軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

採取

「よし、それぞれ採取してきた薬草を見せてみな」

俺――――柊誠一は、街の外に出て二つ目の『採取』の試験を受けていた。

試験内容は簡単で、街の城壁付近に生えている薬草を一人10本採取出来れば試験はクリアだ。

そんなわけで、俺もサリアも先程までは別々で薬草を探し、見つけてきたモノをこうしてアルトリアさんの前に並べさせられる所だった。

薬草は街の外に出ればすぐに見つかるような代物で、魔物と遭遇する事もまず無いので、戦闘をするような場面になる事は有り得ないらしい。……普通なら。

「まずはサリアからだな……っと」

戦闘をするような場面にならないってアルトリアさんから聞いた筈なのに、何故かとうの本人であるアルトリアさんは、襲いかかって来るスライムをケリ飛ばしていた。

……あれ?普通に戦ってね?魔物の出現率が少ないって聞いてたのに、たった今蹴り飛ばされたスライムを含めて20匹程遭遇してるぞ?全部アルトリアさんが仕留めてるけど。

そんな事を思っていると、俺の頭の中を見透かしたようにアルトリアさんは言う。

「あー……今オレに襲いかかってきてるけどよ、こんな事は普通ないから安心しろ」

「はあ……」

いや、まあ今の俺なら何が襲いかかってきても負ける気は一切しないけど……なんせ俺、怪物だし。

魔物に襲われようが襲われまいが、手間が少しかかる以外は特に不便なことも無いので、俺はアルトリアさんの言葉を軽く受け止める事にした。

「ま、今回は何故かスライム程度で済んでるんだが……」

「え?」

「……何でもねぇよ。それよりサリア、見せてみな」

「うん!」

サリアは元気よく返事をすると、根っこから引き抜かれた草の束を取り出した。

『果て無き悲愛の森』で手に入れた特薬草とは違い、少し茶色がかっているのが薬草の特徴だった。ちなみに、匂いを嗅いでみると爽やかな匂いがする。

「おし、オレの言った通り、ちゃんと根から引き抜いてきたな」

「アルトリアさんの言われたとおり、根っこから引っこ抜いてきたけど、依頼で必要なのは葉の部分だけだよね?」

サリアの当然ともいえる疑問に、アルトリアさんは答える。

「ああそうだ。でも、根っこごと引っこ抜いた方が薬草も新鮮な状態で採取できる。その上、薬草の根には薬草の葉とは違い、滋養強壮の効果があるからな。だから、薬草を採取するときは根から引っこ抜け。最近はこの事を知ってるヤツは少ないけどよ、知ってて損は無いぜ?」

おお、冒険者の豆知識みたいなヤツだな。フィールドで採取できるモノで、本来使う部分以外が意外な効果を発揮したりするから、そう言う知識を蓄えたりしていくのも冒険者としては大事な事なんだろうな。

「ちなみに、薬草の根は煎じて飲むのが一番効果的なんだが、凄まじい苦さを誇るから、あんまりお勧めはしねぇな」

「じゃあどうすればいいんですか?」

「そうだな……。いちばん簡単なのは、砂糖と混ぜ合わせる事なんだけどよ……まあ砂糖は高級品だからな。そこは代用品として、『スイートフラワー』から採取できる蜜を混ぜれば、甘くなって飲みやすくなるぞ」

うーん……そんな裏技を知ってるあたり、アルトリアさんは料理も出来そうだな。勝手な想像だけど。

「ま、根っこも確かに大事だけどよ、ギルドが求めてるのはあくまで『薬草の葉』だからな。ギルドに渡す前に、自分で葉の部分と根の部分の二つに切り分けるのを忘れるなよ?」

