軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

テンプレ?

突然背後から声をかけられた俺は、その正体を確認するために後ろを振り向いた。

すると、3人のガラの悪い男達がニヤニヤと笑みを浮かべながら、俺の事を見ていた。

「……何か用ですか?」

一応相手の事を刺激しないように下手に出ながらそう訊く。

そんな対応をしていると、エリスさんは何故か溜息を吐き、ガッスルは苦い表情になった。

この3人……一体何なんだ?エリスさん達の反応の意味も分からないし……。

首を傾げる俺に対して、3人のうち、リーダーの様な男が俺の言った。

「お前、今から試験を受けるらしいじゃねぇか」

「ええ、まあ……」

「つまり、新入りだよな?」

「そう言う事になりますね」

……ヤベェ。何が言いたいのか全然わからん。

相手の意図が全く分からず困惑していると、リーダーの男は更に笑みを深めた。

これは……所謂『新人潰し』というヤツだろうか。よくファンタジー系の小説で見る、主人公に難癖付けた結果返り討ちにあうっていうあの……。

俺は見るからに主人公っていう立場じゃないし……。この場合は、俺がサリアみたいな美少女を新人のくせに連れてきてるのが気に食わなかったんだろうか。

あれこれ推測してみる俺に対して、突然リーダーの男は言う。

「お前……ちょいツラ貸せよ」

はい、キタ――――!テンプレですね!わかります。

でも理由がさっぱりなんですけど。せめて、明確な理由を教えていただきたいんですが……。

「えっと……何故ですか?」

仕方が無いので、そう訊いてみる事にした。特に理由も無いのについて行くのとか嫌だもん。

しかし、俺の質問に対する男達の返答は、予想外だった。

「それは……ここじゃ言えねぇな」

「え」

待って。俺、何されんの?人目を憚るような内容なんでしょうか?それくらい俺をボコボコにするんでしょうか?凄く怖いんですけど。

どれだけ俺が内心でツッコんでも、男達は立ち退く気配が無い。まあ、口に出してツッコんで無いんだから、立ち退くことも無いのは当たり前なんだけど……。

だが、流石に面倒なので俺は断る事にする。

「えっと……すみませんが、お断りさせていただきます」

「テメェに拒否権はねぇよ」

あっれぇ?おかしいな……人権を速否定されるとは思わなかったぞ~?俺の人権はどこに行ったんだろうね。

これ以上は、俺個人ではどうする事も出来そうにないので、丁度ギルドマスターのガッスルがいる事だし、助けを求める事にする。

「えっと……ガッスル。この状況どうにかしてくれ」

「諦めろ」

「早っ!?」

何で助け求めたらすぐに諦めろ宣言されなきゃいかんのだ。ワケ分からん。

「アンタギルマスだろ?どうにかしやがれ!」

「俺にそんな威厳は無い!」

「もう駄目だコイツ!」

使えねぇー!ギルマスのくせに威厳が無いとか……ギルマス辞めちまえ!

「エリスさん!何とかしてくださいよ!新人潰しですよ!?」

仕方が無いので、ガッスルより立場が強そうなエリスさんに頼む事にした。

しかし、エリスさんの返答も無慈悲なモノだった。

「すみませんけど……諦めてくださいませ」

「何で!?」

どう言う事!?何で皆諦めろっていうの!?

他に助けを求められるような人がいないかギルド内に顔を向けると、何人かは相変わらず自分達の世界に没頭しており、こっちを見ている人たちは俺の方に『何を言っても無駄だ……諦めろ』と目で訴えかけていた。

もう……意味分かんねぇぇぇぇええええ!この3人って一体何なの!?誰も止められない位に強いの!?

どうすればいいか全く分からない俺に、エリスさんはアドバイスをしてくれた。

「最初は痛いそうですが……そのうち気持ちよくなるらしいですわ」

「それって新しい扉開いてね!?」

ドMになってんじゃん!痛みが快感に変わったら手遅れだよ!

