思ってな。だから参考になるかなーっと」

考えたことないから全然わからないのだ。

「そういうことですか……あの、男性と女性ではまったく異なるので一切、参考にはなりませんよ。男性は支部長か、それこそクリスさんに聞いた方が良いと思います」

「そんなもんか……」

「私が言えることはちゃんと体型にあった服を着ることです。あとは私の好み的には背筋を伸ばして自信を持つことですね…………あ、いや、あなたは元からそうでした」

良い意味で言ってるんだろうか?

「じゃあ、支部長に相談してみるかなー」

「良いんじゃないですか? 支部長は夜会なんかの出席経験も豊富でしょう」

あんな高い肉をもらってるくらいだし、繋がりは多そうだ。

俺達が話をしていると、ホテルに到着したので最上階のレストランに向かう。

その際にテレーゼとハイデマリーがいないかも確認したが、ちゃんといなかったので安心して席についた。

そして、乾杯をすると、食事を始める。

「前回よりも高いコースですね」

アデーレもわかるらしい。

「支部長から金を出してもらったんだよ。ちゃんと礼を言っておけ」

「わかりました」

「ああ……アデーレ、8級に受かって良かったな」

「それはもう……見苦しいところを見せましたね」

うん。

発表前日の夜ね。

「次の7級もあんな感じか?」

「多分、そうですね。あなたの睡眠薬でも寝られなかったら付き合ってください」

大丈夫だと思うけどなー。

「ああ。でも、7級は実技もだが、筆記も大変だぞ。次の試験で合格を狙うか? 結構、大変だぞ」

「やるからには狙います。それに私は勉強が苦ではないので大丈夫です。田舎の山で生まれ育った武家の娘ですけど、元々、外で遊ぶより部屋で本を読んでいる方が好きでした」

やっぱりインドアだな。

「それでレオノーラと仲良くなったのか?」

あいつは本の虫だ。

「ええ。同世代で趣味が合ったんです。昔は私の方が背が低かったんですよ?」

信じられないが、子供の時ならありえる。

要はそんな時からの友人なのだ。

「そういう友人がいるのは良いな」

俺はそういう友人がいたことがない。

「あなたの口からそんな言葉が出るなんてね……というか、一門の方がいらっしゃるじゃないですか。なんだかんだで仲が良さそうで羨ましいと思いますよ。お互いに気心が知れている気がします」

気心ね……

まあ、お互いに遠慮がないのは事実だ。

全員、ガキの頃からの付き合いだし。