軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第012話 納品

歓迎会は一次会で終わり、店を出た。

「ジーク、俺はこっちだからエーリカを送ってやれ。あと、これがお前の部屋の鍵な」

支部長が鍵を渡してくれる。

「わかりました」

「じゃあな」

支部長と別れると、帰る方向が同じエーリカと共に暗くなった街中を歩いていく。

「本当に酒を飲んだのは俺だけだったな」

「私はお酒に弱いですし、支部長は昔、お酒で失敗したことがあるそうですよ」

へー……

「エーリカ、変なことを聞くようだが、今日の俺はどうだった? 変じゃなかったか? こいつとは働けないとは思わなかったか?」

心配。

「うーん……ジークさんはその辺りをものすごく気にされているんだなっていうのはわかりましたね。でも、別にそこまで気にすることはないと思いますよ」

そうか?

「正直に言うが、俺はお前の勉強を見てて、『なんでこんなもんもわからないんだろう?』って思ってたぞ」

「ジークさんと私は2歳しか違いませんが、階級は私が10級でジークさんが3級ですし、才能や能力の差は明らかです。だからそう思うのは仕方がないことでしょうし、実際にそうなんでしょう。でも、ジークさんはわかりやすく教えてくださいましたし、何よりも心強いです。私とレオノーラさんの2人だけはやはり不安でしたから」