どんどん目の前の男達について行くのが嫌になる俺。

しかし、ふと冷静になって考える。

ボコボコにされること前提で考えてたけど、俺のステータスじゃまず有り得無くないか?恐らくだが、目の前の男達が全力で攻撃して来ても無傷の自信がある。

それくらい、現在の俺のステータスはぶっ飛んでいるのだ。

そうと分かれば、サリアに迷惑をかけたくも無いし……ついて行くしかないな。

相手もこの場所じゃ嫌だって言ってるし、俺も目立つような行動は避けたい。……ローブで既に目立ってる気もするけど。

「……分かりました。ついて行きますよ」

「そうこなくっちゃな」

「わ、私も――――」

サリアが一緒について来そうになったが、俺が手で押しとどめた。

「サリアはここでガッスル達と待っててくれ。すぐに終わらせるから」

なるべく安心できるように優しい声音でそう言う。

しかし、サリアはなおも不安そうな表情を浮かべる。

「で、でも……」

こんなにも俺の心配をしてくれるサリアに感謝しつつ、もう一度サリアを説得しようとした。

サリアが巻き込まれるのも嫌だからな。勿論護り切れる自信もあるし、サリアも変身すれば凄まじい戦闘力を誇るので、大丈夫なのだが……。

そんな事を考えながら、口を開こうとしたが、それより先に男達のリーダーの口が開いた。

「女。テメェは付いて来るな。邪魔になるからな」

男達のこの発言を聞き、俺は驚きを隠せなかった。

あ、あれ?普通女の子のサリアが一緒にいる方が都合が良いんじゃないのか?

それこそ、俺をフルボッコにする姿を見せたいとか、その後の事とかを考えれば、普通そうするよな?

本当に男達の目的が分からなくなった俺は、困惑せざる得ない。

しかし、男達はそんな俺の事等お構いなしに、扉に向かって歩き出した。

「おい、ついて来い」

「あ、はい」

慌てて男達の後をついて行こうとすると、何の役にも立たなかったガッスルが口を開く。

「気をしっかり持てよ。お前にはサリアちゃんがいるんだ。決して心だけは折れるなよ……!」

「だからどう言う事だよ!?」

最後にそうツッコミ、俺はギルドを後にした。

「逝ったか……」

「ガッスルさん、止めなくてよかったんですの?」

「仕方が無いだろう……俺の 貞操(・・) を護るためだ……!」

「……本当に最低ですわね」

「ははは!私の筋肉のためだ!」

「意味が分からないですわ……。仕方ないですわね。今のうちにB級以上の冒険者を探しておきましょう」

俺が去った後のギルドで、そんなやり取りが行われていた事を俺は知らない。

◆◇◆

「ここら辺で良いだろう」

リーダー格の男がそう言いながら連れてきた場所は、ギルドからだいぶ離れた場所にある路地裏だった。

これは、確実に俺をボコるフラグだな。人の気配が全くと言っていいほどない。

一応確認のためにスキル『索敵』も使用したが、本当に人が全然いなかった。

警戒心を高める俺だったが、男達は何時の間にか俺の事を囲んでいた。

「さあて……何で俺達がここにお前を連れてきたか分かるか?」

「……まあ」

理由は分からないが、確実に叩きのめす為だろう。

だが、この男達の唯一の誤算と言えば、俺の実力が化物クラスだという事だな。

そんな事を思いつつ、警戒を解かない俺。

そして、男達は何故か、俺の返答を聞いて笑顔になる。

「そうか……それじゃあ話は早い。ちなみに俺達は全員部屋の中より、外の方が燃えるタイプなんだよ」

「……はい?」

何の話だ?部屋の中で相手を叩きのめすより、外で叩きのめす方が良いってことか?

でも何で部屋の中より外なんだ?……人目がいっぱいあるからって言う理由は当てはまらないだろう。こうして人の気配が無い場所を選んでる訳だし。

再び男達の言葉の意味を推理していると、突然リーダー格の男が装備していた皮鎧を脱ぎすて、着ていた上着のボタンを全て外した。

それをキッカケに、残りの2人は上半身裸になる。

これは……所謂本気を出すというヤツだろうか。いや、装備を外したんだから、武器を使用しての戦いでもない筈……。

それに、仮に武器を使用しないのが男達の本気なら、何でわざわざ新人相手に本気を?

