軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第113話 エスコート

テレーゼ達と食事を終えた後、俺は1人で本部に戻ってきた。

女性陣は昼食を食べ終えた後に近くにある有名なクレープ屋さんに行ったのだが、俺はもう入らないので興味を示していたヘレンをエーリカに託したのだ。

「よー食えるわ……」

食いしん坊のヘレンはともかく、女性陣はお腹いっぱいだねーって言い合ってたくせにリーゼロッテが提案したら即決でクレープ屋に行ってしまった。

俺は呆れながらも本部に入り、エントランスを歩いていると、受付でサシャと話すアデーレが見えた。

「アデーレ」

「あ、ジークさん」

声をかけると、アデーレが振り向く。

「マルタはどうした?」

「仕事に戻ったわよ。ジークさんこそ1人? ヘレンさんがいないのは珍しいわね」

クリスのところと違い、いつも一緒だからな。

「ヘレンは女性陣とクレープを食べに行った。昼食後にすげーわ」

「あー……あそこの」

「あそこですねー……」

アデーレとサシャが顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。

「有名らしいな。でも、クレープって結構なボリュームがないか?」

下手をすると、それだけで昼食になるだろう。

「それはそれ。これはこれよ」

「ジークさん、女性にはそういうのを贈るとポイントを稼げますよ」

へー……

「お前らも行くか?」

俺の肩にいるヘレンの幻影が誘えと猫パンチをしている気がしたのだ。

「いいの?」

「せっかくだしな。それにエーリカとレオノーラがクレープの話で盛り上がっていると自分も行きたいって思うだろ」

多分、そうなる。

「そうねー……でしたらそのお誘いを喜んでお受けしましょう」

また敬語になった……

「サシャはどうする?」

「私はまだ仕事中です。休みはこの後なんですよ。ですので、先輩達で行ってください」

受付は休み時間が不規則だったな。

「じゃあ、アデーレ、行くか」

「はい」

俺達は本部を出ると、そのクレープとやらが売っている店に向かう。

「……なあ、先輩って?」

さっきのサシャの言葉が気になった。

「同じ学校の後輩ね」

やっぱり……

「知らなくても大丈夫だよな?」

「そこは大丈夫。マルタだって知らないわよ。私は同じ部署だったし、最初に挨拶を受けたから知っているだけ」

セーフ。

「トラップが多いわ」

「トラップって……もう大丈夫だと思うわよ。あなたはちゃんとしているから」

うーん、アデーレのお世辞は置いておいてももうすぐで帰るし、いっか……

その後、クレープ屋に行き、アデーレにクレープを奢った。

アデーレは美味しそうに食べており、やはりよく食えるなと思った。

そして、クレープを食べ終えると、本部に戻る。

「あー……きつい」

アデーレが階段を昇りながらお腹をさすった。

「まあ、そうだろうなー……エスコートしてやろうか?」

そう言って、手を差し出す。

「ロマンチックの欠片もないエスコートだこと」

アデーレはそう言いつつ、俺の手を取り、階段を昇っていった。

そして、階段を昇り終え、テレーゼのアトリエに向かおうとしたのだが、俺とアデーレの足が止まる。

何故なら、廊下の奥から嫌な顔をしたアウグストが歩いてきていたからだ。

「……アウグストさんね」

「……そうだな」

俺達はなんとなく端に避け、アウグストが通りすぎるのを待つ。

しかし、アウグストは完全に俺達を見ており、さらには俺達の前で足を止めた。

「ジークヴァルトにアデーレか……何をしているんだ?」

アウグストがアデーレの手を取っている俺の手を見ながら聞いてくる。

「食事をご一緒させていただいたんですよ。その帰りですね」

クレープを奢ってたって言おうとしたらアデーレが先に答えた。

「そうか……ジークヴァルト。貴様はリートに都落ちし、あんなしょぼい支部で女と仲良く遊んでいるのか?」

あー、こいつ、やっぱりアホだわ。

「まあ、遊んでいると言えば遊んでいるな。あまり仕事もないし、ちょうどいいペースで仕事をしつつ、自然豊かな地でゆっくり暮らしている」

「ふん。貴様にはそれがちょうどいいだろうな」

同じようなことを兄弟子達にも言われたが、こいつは嫌味で言っているのがわかる。

でも、そんなことはどうでもいいことだ。

「アウグスト、試験の日にレオノーラがケンカを売ったらしいな? それについて、謝罪しよう。あいつはちょっと人間的に問題があるんだ」

嘘だけどな。

レオノーラの人間性にケチをつけるところはない。

「あのチビか……お前の弟子だったか? ちゃんと教育しておけ。あんな人間では出世できんぞ」

「そうだな。俺もほとほと困っているよ」

「まあ、お前にはお似合いだ。じゃあな」

アウグストは鼻で笑い、階段を降りていった。

「最高の褒め言葉だよ、バカ」

「何あれ?」

レオノーラの子供の頃からの親友であるアデーレが眉をひそめる。

「レオノーラの良さも理解できん愚か者だ」

「なんで同調したの」

「今は調子に乗らせないといけないんだよ。理由はリートに帰ったら話す」

「そう……じゃあ、これだけは聞かせて。さっきのレオノーラ批判は本音?」

そんなわけないだろ。

「レオノーラじゃなくて、本部長が俺に対して思っているであろうことを言ってみただけだ」

多分、あんな感じのことを思っている。

「ふーん……まあいいわ。深くは聞かないことにする。行きましょうか」

アデーレはそうは言うものの足を止めたままだ。

「エスコート?」

「エスコート」

「お前、こういうのが好きだな」

レオノーラもだし、貴族令嬢はそうなのかもしれない。

「悪い?」

「いいや」

俺達はそのまま歩いていき、テレーゼのアトリエに戻った。