軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

進撃の誠一

俺と誠二に向かって襲い来るゲンペルの駒たち。

それを迎え撃つべく二人で戦闘態勢に入ると――――。

『……』

「「……あれ?」」

なんと、その駒たちが戦う寸前で動きを止めた。

「お、おい!? どうした!? 早くそいつらを始末しろ!」

『……』

この状況はまたもゲンペルにとって予想外らしく、焦った様子を見せる。

そして――――。

「な、なんだ? 何故私を見る!? て、敵は向こうだ! お、おい、やめろ! 近づくな!」

「「えっと……これは……」」

なんだか見覚えがある光景に俺と誠二は困惑する。

それはまるで、バーバドル魔法学園の対抗戦で、Sクラスの先生と戦った際、相手の放った魔法がそのまま相手に返っていったときとまんま同じ状況だった。

つまり……。

「ま、まさか……そ、そんなはずはない……ありえない、ありえないぞ! 私の力が何度も――――」

『――――!』

「く、来るなああああああああああああああああ!」

ゲンペルが生み出した駒たちは、一斉にゲンペルへと襲い掛かった!

自身の駒を消そうとしているのか必死に腕を振り回し、逃げようとするゲンペルだったが、アルがゲンペル自身は戦闘力がないと言っていた通り全く戦えておらず、もうこれ以上ないほどボッコボコにされている。

俺と誠二だけでなく、サリアたちまでその光景に唖然としていると、一人一人の駒がこちらを振り向き、サムズアップをした。

「や、やめ――ぼぎゃぐげりゅへぼらおえべあいじぇけが!?」

もはや人間の言葉とは思えないような悲鳴が響き渡る。

その様子はまるで餌に群がる虫を見ている気分だった。

……というより、俺と誠二のやる気はどうしたらいいの?

せっかく二人で共同戦線だ! って展開だったのに、戦うことすらできなかったんですけど……。

俺も誠二も戦う必要がなくなったことで、戦闘態勢を解除すると、やがて駒は徐々に消えていき、最後にはぼろ雑巾のように転がったゲンペルだけが残された。

「あ……あが……ど……どう……ぢで……」

「……よーし、エレミナさんを解放して帰るかー!」

「そうしよう!」

俺と誠二はお互いに頷きあうとゲンペルを無視してエレミナさんの下に向かうのだった。

◇◆◇

「ま、まさかアイツを倒すなんて……」

エレミナさんを解放すると、未だに信じられないといった様子で呟く。

拘束されているときはボロボロに傷ついていたので、そこは解放すると同時に回復もした。

するとエレミナさんの言葉に対し、アルがため息をつきながら答える。

「こんなことでいちいち驚いていたら身がもちませんよ。誠一と一緒にいるなら……」

「ええ……?」

「本来裏切るはずのない自分の偽物が自我を持った状態で裏切るだけでもわけ分からないんですから……いや、自分で言ってて信じられねぇな……」

「アル、大丈夫。俺もわけが分からないから」

「それが一番納得できねぇんだよ!」

ですよねー。

俺と誠二がそろって苦笑いを浮かべていると、アルがゲンペルを拘束し終える。

「まあいい。エレミナ様の救助も完了し、今回の事件の元凶であるこいつも回収できた。ここは一度王都に帰ろうと思うのですが、大丈夫ですか?」

アルがそうエレミナさんに訊くと、エレミナさんは苦々しい表情を浮かべる。

「……残念だけど、今の私じゃ足手まといになるしね。せっかく敵の本拠地を突き止めたのに……」

「え?」

エレミナさんの言葉に俺たちは全員目を見開いた。

「も、もしかして、エレミナさん、【魔神教団】のアジトが分かったんですか!?」

「ええ。実はそのことを伝えるためにウィンブルグ王国まで帰って来てたんだけど……その途中でアイツに遭遇しちゃって……結果、捕まってしまったのよ。だから、本当にありがとう」

「い、いえ! とにかく、解放できてよかったです。それでその……【魔神教団】のアジトが分かったって言ってましたけど、どこに?」

「誠一? もしかしてだが……」

俺がエレミナさんに質問すると、何かに気づいた様子でアルが目を見開く。

「うん。たぶんアルが想像してる通り、せっかくだから【魔神教団】のアジトに行こうかなって……」

「そんな気軽に!? 敵の本拠地だぞ!?」

「それは分かってるけど、そのアジトには本物のS級冒険者の皆さんがまだ捕まったままだし、何よりこのまま放置しておくわけにはいかない。だから、ここで決着を付けようと思うんだ」

「そ、そりゃそうだが……相手は神だぞ? 勝てるのか?」

そう言われると全く自信はないが、いつかは戦う必要がある。

それならまだ完全復活する前に戦った方がいいだろうし、S級冒険者以外にも捕まっている人がいるかもしれない。

そんなことを考えていると、エレミナさんは険しい表情を浮かべる。

「……確かに誠一君は規格外な存在だけど、さすがに相手が悪すぎるわ」

「分かってます。だから、倒せそうなら倒しますけど、一番の目的は捕まってるS級冒険者たちの救出です。なので……」

「……はぁ。分かったわ。場所は教えるけど、無茶しちゃだめよ?」

エレミナさんは最終的に大きなため息をつくと、すぐに真剣な表情に変わり、教えてくれた。

「【魔神教団】のアジトがある場所は、とあるダンジョンなの」

それは以前、ゾーラのいたダンジョンを踏破した際、羊から教えてもらったので覚えている。

だが、その時は羊が言うにはこの世界とは別の空間に切り離されたため、羊も場所を把握できていないし、そもそもの羊の制限として教えてもらうこともできなかった。

だが……。

「でも、普通のダンジョンとは違って、魔神が封印されているダンジョンはこの世界にないの。どうやら別の空間に隔離されているみたいで、とある場所に存在する魔法陣を使う必要があるみたいなの」