疑問符が頭の中を飛び交っていると、リーダー格の男がそんな俺の心情を察したのか、呆れ顔になる。

「なんだ……分かって無かったのか?」

「え?は、はい」

「ったく……仕方ねぇなぁ……」

リーダー格の男はそう言うと、突然真面目な顔に変わり、言い放った。

「やらないか?」

「………………」

………………。

…………。

……へ?

おっかしいな……俺の空耳か?今、目の前の男から『やらないか?』って聞こえた気がするんだけどなぁ……。

HAHAHA!きっと俺の勘違いさ!そうだ、そうに決まってる!

嫌な汗が止まらない俺に対して、男はやれやれ……と言った様子で全開になっているシャツを片手ではだけさせた。

「やらないか?」

「アッ――――――――――!」

勘違いのままがよかったあああああああああああっ!

ダメだ……ダメだよコイツ等!流石、変態の巣窟の一員だよ!

圧倒的ステータスを誇っている筈なのだが、俺の表情は恐怖一色で塗りつぶされていた。

すると、さらに追い打ちをかけるように男は言う。

「俺はノンケだって構わず食っちまう人間なんだぜ?」

「ぎゃああああああああああああああああああああ!」

誰か……誰かあああああああああああ!助けてえええええええええええ!

必死に叫び声をあげ、助けを求める俺。

だが、最悪な事にこの周辺には誰一人もいなかった。

「安心しな。痛いのは一瞬さ。その後は……な?」

「ヤメテくれええええええええええ!俺は絶対的ノーマルだっ!!」

「皆最初はそう言うのさ……だが、そいつ等は自分の本性を隠しているにすぎないんだよ!こいつ等のようにな!」

「「へへっ!いいケツしてんなぁ!」」

「お前等被害者かよ!?」

ダメだコイツ等、どうにもできねぇ……!ギルド本部、ヤリタイ放題か!?

これは早急にこの地域から離れる必要があるんじゃねぇか!?もう俺この場所嫌だよ!

恐らく、他の国に存在するギルドの支部は、ここのように変態がいる訳じゃないだろう。クロードもこの国での登録はヤメテおけって言ってた位だし。

……ってそんな事はどうでも良くて!今この状況をどう脱出するかが先決なんですけど!?

必死に脱出経路を探す俺だが、男達は手をワキワキさせながら近づいて来たり、涎を垂らしながら近づいて来たり、腰を振りながら近づいて来たりと……もうホラーだよ!

後ずさりながら移動すると、何時の間にか壁際まで追い詰められていた。

「ホイホイついてきちまったお前が悪い。……観念しな!」

「嫌だああああああ!」

どうする……どうするよ、俺!?

考えるまでもねぇ……。ここは……強行突破するしかねぇだろ!