「「はーい」」

俺もサリアも間延びした返事を返した。

「よし。んじゃ、次は誠一だな」

「はい!これです!」

「…………」

俺は、採取してきたモノをアルトリアさんの前に差し出した。

すると、アルトリアさんは俺の差し出した物を見た瞬間沈黙する。

そして、少し間を置いた後、静かに口を開いた。

「……一応聞くけどよ、こりゃなんだ?」

「え?キノコです」

「見りゃ分かる!」

俺は、アルトリアさんにキノコを差し出していた。それも、10本。

「試験内容は薬草10本の採取だろうが!何でキノコ採取して来てんだよ!」

「やだなぁ、ちゃんと見てくださいよ。ただのキノコじゃないんですよ?『魔力茸』です」

「キノコの種類なんざ聞いちゃいねぇよ!」

「ですよねー」

やっぱりダメだったか。

別に、わざとアルトリアさんに差し出した『魔力茸』を持って来たわけではない。

しっかり探した筈なのに、何故か俺の探した場所には薬草が一本も生えていなかったのだ。そんなこんなでこうして一本も見つける事が出来なかったのだ。

だから、その代わりというか、『魔力茸』は異常に生えており、仕方が無く薬草の代品として採取して来たのだ。

話しは変わるが、『魔力茸』とは、所謂魔力を回復するための『マナポーション』と呼ばれるアイテムを作るために必要な珍しいキノコらしい。

「いやあ……薬草が見つからなくて……」

「有り得ねぇだろ!?薬草だぞ!?オレ20本程見かけたぞ!?」

「え?」

あれ?おかしいな……結構頑張って探しても見つからなかったんだぜ?そんな20本もある訳が……

「ほら、誠一の足もとにあんじゃねぇか」

「ガッテム!」

アルトリアさんに言われて足もとを確認すると、普通に5本も生えていた。あ、あれ?

「逆によく『魔力茸』なんて見つけられたな。それこそ必死に探しても1本見つかるかどうかって代物だぞ?何で10本も見つけて来てんだよ……」

「運が良いんだか悪いんだか分かりませんね!」

「それはこっちの台詞だっ!どのみち薬草10本採取できてないお前は失格だよ!」

「ナ、ナンダッテー!?」

いや、そこまで本気で驚いてないんだけど。

ただ、このまま試験に不合格というのもアレなので、急いで足下に生えている薬草5本を根っこごと引っこ抜いた。

これで、俺も試験に合格できる!……計画通り。

「ほら、ちゃんと採取できてるじゃないですか」

「……後5本はどうするんだ?」

「…………」

そうだったああああああああああ!試験の合格基準が薬草10本じゃん!後5本足りねぇよ!?

「さ、探してきまああああああす!」

「あ、おい!」

俺は叫ぶと、急いで残りの薬草を探す為にその場から駆けだした。

「は、速っ!?アイツ、どんな脚力してんだよ……。まあそれより、誠一ぃ!ゼッテェ森の方には行くなよー!そんでもって、あんまり遠くに行くなー!……ってもう見えなくなったぞ!?」

後ろでアルトリアさんが何かを言ってたような気がしたが、もうだいぶ距離が離れていた事もあり、よく聞こえなかった。

「……あ、ここに薬草5本生えてんじゃねぇか」

俺がその場から去った後、アルトリアさんは小さくそう呟いたらしい。

◆◇◆

「ねぇよ馬鹿野郎っ!」

俺はとにかく走り回り、薬草を探したのだが一本も見つからず、自暴自棄になりつつそう叫んだ。

確かに薬草は一本も見つからないのに、『魔力茸』の他に『解毒草』とかそんなモノばっかり見つかっている。

「なんか探しまわってるうちに、アルトリアさん達の姿が見えない位置にまで来ちまったし……」

一つ丘を越えたら、アルトリアさん達の姿が視認できなくなってしまった。

「うーん……何で見つからないんだ?」

探し方が悪いんだろうか?さっきもアルトリアさんに言われて初めて足もとに生えてたのに気付いた訳だけど……。

もっと、注意深く観察しながら探してみるか。

再び薬草探しを再開させた俺は、ふと視界の端に木々を捉えた。

「ん?あそこは……森か?」

視界に入った場所は、木々が鬱蒼と生い茂っている場所だった。

【果て無き悲愛の森】とは違い、禍々しい雰囲気なんかは一切感じられないが、森である事には間違いなかった。

「あそこなら、薬草もいっぱい生えてるかもしれないな」

そう推測した俺は、早速森まで移動する。

近づいて分かったが、やはりというか、俺が転移させられた【果て無き悲愛の森】がどれだけ過酷な場所だったか分かる。

目の前の森には、殺気立ったものが感じられず、清々しさを覚える位だからだ。

「ま、危険な事だらけだったけど、あそこはそれ以上に大切なモノを手に入れた場所だからな」

眼を閉じ、少しの間感傷に浸った俺は、しばらくしてから再び目を開けた。

「よし、んじゃ早速探しますか!」

そう意気込み、一歩踏み出したその瞬間だった。

「――――!」

「――――!?」

「――――」

「ん?」

森の方から、話し声が聞こえてきた。

別に、森に誰がいようが、俺とは全く関係無いわけだが、薬草探しの最中人と出会っていなかった事もあり、どんな人が何のために森にいるのか気になった。

同じ冒険者で、ギルドからの依頼か何かで来てるのかな?それとも、旅の人とか?