「とある場所?」

「――――【冥界】よ」

『!?』

まさかの場所に俺たちは目を見開いた。

その様子に、エレミナさんはため息をつく。

「無理もないわ。冥界……つまり、死なないとそこに行けないんだもの。そんな場所――――」

「えっと……」

「……おい、誠一?」

「さすが主様ですね! この状況を見越していたとは!」

エレミナさんの言葉にどう反応していいのか分からず、困惑していると、アルはジト目を俺に向けてきた。

すると俺たちの様子がおかしいことに気付いたエレミナさんが首をかしげる。

「? いったいどうしたの?」

「そ、その……冥界なんですけど……多分、行けますよ?」

「なんで!?」

な、何ででしょうね。俺が聞きたいくらいです。

「い、行けるって……冥界よ!? もしかしてだけど、死ぬとか言うんじゃないでしょうね?」

「は、はい。そうじゃなくて、普通に行けるなぁと……」

「普通に行けるって何!?」

俺の普通が普通じゃない。おかしい……俺が求めてる普通とは違うぞ……?

それはともかく、冥界から出るときに冥界自身が入場制限を厳しくしたって言ってたことが気になるな。

転移魔法や西の果てに存在する門から生者が冥界に行くのはできなくなるって言われたが……。

……変だな。やってみたら転移魔法でも西の果ての門からでも行けそう。まあ今回に限っては有難いけどさ。

「と、とにかく、冥界に関しては任せてください! 一度行ってるので!」

「一度逝ってるの!? え、大丈夫!?」

「? 大丈夫ですよ?」

「……すごいわ。誠一君は死んでもなお生き返るのね……」

いや、その、死んだわけではなく……強制的に転移させられたといいますか……。

「本当なら色々聞きたいところだけど、ひとまず冥界に行けるって前提で進めるわね。冥界内部のことまではさすがに調べられなかったけど、冥界のどこかに魔神が封印されてるダンジョンへ続く魔法陣が設置されてるみたいなの。それを使えば、アジトに侵入できるはずよ」

「なるほど……」

「それで、どうするのかしら? 本当に行くの?」

「……そうですね。ただ、そんな危険な場所なら俺一人で――――」

「もちろん、私も行くよ!」

「え?」

隣で元気よく手を挙げるサリアに、俺は目を見開く。

すると、サリアだけでなくアルたちも手を挙げた。

「当然、オレもついていくぜ」

「……ん。みんな一緒」

「わ、私がどこまで力になれるか分かりませんが……それでも誠一さんの役に立ちたいんです!」

「主様。私は主様の騎士です。どこまででもついていきましょう!」

「……食いしん坊が……騎士……?」

「何が言いたい、オリガ!」

いや、オリガちゃんの反応が正しいと思う。普段の行いを見つめなおしてほしい。

そんなことよりも、全員俺についてくるというのだ。

「で、でも、今から向かう先は冥界だし、何より敵の本拠地なんだぞ? そんな危険な場所に……」

「誠一。私は【果てなき悲愛の森】の時からずっと一緒に過ごしてきたし、これからも一緒。それに、今までも危険なことは一緒に乗り越えたし、どんなことがあっても誠一がいれば大丈夫だよ!」

「お、俺がいれば大丈夫って……」

最近は世界の忖度がすさまじいからよく分からんが、本当に俺がいるだけで無事である保証はない。

だが、そうやって信頼してくれる以上、俺はその気持ちに全力で答えるつもりだ。

アルたちを見渡すと、全員真剣な表情で頷く。

「……分かった。エレミナさん、俺たち全員で向かおうと思います」

「……情けないわね。本当ならS級冒険者として力を貸したいところだけど、私では何もできそうにないわ……それでも私は私にできることを少しでも探すわ」

エレミナさんも俺の言葉を受け、覚悟を決めた様子だった。

「よし! 【魔神教団】のアジトに乗り込む前に、エレミナさんを送り届けないと……」

「あ、それならその役目は俺が引き受けようか?」

「え?」

すると今まで黙って成り行きを見守っていた誠二が手を上げる。

「本当ならあのゲンペルってヤツを誠一と俺で倒すつもりだったけど、それもなくなっちゃったから暇なのよね」

「暇なの!? そ、その、コピーとして生み出されたわけだし、消えたりとかは?」

「あー……大丈夫っぽい」

「どうなってんだ? 俺の体は……」

「そりゃ俺が聞きたい。でも、送り届けるまで消える心配もないし、何なら俺の意志で消えられそうだ」

なんで敵の能力で生み出された誠二が、そんなに自由に動けるのか不思議だ。

まあ他のコピーされた人達は倒されたり、勝手に消えたりしてたから、誠二だけが普通じゃないんだろうな。……いや、女性版の俺もか。

結局俺のコピーがおかしいってことですね!

「ま、まあいいや。大丈夫そうならお願いしてもいい?」

「おう、任せてくれ! 誠一には及ばねぇが、まあ【魔神教団】の神徒や使徒なら襲われても大丈夫だと思うわ」

スペック自体は俺の体を元にしているし、そこは大丈夫……なのだろう。

ひとまずエレミナさんを誠二に任せることに決めた俺は、サリアたちに向き直る。

「よし、それじゃあ……行くか。【魔神教団】の本拠地に!」

ついに、俺たちは【魔神教団】の本拠地に向けて出発するのだった。