軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

理不尽な結末

それは突然だった。

「ッ!? な、なんだあ!?」

カイゼル帝国第一部隊隊長、オーリウス・フェンサーは突如辺りを襲った衝撃に跳ね起きた。

昨夜、いい気分のまま酒を飲み、そのままよく眠っていたオーリウスだったが、そんな彼が一瞬で跳び起きるほどの衝撃がカイゼル帝国の兵士たちを襲ったのだ。

さらに、その衝撃は一度だけでなく、二度、三度ど続き、最後に少し弱い衝撃が訪れる。

「な、何が起きてるんだ!?」

「て、敵襲か!?」

「おいおい、朝っぱらからなんだよ!」

皆酒の飲み過ぎで鈍くなった体を必死に動かし、情報を集めようと動き出す。

だが、その動きはまとまりがなく、このままではどんどん混乱することが目に見えていた。

「おい、一旦落ち着け! いいか、俺の指示に従え!」

するとそんな状況下で、オーリウスは声を上げ、その声に兵士たちはやがて落ち着きを取り戻した。

「よく分かんねぇが、今の衝撃は全員体感したな? さすがに今の衝撃を放って進軍はできねぇ。第一小隊から第三小隊までは東を、第四小隊から第六小隊は西を、第七小隊から第九小隊は北を、そして残りは南を探索して来い! ひとまず二時間後にここに集合だ!」

『ハッ!』

返事だけは一人前な第一部隊の面々は、各小隊に分かれ、オーリウスの指示した方向へと探索を開始した。

ただ、その動きはやはり精彩を欠いており、あまり練度が高そうには見えない。

それでも今のオーリウスたちからすれば何の問題もなかった。

「……まあこの衝撃が魔物やヴァルシャ帝国の兵だったとしても、俺らにゃ力がある。一人でもヤバい『超越者』が全員だからな。とにかく、今はさっきの衝撃の正体を――――」