色々と推測しながら話し声が聞こえる場所まで移動する。

その最中も薬草探しは忘れなかった。

森の中にどんどん進んで行くと、声の主であろう人たちがそこにはいた。

少し遠くから観察してみると、人数は3人だった。

しかも、全員人間ではないようだ。

何故なら、その3人の肌の色が、俺達人間とは違い青色っぽいのである。

そして何より、3人のうちの一人の頭から、悪魔の角っぽいモノまで生えているんだから、人間な訳が無い。

こうして遠くから観察してみた訳だが、別に言い争ってるとか、何か困ってるとかって感じじゃないな。むしろ楽しそうに話しているようにさえ見える。

こんな森の中で、立ち止まってまで一体何の話をしてるんだ?

離れた位置にいる3人に興味がわいた俺は、更に近づく事にした。

「ベルさん、とうとうやっちゃいましたね!あれだけ 設置(・・) すれば、誰か一人ぐらいは引っ掛かるでしょ!」

「そうだな」

「でも……レイヤ様の命令を無視して、勝手に人間界に来ちゃったりして良かったんでしょうか?」

「そうだな……まあ、バレたらお仕置きだろうな……」

「……ちょっと急用思い出したんで帰ります」

「あ、自分も……」

「逃がすかっ!」

「は、放してくださいよぉ!俺、死にたく無いですもん!」

「馬鹿野郎っ!それは俺も同じだっ!だがよ……今回の事が成功すれば、レイヤ様のお仕置きも無しで、昇格だって夢じゃないんだぜ?」

「そ、そうですけど……」

「家族の事を考えると……」

「そんな事は分かってる。でも、お前達に護るべき家族がいるように、俺にだって家族がいるんだ。しかも、俺の所は今度子供も生まれるしな」

「な、ならどうして……」

「そんな危険を冒す必要が……?」

「フッ……俺はこの作戦を機に昇格して、妻に楽をさせてやるんだ……」

「「あ、アンタって人は……!」」

…………。

い、一体何の話をしてるんだ?お仕置きだの昇格だの……後半は意味不明だったし……。

まあ、赤の他人である俺が、話の内容を理解できるわけも無いんだけど。

つか、ベルとかって言う人、死亡フラグじゃね?大丈夫なの?

取りあえず、俺自身の疑問は棚上げしよう。別にどうでもいい訳だからな。でも、一応目の前の三人には、近くで薬草見なかったかどうかだけでも訊いてみようかな?……うん、そうしよう。

決して、自力で探す事が面倒になった訳ではない!……と思いたい。

そうと決まれば早速行動に移すわけで、俺は未だによく分からない話し合いを続けている3人の前に姿たを現した。

「あ、あのぉ……」

「「「誰だ!?」」」

「っ!」

び、ビビった……一斉に声を揃えて振り向いてくるもんだから、体がビクッ!ってなったじゃないか。

一人で勝手に驚いていると、3人は俺の姿を確認した途端、目を見開いて驚いていた。

そんな反応をされたもんだから、驚いていた筈の俺が逆に冷静になる。

冷静になった頭で、改めて目の前の3人を確認した。

一人はヒョロっと背が高く痩せており、もう一人は真逆で昔の俺のように太った体で背も小さかった。

そして、真ん中に立っている男は、一目見て鍛えられたものだと分かる体つきをしていた。何なの?このアンバランスなようでバランスの取れた組み合わせは。

そんな3人に共通して言える事は、遠くから見ていた時にも確認できていたが、肌の色が青色っぽい事だろう。それ以外は、特に俺達と変わりは無い。獣人ではなさそうだし……悪魔っぽいツノも生えてるから、悪魔族とか?安直だけど。

しかし、こうして何時までも不躾に相手を見るものではないと思った俺は、早速話しかけてみる事にした。

「えっと――――」

「何故人間がこんな所に!?」

「ま、まさか……俺達の計画がもうバレたとか!?」

「嫌だあああああ!レイヤ様のお仕置きだけは嫌なんだああああああ!」

失敗した。

何でか知らんが、俺が話しかけようとした途端に騒ぎ出した。

「あ、あの……貴方達は一体……?」

薬草の事を訊く筈だったのに、これほどまでに騒がれてしまっては目の前の3人が一体どういう存在なのか気になってしまう。

すると、俺の質問に対して、マッチョな男が答えた。

「フッ……バレてしまったのならば仕方があるまい!俺は魔族軍第3部隊隊長レイヤ様直属部隊、『ヴィクティム』のリーダー、ベル・ジゼル!」

「同じく『ヴィクティム』所属、ボスコ・ダン!」

「テリー・ヘムト!」

「魔族軍の玉砕隊とは――――」

「「「俺達の事よ!!!!」」」

「…………」

成程、ただの変態集団か。

俺は一人で納得し、一つ頷くとそっとその場から立ち去ろうとした。

「逃がすか馬鹿っ!」

「えぇ……」

しかし、回り込まれた!