俺はそう決めると、一気に抑えていた力を解放させる。

見た目や雰囲気は一切変わっていない。それこそ、相手に見える俺のステータスも低いまんまだろう。

だが、『実力偽装』によって出来るようになった、力の制御をたった今解放したことで、怪物の職業を持つ俺の力が解き放たれたのだ。

「全力で逃げさせてもらうぜ!」

「何!?」

俺は背後の壁を思いっきり駆けのぼった。

戦う?なんか勝てる気がしないんだ。何でだろうな。

だから、俺は全力で逃げる事を選んだ。それに、ぶちのめしても、その後俺の噂が立っても困るしな。

そんな事を考えながら壁を走っていたが、ふとある事に気付いた。

……うわぁ……壁走ってるよ、俺……。

そんな自分のスペックに軽く引いてしまう。

色々と疲れ果てた俺がげんなりとした気分でいると、男達の声が聞こえてくる。

「あの脚力だ……色々と凄いんだろうな!」

「ああ……あの体は俺達のモノだああああああ!」

「絶対に逃がすな!追え……追ええええええええ!」

うん、聞こえなかった事にしよう。そして、さっきの出来事は全部忘れよう。それがいい。

俺は屋根の上を人目を気にしながら移動し、やがてギルドの場所まで戻った。

「しばらくしてたら再びギルドの場所まで戻ってきそうだなぁ……」

しかし、この国にいる以上、出会う事も絶対にある訳で……。この国にいるうちは俺に安寧は訪れないのだろうか。

「あー……嫌だなぁ……」

思わずそう言ってしまうのも仕方が無いだろう。俺はノンケなのだから。誰が何と言おうとも俺はノーマルなんだ。信じて欲しい。

こうしてギルドの近くで落ち込んでいても仕方が無いので、俺は気を取り直して再びギルド内へと足を踏み入れた。

すると、相変わらずギルド内は混沌としており、まともな奴が見当たらない。

内心呆れながらも受付に未だにガッスル達がいたのでその場所まで移動した。

「む?おお!無事だったか!」

「よかったですわね……」

俺を見るなりエリスさんもガッスルも心底安心したような表情を浮かべた。

「いや、まあ何とか……。ガッスル。アンタが諦めろと言った理由が分かったよ」

「そうか。ちなみにアイツ等は、新人の男性冒険者がこの地に訪れるたびにああいう事をしているから、今後も気をつけた方が良いぞ」

「いや、止めろよ」

「何度も止めたさ……。でもな?あいつ等に常識って言うモノは通用しないのだ。君は無事に帰ってこれたようだが、感じなかったかい?『コイツ等には勝てない』と」

感じました。全く勝てる気がしなかった。というより、勝負をしたくなかった。……勝負の最中に体のあちこちを触られそうで……。

ステータス的には圧倒的に勝っている筈なのに、精神的なダメージが凄まじいんだ。恐らく相手が普通の男性なら、最強の戦闘力を誇るだろうと俺は思う。

「私も精進せねばな……あいつ等は俺の筋肉の下、ねじ伏せる!」

「まあ……頑張ってね」

そんな反応しか出来ず、ローブの下で苦笑いをしていると、誰かが俺のローブを引っ張ってきた。

その方向に顔を向けると、サリアが心配そうな表情で俺の事を見ている。

「誠一、大丈夫だった?」

「おう。心配かけたな」

そう言いながら何となくサリアの頭を撫でた。サリアの髪の毛は、サラサラしていてとてもさわり心地が良かった。

撫でられている当のサリアは、くすぐったそうに少し身をよじったが、目を細めて気持ちよさそうに笑っていた。

……うわぁ。今全力でサリアの事を可愛いと思ったぞ。サリアといると、ほぼ無条件で俺が惚気てる気がする。

まあ、あれだけ怖い思いをした今、サリアといられるという事だけが非常に俺の心を癒してくれているのは間違いなかった。

軽くサリアと俺の周りにお花畑が浮かんでいると、エリスさんが俺の声をかける。

「誠一さん。先程の試験の件ですけど……」

「あ、はい」

「今、このギルドにとどまっているB級以上の冒険者を調べてみましたわ。それで……」

「……?」

妙に歯切れの悪いエリスさんに俺は首を傾げる。一体何なんだろうか?

俺もサリアもエリスさんの反応に困惑していると、ガッスルが俺達に言う。

「ううむ……。誠一君もサリア君この国に来たばかりかな?」

「え?ああ」

「今現在、この場所にいるB級以上の冒険者は一人しかいないのだよ」

「ならその人で良いじゃん。何か問題でもあるのか?」

「問題……という程でもないのだが……エリス君」

「そうですわね……こればかりはどうする事も出来ませんもの」

「?」

ガッスルとエリスさんの会話の意味が分からず、俺もサリアも更に首を傾げた。一体誰の事を言ってるんだ?

はっ!?もしや、さっきのホモォな人たちとか言うんじゃないだろうな!?だとすると……俺は全力でこの地から去る決意をするぞ。

恐ろしい予測が頭をよぎり、自然と体を震わせていると、ガッスルがその人物であろう人の名前を呼んだ。

「アルトリア君!アルトリアくーん!」

ガッスルがそうギルド内で呼んだ瞬間だった。

今まで、俺がホモォな方々に絡まれている時でさえ己の欲望に身を任せていた冒険者たちが、一斉に動きを止めた。

そして、全員ある一か所に視線を向けている。

俺も全員の視線を辿り、その先にいる人物を確認した。

そこにいたのは、肩まで伸びた銀髪をワイルドに切り揃え、半袖半パンと言う恰好の上から、何の素材で作られているのかは分からないが胸当てや手甲等を装備した女性が掲示板の様なモノの前で立っていた。