そこまで言いかけた瞬間、まるで地面が持ち上げられているかのような、そんな大きな揺れが第一部隊を襲った。

その揺れは一瞬だったとはいえ、確かに大きく、オーリウスはたまらず地面に転がる。

「な、何だってんだよ、クソがッ!」

地面に這いつくばり、先ほどの揺れを警戒するが、再度揺れる様子がない。

その体勢のまま周囲を見渡してみても、同じくどこか変わった様子が見受けられないのだ。

「クソッ……昨日までこんなことなかったはずだろ!? 一体何が起きてやがる……!」

何とか立ち上がり、周囲を警戒するが、やはり何もない。

「意味が分からねぇ……」

そう言いかけると、今度は揺れではなく、いきなり大雨と落雷が空を覆い尽くした。

「どうなってんだよおおおおおおおおお!」

いきなりずぶ濡れになり、急いで野営のテントを用意しようとするが、あまりにも雨が強すぎて視界が確保できず、上手くテントを組み立てられない。

「チクショウ、チクショウ、チクショウッ! 何で俺が、何で俺があああああ!」

ずぶ濡れの中、必死に組み立てたテントにオーリウスは転がり込むと、濡れて重くなった鎧や服を脱ぎ捨てた。

「うぅ……さ、寒い……」

そして雨に濡れたせいもあるが、オーリウスはあまりの寒さに体が凍えそうになった。

もうこの時すでに誠一が渦潮群のの中心にこのオーリウス率いる第一部隊や、【魔神教団】の『使徒』がいる【封魔の森】の一部を海に浮かべていた。

そして誠一自身は全く気付かなかったが、実はあの渦潮周辺の気候は極端に寒くなっており、普通に服を着てても肌寒さを感じるほどだった。

そんな場所でずぶ濡れになったせいで、オーリウスの体は酷く冷えている。

「な、何でこんな目に……」

火を熾そうにも、周囲の木は雨で濡れてしまい、まともに火をつけることさえできない。

それどころか、【封魔の森】の関係上、魔法も使えないので火を熾す手段がほぼなかった。

現在起こっている数々の出来事の原因が分からず、部下たちが帰ってくるのをただ震えながら待つことしかできないでいると、一人の兵士が必死の形相で帰ってきた。

「た、隊長ッ!」

「どうした、何か分かったのか!?」

「そ、それが……」

同じようにずぶ濡れになり、寒そうにしている部下はそれすら無視してありのままを報告した。

「何故か……我々は今、海の上にいます!」

「は?」

オーリウスは部下の言ってる言葉の意味が分からなかった。

「海……海だと!? バカを言うな! 俺たちはヴァルシャ帝国の目の前にある、【封魔の森】にいたはずだ! それはここで魔法が使えないことからも間違いない!」

「で、ですが、森を抜けるとすぐに海が広がっているんです! それも、強力な渦潮に囲まれています!」

「はあ!?」

部下がどれだけ必死に言おうが、オーリウスはその言葉を信じることはできなかった。

――――ただし、その発言をする部下が一人だけだった場合の話である。

「――――た、隊長!」

「なんだ!?」

また新たに別方向を探索していた小隊の一人が、ずぶ濡れのまま同じように焦燥した様子で報告した。

「う、海です! 我々は今、海の上にいます!」

「な、なんでだああああああああ!」

元々カイゼル帝国の兵士たちが陣を構えていた位置から、海に行くまではたとえ『超越者』といえども一時間や二時間では足りない。しかも、それが行き帰りとなるとなおさらだ。

