軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生命力

「さて、早速悪霊を見つける方法を教えるわけだが……」

ゼアノスを含む戦闘が得意な面々と俺は、早速悪霊の対処法を学ぶために移動を始めていた。

父さんたちはマリーさんやナチュリアーナさんと一緒に少し離れた位置から俺たちの様子を見守ってくれていた。ちなみに、護衛という形で宝箱がそばにいる。

「まず、この冥界に本来ならば生物は存在しない。それは分かるな?」

「まあ……」

「それはこの冥界に生えている木々も同じであり、我々が立っているこの大地も、皆平等に死んでいるのだ」

「え!?」

周囲を見渡すと、確かに葉は一枚もついていないものの、しっかりと木々は生えている。

しかし、ゼアノスはこれらが死んでいるというのだ。

「信じる信じないは別にして、元々の世界の木々や大地は、呼吸をして生きている。だからこそ、『生命力』に満ちているんだ」

「うん」

「しかし、この冥界ではそれはあり得ない。周囲の木々などは存在してはいるが、『生命力』はゼロなのだ」

「なるほど……」

「ここで重要なのが、この冥界そのものは『生命力』がゼロということだ。つまり、『気配』というモノを感じることができないわけだ」

「はぁ……」

まあ、確かに全部死んでるんなら、気配もクソもないよな。

「普通の霊ならば、冥界の木々と同じく、『生命力』はゼロなのだが、悪霊は違う。ヤツらは、『生命力』がマイナスに振り切っており、生きる力ではなく、殺す力を身に宿しているのだ」

「だから、生者が悪霊に触れたら、『生命力』を奪われて死んじゃうだよね。誠一君も気を付けてね~」

ルシウスさんがゼアノスの言葉に補足する形で、物騒なことを言ってくる。

「俺、そんなヤベェヤツらと戦ってたのかよ……」

「まあ、知らなかったら簡単に殺されてたかもな。でも、今こうして知ったわけだから、触れなければいいんだよ」

アベルが、爽やかな笑顔でそう言ってくるが、俺はどこぞの赤い彗星ではないので、そこまで楽観視できない。

「とにかく、周囲の『生命力』はゼロなのに、悪霊は『生命力』がマイナスって言うんだから、『生命力』さえ感じる事が出来れば違和感を覚えるだろうさ」

「そうね……体感としては、背筋がゾッとする感じかしら?」

「そうですね、体が拒絶する反応を示したら、その近くに悪霊がいることになりますね」

ガルスたちが、俺にコツのようなモノを教えてくれた。

「まあ、今の僕たちの体は、誠一君の影響で仮初の『生命力』を得ている状態だから、生者ではないんだけどね。だからこそ、本当に生きている誠一君自身の力が無いと、悪霊の王は倒せないと思うよ」

「そうか……あの、ルシウスさんたちは悪霊の王がどんな存在か知ってるんですか?」

一つ気になったことを訊ねると、ルシウスさんは苦笑いした。

「残念ながら、詳しい容貌は分からないんだよね。ただ、尋常じゃない負の力を有してるってことだけは確かだよ」

「なるほど……」

本当に悪霊の王ってどんなヤツなんだろうか。

そう思っていると、俺以外の戦える全員が、何かに反応をした。

「……どうやら話している間に出てきたようだな」

「え。それってまさか……」

「ああ、悪霊だ」

まだ『生命力』の扱い方を学んでないというのに、もうやって来たのか。空気読んでほしい。

思わず嘆息すると、再びあの不気味な存在が俺たちの前に姿を現した。

「ジー」

「今目の前に悪霊がいるわけだが、独特の気配を感じ取ってみろ。そうすれば、自然と自分自身の『生命力』も扱えるようになるさ」

「気配……」

俺は目の前に現れた悪霊を警戒しながらも、気配を体で体感できるように集中した。

今まで、スキルだけで気配を察知していた俺だけど、いきなり気配なんて分かるんだろうか……。

そんなマイナス思考を振り払い、その場で集中していると、ふと背筋が凍る感覚を覚えた。

「っ!?」

思わず振り返ると、そこにはもう一体の悪霊の姿が。

「どうやら、感じられたようだな」

「え? あ、ああ」

まさか本当に感じられると思わなかった俺は、間抜けな反応しか出来ない。

それに、背後に現れた悪霊を感じ取れたことで、背後だけでなく目の前にいる悪霊などの気配も分かって来た。

背後に現れる悪霊は、アンナの言う通り背筋がゾッとする感覚で分かりやすく、その他の悪霊は、何となく嫌な感じがその場所からするといった、酷く曖昧な感覚だった。

「『生命力』を感じ取れれば、元の世界に戻ってもスキルなしで生物の気配を察知できるようになるぞ。まあ、その分周囲の木々や大地もあるわけだから、察知したい対象の気配だけを察知できるようにする訓練が必要になって来るがな」

マジかよ……素で達人と同じことができるようになっちゃったわけ? 俺は……。

恐らく、進化する前の俺なら不可能だったんだろうが、このスペックが高すぎる体のおかげで、こんな俺でも察知する事が出来たのだろう。

「『生命力』を体感できたなら、早速戦ってもらおうか。何、簡単だ。一つ一つの攻撃や魔法に『生命力』を流せばいいだけだからな」

「お、おう……それで、『生命力』を流すにはどうしたらいいんだ?」

「気合いだ」

「ウソでしょ!?」

感覚論の次は精神論かよ! マジで初心者に優しくないね!

