軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第134話 支部長に事情説明

マルティナのお母さんとの話を終えた俺達は病院を出て、支部に戻るために歩いていく。

「どうしましょうか?」

歩いていると、エーリカが聞いてきた。

「わからん。というか、何とも言えん。支部長に相談しよう」

切り捨てるのは簡単だ。

しかし……

「それもそうですね……」

エーリカは複雑そうな表情を浮かべている。

「エーリカ。お前の家って船大工だったんだな」

「そうですよ。あれ? 言ってませんでしたっけ?」

聞いてない。

「嫌な言い方をするが、まったく興味がなかった」

「ジークさんはそうでしょうねー」

エーリカが気にしていないように笑う。

「錬金術師になるって反対されなかったのか?」

「うーん……魔法学校に入りたいって言った時は一度反対されましたね。ただ、それは魔術師になると思ったかららしいです。錬金術師志望って言ったら賛成してくれましたよ」

魔術師は危険だからな。

普通の親は反対する。

「船大工って儲かるのか?」

「普通? 私は奨学金ですからね。今も給料から天引きされていますよ」

俺もだわ。

「生活は大変か?」

「いやー、こう言ったらなんですけど、結構、もらってますからね。それに家賃も安いし」

まあ、10万エル以上のドレスを買う余裕はあるか。

「9級になったから来月はもっと上がるぞ」

「ジークさんのおかげですよー。錬金術を教えてくださいますし、色んな料理も教えてくださいました。さらにはアデーレさんまで来てくださいましたよ。良いことしか起きてませんね」

本当に前向きな子だ。

支部、燃えてるんだぞ。

しかも、言えないけど、多分、俺のせい。

「うーん……」

「マルティナちゃんです?」

「まあ……あいつも奨学金なのかね?」

「どうでしょう? お母さんの口振り的には出してそうですけど」

蓄えがあるって言ってたしな。

「かもな……まあいい。支部長と3人で話そう」

「レオノーラさんとアデーレさんは?」

「あいつらは正論を言うからいい」

ほっとけ。

絶対にこう言う。

正直、俺だってそう思っている。

優しいエーリカだって、後輩のことを考えて口には出さないだろうが、脳裏にはあるはずだ。

「かもしれませんね……」

俺達はそのまま歩いていき、支部に戻った。

そして、支部長室をノックする。

「支部長、ちょっとよろしいですか?」

『いいぞ』

入室の許可を得たのでエーリカと共に部屋に入り、デスクにつく支部長のもとに向かった。

「お時間よろしいですか?」

「それは構わんが、どうした? 何かあったのか?」

「前に私の歓迎会をしてくださった時に囲い込みの話をしたことを覚えていらっしゃいますか?」

最初に錬金術師が少ないということを聞いて、歓迎会で囲い込みの話をしたのだ。

「ああ、覚えてるぞ。それでエーリカが学校に行ったんだろ」

「ええ。それで昨日、生徒さんが来ました。マルティナ・キルシュという高等部の2年生です」

「ほう……良いんじゃないか?」

うーん、微妙なんだなー。

「ただ、私が失念しておりましたが、この町には囲い込みという文化が浸透しておらず、希望とは別の者が来ました」

「私の説明が悪かったんです」

そこは何とも言えない。

あまり勧められることではないし、正直に言っていいものでもないし。

言わば暗黙の了解なのだ。

「気にするな。お前が知らない時点で気付けば良かった」

「でも……」

「馬鹿正直に説明して、民間の連中に抗議されても困る」

「すみません……」

仕方がないだろう。

「いまいち話が見えんのだが……」

支部長が要領を得ていない様子だ。

「実はそのマルティナは薬屋の娘でして、将来的には家を継ぎたいというのです」

「それは……囲い込みにならんだろ」

将来、ウチに入ってくれるから時間を割いてまで教えるのだ。

「そういうことです」

「ふむ……じゃあ、断ればよくないか?」

「これがちょっと面倒です。まず断った場合、今後はそういう学生が来なくなる可能性があります」

「そうか? 別にそんなことないと思うが……」

普通はな。

「マルティナの家の薬屋は昨年、店を取り仕切っていた薬師の祖父が亡くなり、現在は不得手な母親がやっているようです。マルティナはそんな母親を助けたいという実に親想いで民衆が感動するような状況なんです」

人はこういうのを好む。

「なるほどな……父親は?」

「10年以上前に西部戦線で亡くなったようです。なんでも流行り病が起きたため、衛生兵として、戦地に赴いたと……支部長は御存じでは?」

英雄らしいし。

「あれか……あれは軍部のミスなんだ。流行り病により、多数の重症者を出したから急遽、医者や薬師を集めたのだが、その情報が敵に漏れ、奇襲を食らったんだ。結果、医者や薬師の半数以上が死んだ」

何してんだ……

「その話を聞いて思ったんですが、錬金術師は?」

「協会が拒否した。権力が強いし、『お前らの武器を誰が作っていると思っているんだ!?』とキレられたらしい。それで何も言えん」

その当時はまだウチの師匠がトップということではないが、まあ、協会は拒否だわな。

「錬金術師は女性が多いので嫌がりますよ。戦地が嫌で魔術師ではなく、錬金術師になった奴らばかりです」

俺もそう。

戦地に行けって言われたら断固拒否する。

それどころかストライキする。

「まあな……しかし、その時亡くなった薬師の娘か」

「新聞記者にその情報を掴まれたらヤバい記事を書かれそうですね」

その戦地の英雄がトップの支部なんだから。

「ホントにな……それで受け入れるわけか?」

「いえ、それだけなら拒否します。もう1つの理由として、その店がどう考えても数ヶ月で潰れると思われるからです。あの母親では店を維持できません」

絶対に無理。

能力がないし、知識も意識もない。

そして、それ以上にあの人はすでに……