だが、兵士たちは二時間経たない中でここまで帰り、こうして海があると報告しているのだ。

オーリウスにはもう何が何だか分からなかった。

「ど、どうなってる!? 俺たちに何が起きてるって言うんだ!?」

どれだけ必死に答えを探しても、戻ってくる部下たちは海がある、渦潮があるとしか言わない。

そんな言葉の数々についに耐え切れなくなったオーリウスは、戻ってきた兵士たちに命令した。

「や、やってられるかッ! おい、今すぐ帰る支度をしろ! いいか、今すぐだ!」

「は、はいッ!」

命令された兵士たちは急いで荷物をまとめ、その間に残りの兵士たちも戻ってくると、まとめた荷物をそれぞれ背負った。

「そうだ。帰る……帰ればいいんだ……そうすりゃ何もかも一緒だ……」

寒さや訳の分からない状況に冷静さを失ったオーリウスは、兵士たちを引き連れて移動を開始する。

そして――――。

「う……そ……だろ……?」

目の前に広がる海に、膝をついた。

森を抜けたと思いきや、そこはもう砂浜もなく、すぐ海という訳の分からない光景が目の前にあるのだ。

帰り道であるはずの草原や道はなく、渦潮が激しい音を立てている。

「た、隊長、あれ!」

「え?」

呆然としながら部下の一人が指示した方向に視線を向けると、まるで渦潮など意に介さない様子で、とある魔物が姿を現した。

それは誠一が切り抜いた【封魔の森】の一部を軽く一巻きにできるほど巨大な、青白い龍だった。

「あ、ああ……」

しかも、その龍は一体だけではない。

「グルルルル……」

「ガアアアア!」

「グゥゥアアア!」

渦潮の見える海のあちこちから、その顔や尻尾が姿を見せるのだ。

顔を青くしながら、オーリウスは目の前にいる龍たちを『鑑定』する。

すると――――。

『海龍王Lv:1332』

『――――』

皆、何も言えず、ただただ呆然とするしかない。

あれだけ強くなり、もはや敵なしだと思っていたオーリウスたちでさえ、レベルは500を少し超えた程度なのだ。

その倍以上ものレベルを誇る魔物が、複数体。

しかも、周囲は激しい渦潮でそもそもこの島から出ることさえできるか分からないのだ。

だが出たとしても、目の前の龍をどうにかしなければ決して帰ることはできない。

そして、帰りの頼みでもある転移魔法は――――この場所では使えないのだ。

「あ、ああ……ああああ……!」

あまりにも理不尽すぎる現実にオーリウスや他の兵士たちは、心を完全にへし折られるのだった。

◆◇◆

「おかしい……おかしいぞ……! 一体何が起きたというのだ!?」

カイゼル帝国の兵士たちが揺れの原因などを調べている頃、同じくカイゼル帝国の陣地付近にいた【魔神教団】の『使徒』も、同じ原因で焦っていた。

「何故だ、何をどうしたら海が目の前に広がるなどということに!? 俺は海に近づいていないぞ!」

オーリウスたちと同じように情報収集のため、本来のヴァルシャ帝国にいたころであれば海のある方向とは逆に進んだはずなのに、目の前には何故か海があるのだ。

「くっ! 最悪だ……【転移の宝玉】を持ってきていないぞ……この場所では転移魔法も使えぬし……」

元々デストラさえくれば、もはやヴァルシャ帝国を混乱と絶望に叩き落とすことは確実だとフードの人物は考えていたため、【転移の宝玉】といった移動系のアイテムは一つも持ってきていないのだ。

「これではデストラ様を頼ることもできんぞ……」

しかも、どう見ても現在はヴァルシャ帝国付近にいるように見えないため、もし仮に今デストラが転移してきたとしても、それはこの場所ではなく、誠一がくり抜いたことによってぽっかり空いた場所に転移してくることになるのだ。