10級が2人ではなー……

「レオノーラは若いのか?」

「ジークさんと同い年ですね」

22歳か……

やはり若いな。

しかし、そうなるとこの1年、ほぼ新米の2人だけで回していたのか。

「それはきついな」

「きつかったですねー。教えてくれる人もいませんでしたし、何度も失敗しました」

想像以上にひどいことになっている支部なんだな……

俺達は話をしながらすっかり暗くなった道を歩き、アパートの前までやってきた。

「エーリカ、俺はあまり対人関係が得意ではないが、この支部を立て直すために努力しよう。これからよろしくな」

「はい。よろしくお願いします」

「じゃあ、また明日」

「はい。おやすみなさい」

エーリカが丁寧に頭を下げ、自分の部屋に入ったのでキーホルダーに書かれている部屋番号を見る。

「俺の部屋はこっちか」

キーホルダーには【A-102】と書かれており、エーリカやレオノーラと同じ棟であり、ちょうどエーリカの部屋の対面だった。

扉の前に行き、鍵を開けて中に入ると、真っ暗だったので電灯を点ける。

「当たり前ですけど、何もないですね。ちょっと寂しいです」

「昨日のエーリカの部屋を見ているからな」

同じ間取りだが、エーリカの部屋は女性の部屋らしく、明るくて可愛らしかった。

「今日は荷物を出すだけにして、早めに休みましょう」

「そうだな。荷物の整理は明日からにしよう」

俺達は空間魔法から荷物を出し、ベッドだけを設置すると、風呂に入る。

風呂はちゃんと浴槽もあったので湯を溜め、浸かることにした。

なお、ヘレンもお湯を入れた桶に浸かっている。

ヘレンは猫のくせにお風呂が好きなのだ。

「なんか大変そうな職場だな……」

天井をぼーっと見上げながらつぶやく。

「私は良い職場だと思いますよ。エーリカさんはもちろんですが、なんだかんだで支部長さんも良い方だったじゃないですか」

まあ、めんどくさそうな感じはないし、貴族軍人にしてはフランクな人だった。

「レオノーラとやらはどうかね?」

「そこまではわかりませんが、きっと上手くいきますよ」

そうだと良いな。

「ヘレン……歓迎会は悪くなかったぞ」

俺しか飲んでなかったけど。

「それは良かったですね。ジーク様、人は色んな方がいます。嫌な人も多いでしょうが、それと同じくらいに良い人もいるんですよ」

「そうかい……良い人でありたいな」

今までの俺は嫌な奴だったんだろう。

いや、今でもそうだ。

だが、やり直すためには変わらないといけないのだ。

たとえ、出世の道は絶たれたとしても俺の二度目の人生はまだ終わっていないのだから。

「明日からも頑張りましょう」

「ああ」

俺達はゆっくりと湯に漬かって風呂から上がると、段ボールだらけになっている寝室に行き、就寝した。

そして翌日、ヘレンに起こしてもらった俺は準備をし、支部に向かった。

エーリカが言うように通勤時間は30秒だったので非常に楽だ。

「明日からはもう少し寝られるな」

そう言いながら支部に入ったが、当然のように誰もいない。

「いや、朝食を食べてないじゃないですか」

「昨日、パンを買い忘れたからな。まあ、あとで携帯食とサプリメントを飲むさ……あれ? エーリカがいないな」

2階に上がったのだが、誰もいない。

ただ、電灯は点いていた。

「3階のようですね。上からエーリカさんの匂いがします」

「倉庫か……」

そのまま階段を上がり、3階に来ると、エーリカが納品するポーションを魔法のカバンに入れていた。

「あ、ジークさん、おはようございます」

俺に気付いたエーリカが挨拶をしてくる。

「ああ、おはよう。納品の準備か?」

「ええ。このポーションを入れたら終わりです。朝一で役所と軍の詰所に行きましょう」

「わかった」

そのまま見ていると、エーリカが最後のポーションをカバンに入れ、立ち上がった。

「準備できました。まずはここから近い役所ですね。ジークさんもこれから一人で行くことあるでしょうし、案内しましょう」

「頼むわ」

俺達は階段を降り、支部を出た。

そして、エーリカが左の方に歩いていったのでついていく。

「ここですね」

エーリカが3階建ての建物の前で立ち止まる。

支部から300メートル程度の距離であり、本当に近いようだ。

そのまま役所に入ると、役所には大勢の職員と利用者がおり、ウチの支部とは天と地だった。

「なんか悲しくなるな」

「言わないでくださいよ」

エーリカも同じようなことを感じているらしい。

「だな……担当の受付は?」

「あっちです」

エーリカが右端の方を指差して歩いていったのでついていった。

すると、一番端の受付の40代くらいのおじさんの前に立つ。

「ルーベルトさん」

エーリカが書き物をしている職員に声をかけた。

「んー? あー、エーリカちゃんか……どうしたんだい?」

「方眼紙とレンガの納品です」

「え? 期日はまだ先だけど、もうできたのかい?」

「はい。昨日、赴任したジークさんがやってくれたんです」

「ジークさん?」

ルーベルトがチラッと俺を見てくる。

「はい。王都から赴任してきたんですよ。ジークさん、こちらが担当のルーベルトさんです」

エーリカが紹介してきたので一歩前に出る。

「ジークヴァルト・アレクサンダーです。よろしくお願いします」

「ルーベルトです。こちらこそよろしくお願いします。エーリカちゃん、同僚が増えて良かったね」

ルーベルトがエーリカに向かってにっこりと笑う。

「はい!」

「じゃあ、次の依頼をお願いしたいんだけど、いいかい?」

納品した日に依頼か……

やっぱり役所が用意してるわ。

「何でしょう?」

「またレンガを50個納品してほしい。それと鉄鉱石50個渡すからそれをインゴットにしてほしいんだ。できるかい?」

「インゴット……」

エーリカがチラッと見てくる。

多分、やったことがないんだろう。

「問題ないぞ」

インゴットなんか基礎の一つだ。

何も難しいことはない。

「大丈夫です。期日は?」

「ひと月くらいだね」

「わかりました」

エーリカが頷く。

「じゃあ、鉄鉱石を持ってくるよ。レンガをそこに出しておいて」

ルーベルトがそう言って奥に行くと、エーリカが木箱に入ったレンガをカウンターに置く。

しばらくすると、ルーベルトが戻ってきたので鉄鉱石を受け取り、役所を出た。