「いや、でも、こう……なんかあるんじゃない? コツみたいなのがさっ!」

「そう言われてもな……私はすぐに出来たから何とも言えんな」

「天才なんて大っ嫌いだー!」

チクショウ! 全然当てにならねぇじゃねぇか! これ、本当に悪霊倒せるようになるんだろうか?

「ジー」

「おわっ!? ちょっ……急に攻撃は危ないだろ! 怪我したらどうするんだ!」

「ジー」

「だから! 攻撃を! ヤメテ!? 人を攻撃しちゃいけませんって教わってないのか!?」

「……すごいねぇ。悪霊相手に道徳を説いてるよ……」

次々と飛んでくるレーザーを、俺はアクロバティックな動きで躱し続ける。

それを見て、父さんたちは何やら頷いていた。

「そうかぁ……誠一は将来、スタントマンになりたかったんだな」

「違うよ!?」

「あら。それじゃあサーカスの人ね!」

「どれもチガウ!」

「ジー」

「話してる間くらい待っててくれないかなぁ!?」

「誠一殿……悪霊相手に何を求めているんだ……」

そりゃそうだ!

でも、今にして思えば、俺は両親に将来の夢を語ったことはなかった。

実際、俺は地球では虐められてたわけだし、そんなことを考える余裕さえなかったわけだけど、冷静に考えるとすごく寂しいな。

……あり得ない話だが、もし地球で生活するなら、俺は将来どうしたかったんだろう?

昔の俺なら正直何もできなかったと思うが、今の俺のままとなると話が変わってくる。

まあ、今すぐそれを考えるのも無理な話だな。

「それより、本当にコツってないの? このままじゃ俺ずっと避け続けなきゃいけないんだけど?」

変な体勢でレーザーを避け続けながらそう言うと、アベルとアンナがそれぞれの感覚を教えてくれた。

「そうだな……だが、俺自身も気合っていうのはあながち間違いではないと思うぞ」

「そうね。『生命力』っていうのは、生きている力なわけだから、気合もその一つに入るじゃない?」

「とにかく、やってみるといい! 何、失敗しても俺たちが助けてやるさ!」

「えぇ……」

困惑しつつも、確かに気合も生きてなきゃ意味がないなと変に納得した俺は、気合を入れてみることにした。

「はああああああああああっ!」

気合を入れるというより、全身気張って、力を籠めるような状態といった方が正しいだろう。

――――とはいっても、こんなことで習得出来たら苦労しな――――。

「ジッ!? ジ――――」

「ジー! ジ――――」

そう思った瞬間、俺の体からよく分からない力が爆発的にあふれ出た。

その瞬間、近くにいた悪霊は驚きの声を上げた後、跡形もなく消し飛んだ。

「は?」

「おお、できるようになったか!」

「まさか、攻撃に『生命力』を流し込むんじゃなくて、『生命力』の波動だけで消し飛ばしちゃうなんて……つくづく規格外だねぇ」

あははと呑気に笑うルシウスさんだが、俺はそれどころじゃなかった。

消し飛ばしたって、ナニ!?

オカシイでしょ!? 最初に戦ったときは簡単に俺の攻撃を跳ね返してたじゃん! それがどうよ? 俺すらも分かってないような謎パワーで消し飛ぶってさぁ!

俺が内心で荒ぶっていると、アベルたちは冷や汗を流していた。

「おいおい……トンデモねぇ『生命力』だな……」

「ああ……それも、誠一の中に抑えられてた『生命力』があふれ出た結果……いわゆる有り余っている『生命力』の波動だけだぞ……」

「確か、体の中に内包している『生命力』の方が強いのよね?」

「そうですね……体からあふれ出ているモノは、そんな『生命力』のなかでも不要となっている部分ですから、本来あそこまで多いはずも、ましてやその波動だけで悪霊を消滅させてしまうなんて不可能に近いですよ……」

「本当に人間なのか? 誠一……」

俺が一番聞きたいよ!

俺の体は予想以上の結果を生み出しすぎじゃない!? どんどん人間離れしていってるよね!?

いや、ステータス的に考えれば、有り得ない話じゃないけどさ! それでもこれは酷い!

何とも言えない感情に支配されていると、少し離れた位置で見ていたナチュリアーナさんが感心したように口を開いた。

「はぁ……驚きました。誠一さんの体からあふれ出る『生命力』は、まさに自然のモノと大差がありません……」

「そうなのですか? 私にはただ強大な『生命力』であることしか分からないのですが……」

「それが普通ですよ。私は生前、お花屋さんをしていましたので、自然から受ける『生命力』には、人より敏感なのです。だからこそ、誠一さんの自然と変わらない『生命力』に驚いているんですよ」

「なるほど……」

マリーさんとナチュリアーナさんが会話しているのを聞いて、ますますナチュリアーナさんの正体が分からなくなった。

お花屋さん? 本当にどこで俺と接点があるんだ? マジで分からん……。

「まぁ、誠さん! 聞きました? 誠一、自然と一緒なんですって!」

「うむ、自然と一緒で、誠一はなくてはならない存在なんだな。流石、俺たちの息子だな」

「チガウ! いや、息子だけども!」

そんな大げさな存在じゃございません! ただの一般人ですって! 自信ないけど!

「誠一殿。これで『生命力』を使った攻撃を理解できたかな?」

「理解できたけど扱えねぇよ!」

悪霊に有効だってことはすごく分かったけど、これ普通じゃないんでしょ? 普通の扱い方を知りたいね!

「そうか……なら、もう少し実戦を続けよう。何、今の誠一殿でも悪霊の王は倒せるさ」

「それはそれで実戦続ける意味ある!?」

ツッコミどころしかないが、俺はゼアノスに従って、他の悪霊と戦いながら『生命力』を使いこなしていくのであった。