「……まあいい。アイテムが使えぬのなら、自力で帰るしかあるまい」

大雨のせいで視界が上手く確保できない中、使徒はそう決める。

事実、魔法も使えず、移動するためのスキルさえ使えない今、移動手段は水泳や船を造るなどしかないのだ。

「あの渦潮がかなり厄介だが、それさえ超えれば――――」

「グオオオオオオオオ!」

使徒の言葉を遮るように、目の前の海でたくさん遊泳する海龍王が雄叫びを上げた。

「……」

しかも、その数は一体だけでなく、複数体がその雄叫びに続く形で声を上げるのだ。

そんな光景を目の前で見た使徒は、頭が真っ白になる。

「は? な、何がどうなっている? なんだ、あの魔物は? 何故あんな魔物が複数も? は?」

あまりにも理不尽な現実に、遂に使徒は現実逃避を始めた。

「こ、これは夢だ。そうだ、そうに違いない。そうでなければ、あんな伝説クラスの魔物が蔓延る海にいきなり現れたりしない。ふは、ふはは。あははははは」

狂ったように使徒は笑いだすと、その場で現実から目を背けるように目を瞑るのだった。

◆◇◆

「お、門が見えてきた」

くり抜いた【封魔の森】の一部を海まで捨ててきた俺は、特に魔物に襲われたりすることもなく、無事にヴァルシャ帝国まで戻ってきた。

「おぉ、やっぱりこうしてみるとずいぶん広範囲をくり抜いちゃったなぁ」

そしてぽっかりと穴が開いたようになっている帝都の前を見て、俺は頭をかいた。

「うん、やっぱり元に戻さないとな。まだ【封魔の森】のすべての木がなくなったわけじゃないけど、魔法は使えるんだろうか?」

完全に行き当たりばったりで行動しているので、今更ながらそんなことを心配していると、脳内アナウンスが答えてくれた。

『うっすらとですが、魔力が漂っているので大丈夫です』

「お、そうか。それならいいや」

もう脳内アナウンスさんとの会話にも慣れてしまった俺は、その回答に満足しながら正門に向かった。

すると――――。

「どういうことよおおおおおおおお!」

「は、はい!?」

正門に着くやいなや、門番に声をかける間もなくいきなり正門が開き、俺の胸ぐらをアメリアが掴んだ。

「どうして! 目の前の! 【封魔の森】が! ないワケ!?」

「ええっと……」

「いいわ、何も言わなくても。全部兵士に聞いたから……! 一体何を考えて森の一部をくり抜こうと思ったのよッ! てか何でくり抜けたのよ!?」

「くり抜けたからくり抜いたとしか……」

「それが意味わかんないって言ってるんでしょうがああああああああ!」

頭を抱え、そう叫ぶアメリア。なんかごめんなさい。

本当ならアメリアたちが寝てる間に森も元通りにしようと思ってたんだけど、さすがにあそこまで派手に動けば、そりゃあ兵士さんが報告に行くよね。

必死に目の前の現実を処理しようとしているアメリアの後ろで、死んだ目をしたリエルさんとスインさんが話していた。

「……スイン。私の常識がどんどん壊れていくんだ」

「……奇遇だね。私もだよ」

「聞いたか? くり抜けたからくり抜いたらしいぞ」

「うん、聞いたよ。普通、森なんてくり抜けないんだけどね」

「いや、それどころかくり抜くなんて発想しないぞ、普通……」

「でもしてるね」

「……やはり非常識の塊だ。というより、神だろう。うん、私はそう思うことにした。そう思わなければやっていけない。あんな存在を同じ人間だと言うと人間に失礼だ」

「そこまで言わなくてもいいんじゃないですかぁ!?」

今回ばかりは非常識の塊とか普通じゃないって言われても仕方ないなって思うけど、人間に失礼は俺に失礼でしょ!? 一応種族『人間』よ!? 俺!

全力でそうツッコむと、何かに気付いたアメリアが再び俺の胸ぐらをつかむ。

「てか、何てことしてくれたワケ!? ここにあった森が、カイゼル帝国の兵士たちを食い止めていたと言ってもいいのに……! どうしてくり抜くなんてことしたのよ!?」

「えっと……そもそも【封魔の森】をくり抜きたかったからくり抜いたんじゃなくて、カイゼル帝国の兵士たちと【魔神教団】の『使徒』を両方同時にどうにかできないかなぁって俺なりに考えた結果、その二つがいるところくり抜いて海に捨てちゃえって……」

「どうしよう。私、アンタの言ってることが一つも分からない」

とうとうアメリアもリエルさんたちと同じように死んだ目をして俺を見た。

「え、そんな考えが本当にできると思ったの?」

「で、できちゃいましたね……」

「何でよッ!」

いや、俺が聞きたいくらい。ホント、何でできちゃったんだろう。イケるとは何となく思ってたけど、実際にやってみると自分でもヒくわ。

まあでも、結果的に良かったじゃん? 戦う必要はなくなったし。

ほら、地球のすごい剣豪さんも「戦わずして勝つ、これが無手勝流」とか言って対戦相手置いてきたって言うしさ? そんなノリ。

「おかしい……え、私がおかしいんじゃないわよね? あれ? もしかして、皆森の一部をくり抜いたり、それを運んだりできるの? あ、できそうな気がしてきたわ!」

「陛下あああああっ! お気を確かに……! 無理です、我々では無理です! というより、人類じゃどう足掻いてむ無理ですからッ!」

「そ、そう? でも、誠一はできたって言ってるわよ? うん、案外いけるんじゃない? 私たちがしてないだけで」

「陛下あああああああっ! クッ! 貴様あああああっ! 貴様のせいで……貴様の非常識が常識だと陛下が思い込んでしまったではないかああああああ!」

「いやあ、実際イケちゃったりしません?」

「するかっ!」

ですよねぇ。知ってた。

俺とリエルさんがそんなやり取りをしている横で、どうやらスインさんが何とかアメリアを正気に戻したらしく、頭を振りながら再度俺に声をかけてきた。

「あ、危ない……アンタといると、私の常識が崩れるわ……って、アンタのあまりにも理不尽かつ非常識な行動に驚いてたけど、もしかして……もうカイゼル帝国と【魔神教団】の相手をしなくてよかったりする……?」

「「あ」」

アメリアの言葉に、リエルさんやスインさん。それに周囲で成り行きを見守っていた兵士さんたちが、目を見開いて固まり、俺を見つめる。

「ええ。そう言うことになりますね」

『……』

全員、沈黙した。あれ?