その女性は、ガッスルに呼ばれたことで俺達の方に視線を向けてきた。

「っ!」

「わあ……」

アルトリアと呼ばれた女性の顔を見た瞬間、俺もサリアも思わず見惚れてしまった。

キリッとした切れ長の鋭い目に、金色の瞳はどこか猛獣を連想させる。サリアやエリスさんのように真っ白の肌と言う訳では無く、小麦色の健康的な肌色をしていた。遠目で見ているため正確な身長は分からないが、女性にしてはかなり高いだろう。

そして何より、胸当てで窮屈そうに抑え込まれた胸。全体的に凄まじいプロポーションだと俺は思う。

結論を言うと、ガッスルが呼んだ女性は褐色系の凄い美人だった。

その女性は、俺達の方へと近づいてくる。

「……んだよ」

口を開いて出た言葉から、少し面倒くさそうな雰囲気を感じ取れた。

しかし、ガッスルはそんな女性に対してもお構いなしに続ける。

「いや、今回新しくギルドへと登録したいという者が現れてな!試験監督を頼みたいんだが……」

「んなもの、オレじゃなくって他の奴にしろよ。アンタもエリスも 知ってんだろ(・・・・・・) ?」

「ええっと……そうですけど……」

スゲー。初めて自分の事『オレ』って言う女性を見たぞ。まあ雰囲気に合ってるから良いんだけど……。つか、 知ってる(・・・・) って何のことなんだろうか?

「そうは言ってもな?今この場所にB級以上の冒険者が君しかいないんだよ。このままでは何時まで経っても新人にギルドカードを渡す事が出来ないのだよ」

「だったら、他のB級以上の連中が帰って来るまで待てばいいだろ。わざわざオレを選ぶ必要はねぇ筈だ」

「しかしだな……」

ガッスルが歯切れ悪くそう言うと、エリスさんが続ける。

「残念ですけど、アルトリアさん以外のB級以上の方々は、他の国へと全員出向いていますの。一番近い国に出向いた方でも、帰って来るまで最低でも1ヵ月……。それに、新たにB級に上がりそうな方もいませんから」

「……」

エリスさんの言葉に思わず女性は押し黙っていた。

そして、少しの間を置くと、俺の方に視線を向けてくる。

「おい、テメエ。テメエはオレが試験監督なんざごめんだよな?」

「え?何でですか?」

ヤベェ……話が唐突過ぎて何の事だかサッパリ。何で俺が目の前の女性がダメだなんて思わなきゃいけねぇんだよ。

しかし、俺の返答が意外なモノだったのか、女性は驚いた表情を浮かべていた。

「テメエ……正気か?」

「いや……正気も何も……なあ?」

「そうだね!」

サリアに振ってみたが、サリアも女性が何であんな反応を示すのか分からないらしい。

本気で困惑する俺を見て、ガッスルが女性に言う。

「彼らはこの地に来たばかりなのだよ。アルトリア君の事を知らないのも無理ないんじゃないかい?」

「けどよ……オレ、一応A級だぞ。ある程度認知されてると思ったんだが……」

「細かい事はいいではないか!引き受けてくれたまえよ、アルトリア君!」

「だから――――」

「それに、彼等なら君の 体質(・・) でも大丈夫かもしれないだろう?」

「っ……」

ん?体質?本当に何の事だか分からない。それに、俺やサリアを置いて、勝手に話は進むし……。

「……何の根拠でそんな事言ってんだよ」

恐ろしく低い声で女性がそう言うが、ガッスルは全く気にした様子も無く、朗らかな笑みを浮かべた。

「そんなもの……私の筋肉以外ないだろう!私の肉体こそ、最大の理由!これ以上最高の理由があるのかね!?」

絶対あるだろう。むしろ、ありすぎて困るんじゃねぇか?筋肉って理由にすらなってない訳だし。

思わず半眼になりながら、内心でそうツッコむ。

しかし、女性は真剣な表情でガッスルを見た後、俺達の方に向き直った。

「……分かった。試験監督の話、受けてやるよ」

どうやら女性は俺達の試験監督をしてくれるらしい。

一先ず、これで試験は安心だなと思っていると、女性は自己紹介を始めた。

「オレの名前はアルトリア・グレム」

そして、悲しそうな表情を浮かべ――――

「≪災厄≫のアルトリアだ」

――――そう告げた。