「何しれっと立ち去ろうとしてんだよ!」

「いや、だって……貴方達って頭がおかしい人でしょ?」

「今度はしれっと酷いな!?」

俺はマッチョな男――――ベルの隊の名前の方が酷いと思った。

なんだよ、『ヴィクティム』って。英語だったら意味は『犠牲者』だろ?それに、自分たちで魔族軍とやらの玉砕隊って言ってるし……もう哀れで言葉もねぇよ。完全な捨て駒じゃねぇか。

「何なんですか、一体。俺は薬草探しで忙しいんですけど」

「お前こそ何なの!?お前が話しかけてきたんだよねぇ!?」

そうだった。ベルのせいで、すっかり忘れてたよ。

「つか、お前は誰だよ!」

「俺は誠一。さっきも言ったけど、薬草探しにこの森に来たんだ。そしたら、アンタ等の話し声が聞こえて……薬草見かけなかったか訊こうとしたけど、何だかお取り込み中のようだったから、こうして諦めようと思ったんだよ」

「薬草探しになんで森まで来てるんだ?そこら辺に薬草位生えてるだろう?」

俺の説明に対して、痩せた男――――ボスコがそう言う。

「だって無いんだから仕方ないだろ」

「まあ、お前の理由なんざどうだっていい……」

今度は太った男――――テリーが口を開く。

いや、どうでも良くないんだけどな?俺にとっては一大事だからね?

「誠一……だったな?お前は、俺達の姿を目撃してしまった……。残念だが、そんなお前をもう、生かして帰すわけにはいかない」

「はい?」

え、何言ってんの?『生かして帰すわけにはいかない』って……俺殺されんの!?

突然の事態に驚く俺をよそに、テリーはベルたちになにやら合図を送る。

そして、その合図を受け取ったベルは、一つ頷くと、指を鳴らした。

すると、ベルたちの背後から、ズシ、ズシと足音を響かせながら、3mほどの緑色の皮膚に、何かの動物の毛皮を腰に巻いただけのデカイ人間らしきヤツが現れた。

「コイツはトロール。誠一達人間どもの間では、B級の魔物なのだろう?」

「いや、知らんけども……」

トロールと呼ばれた魔物は、目や鼻や口等と人間に共通する箇所が多いにもかかわらず、動作の一つ一つがどうにも知性を感じられない。

耳は少し尖っており、頭は綺麗に禿げている。手には大きな木の棍棒が握られていた。

「まあいい……トロール!やっちまいな!」

古いアニメの敵キャラが下っ端に言いそうな台詞をベルが言うと、トロールは眼をカッ!と見開き、手にしていた棍棒を振り上げ襲ってきた。

「オオオオオオオオオッ!」

「えええええ!?マジで殺されんの!?」

初対面なのに酷くね!?俺何かした!?

ベル達に出会って間もない筈なのだが、何故か俺はトロールの攻撃を受けそうになっていた。

だが、俺自身の固有スキルである『心眼』により、トロールの攻撃は異常なまでに遅く映って見えた。

うーん……これは倒しちゃっていいんだろうか?いいよね?よく分からないけど襲って来る訳だし。

目の前のトロールを倒す事に決めた俺は、ふといいアイディアを思いついた。

それは、スライムを倒して手に入れたスキルである『吸収』を早速使ってみようという事である。

丁度トロールも俺に向けて攻撃して来ている訳だから、直撃の瞬間に発動させよう。

迫りくる棍棒をぼけーっと眺め、とうとう俺に直前するまで近づいた。

そして、俺はスキル『吸収』を発動させた。

するとどうだろう。今まで勢いよく迫っていた筈の棍棒の勢いと威力の全てがトロールの手から失われ、同時に俺の体の中に形容しがたいエネルギー物質の様なものがどんどん溶けていっているのが分かった。

それは、俺の体の中を何周も駆け巡ると、やがて俺の体の一部として完全に吸収された。

「おお、出来た」

「「「「…………」」」」

攻撃力の無くなったトロールの棍棒を頭で受け止めた状態でそう言うと、ベル達はそんな俺の様子を見て、何故か無表情になっていた。よく見れば、トロールも無表情である。

しかし、その無表情はとうとう崩れて――――

「「「「ん!?」」」」

眼をこれでもかという程見開き、口は開くのではなく逆にきつく結ばれた状態で口角を上げているという何とも表現しがたい顔で、目の前で起こった現実に驚いていた。

あんまりにも間抜けな表情なので、本当に驚いているのだろう。

「ベ、ベルさん……今確実にトロールの攻撃、当たりましたよね?」

「あ、当たったな……トロール、お前当てただろ?」

「オ、オォ……」

「これは、魔術的何かが絡んで……」

「いや、棍棒が頭に当たってるじゃないですか……確認するまでも無く、しっかり当たってますよ……」

「「「「…………」」」」

俺を置いて勝手に会話を始めたかと思うと、ベル達は今度は口を閉じてしまった。

そして、それぞれが顔を見合わせると、ベルが何故か顔を盛大に引き攣らせながら言った。

「こ、ここここ今回はみ、見逃してやらぁ!」

「そ、そそそそうですね!」

「け、決して負けた訳じゃないですもんね!俺達の親切心ですもんね!?」

「オ、オォオ!?」

「ま、まあ?俺達の作戦は既に完了してるし?お前みたいな化物がいるって情報も手に入ったし?結果的に言えば、俺等の勝ちだと思うんだよね?」

「そ、そうですよ!」

「異論はありません!」

「と、言う訳で――――」

俺に口を開かせる暇を与えず、矢継ぎ早に言葉を浴びせてきたベル達は、トロールを含めて全員、地球にある緑色の非常扉や非常口に描かれてある、あの有名なピクトさんと同じ体勢になった。

「「「退散っ!」」」

「オオッ!」

そのまま、呆然とするしかない俺を放置し、ベル達は一目散にその場から逃げ去ってしまった。

どうでも良いけど、トロール……あの巨体で異常に足速いな。

…………。

「一体何だったんだ……?」

嵐のように去っていったベル達に、俺はそう呟く事しか出来なかった。

「あ、薬草……」

そして、とうとうベル達に薬草の場所を聞く事は叶わなかった。

◆◇◆

「あ、やっと帰って来た!」

「どこまで行ってやがったんだよ……」

結局一本も薬草を見つける事が出来ず、とぼとぼとアルトリアさん達の場所まで戻ると、サリアは笑顔で迎え、アルトリアさんは呆れ気味にそう呟いていた。

「んで?散々探しまわっただろ?何本見つかったよ?」

アルトリアさんに悪気は無いのだろう。だが、その言葉は今の俺には何よりもキツイッ!

「…………」

「え?まさか……お前……マジか?」

俺が無言でいると、信じられないものを見るような眼で俺を見てきた。泣いていい?

「頑張って探したんですよ?でも……見つかったのは『魔力茸』や『解毒草』がそれぞれ数十本程で……」

「おかしくねぇか!?何で薬草より発見困難なアイテムをそんなに採取して来てんだ!?」

「俺に訊かないでくださいよぉ……」

もう、俺は半泣きだった。あらやだ、涙が出ちゃう。

そんな情けない姿を晒していると、アルトリアさんはやれやれと言った様子で、なにやら腰に巻き付けてあったモノを取り出した。

「ほら、くれてやる」

「え?」

そう言いながら渡されたのは、5本の薬草だった。

「お前が探しに行った直後に見つかったんだ。オレの足もとでな」

「そ、そんな……」

何でそんなに足もとに生えてるんでしょうか?俺、念入りに探した筈だよ?おかしくね?

「まあ、本当ならこう言う手助け的な行為は褒められたもんじゃねぇんだけどな……所詮、損するのは手助けした側だけな訳だし、受け取っときな」

「い、いいんですか?」

「遠慮してんじゃねぇよ。ま、次から頑張んな」

「あ、アルトリアさん……!」

お姉さまや!いや、姐さん……姉御や!

感動した様子でアルトリアさんを見ていると、アルトリアさんは恥ずかしそうに顔をそむけた。

「も、もう終わりだ!とっとと帰るぞ!」

そう言い、先に街へと帰っていくアルトリアさんの後を、俺とサリアは顔を見合わせて笑った後、急いで追いかけるのだった。