すると、正門から木がやって来て、目の前の光景を見て目を見開いた後、大声を上げて笑い始めた。

「ぶっ……アハハハハハ! せ、誠一様! 一体何をすればこんな光景が広がるんですか!?」

「えっと……カイゼル帝国も【魔神教団】も……ついでに【封魔の森】も鬱陶しいから海に捨てちゃえって……」

「アハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

俺の説明でツボったのか、木は体をよじって大笑いした。

「す、すごい……! わ、私が頼もうと思ってたことを……こ、こんな訳の分からない方法で解決するなんて……! お、お腹が痛いです……木なので正確にはお腹ないんですが……!」

「あ、そうだよ。昨日、確かお前が何か言いかけてたと思うんだけど、何て言おうとしたんだ?」

思い出したので忘れないうちにそう訊くと、木は未だに笑いを引きずったまま答える。

「何をって……た、ただ、カイゼル帝国と【魔神教団】をどうにかしてくださいって……そうお願いするつもりだったんですよ」

「は?」

「だってそうでしょう? 誠一様の回復薬や回復魔法で兵士の皆さんは回復しました。ですが、今回のその傷の原因であるカイゼル帝国たちをどうにかしなければ問題は解決しません。ですから、誠一様にそれをお願いしようとしてたんですが……まさか、伝える前に……そ、それも……こ、こんな方法で……アハハハハハハハ!」

再び笑いのツボに入った木は、遂に耐え切れなくなったのか、地面に笑い転げた。ホント、人間臭い木だなぁ!

でも木の言う通り、俺自身もどうかと思う方法なので、何も言い返せない。

すると、黙っていたアメリアが引きつった笑みを浮かべた。

「あ、あれだけ絶望的状況で、皆で覚悟を決めたのに……あの覚悟の意味って……」

「俺、恋人に死ぬかもしれねぇって言ってきちまったよ……」

「俺なんて、身辺整理として家族に全財産譲渡しちまった……」

「バカ野郎。俺なんか――――何もする相手がいなかった……」

「「「おい、悲しいこと言うなッ!」」」

全員何とも言えない表情で会話していると、スインさんがアメリアに声をかける。

「陛下、ひとまずは喜びましょう!」

「え?」

「理由や過程はどうであれ、私たちはこうして無傷で勝利することが……ん? 勝利? と、とにかく! 戦わずに済んだんですから、今は喜ばないと!」

「そう、よね……そうよね!」

スインさんの言葉で再び目に輝きを取り戻したアメリアは、振り返ると兵士たちや門の向こうにいる人々に届かせる勢いで声を張り上げた。

「皆の者ぉぉぉぉおおおお! 今、ここに! 戦争は終結したッ! 我々の……勝利だあああああああああ!」

『おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!』

一斉に上がる雄叫び。

徐々に勝利の実感や無事だということが認識できたのか、兵士さんたちは目に涙を浮かべ、抱き合い、生きているという喜びを存分に表現した。

「誠一殿」

「ん?」

そんな兵士さんたちを眺めていると、改まった様子でアメリアが声をかけてくる。

「今回は貴方がいなかったらこんなに幸せな結末はなかった。本当に……本当にありがとう……!」

そういうと、アメリアはその場で頭を下げた。

その行為にぎょっとしていると、やはりというか、リエルさんが急いでアメリアに駆け寄る。

「へ、陛下! いけません! そう簡単に頭を下げては――――」

「リエル。ここで頭を下げなかったらいつ下げるって言うの? もし下げないようなら、そんな頭はいらないわ」

「それは……」

「アンタこそ、誠一殿に迷惑をかけてるんだし、ちゃんと謝りなさい」

「……はい」

そういうとリエルさんは気まずそうな表情で俺に向き直る。

「その……散々貴殿を罵倒したりして済まない。誠一殿には……本当に助けられた。ありがとう」

「私も。こうして兵士たちや陛下、それにリエルと一緒にいることができるのは、君のおかげだ。ありがとう」

リエルさんだけでなく、スインさんも俺に頭を下げる。

「「「誠一さまあああああっ!」」」

「えっ!?」

アメリアやリエルさんたちの対応だけでいっぱいいっぱいだというのに、そこからさらに声をかけられ、その方向に顔を向けると、たくさんの兵士たちが並んで俺を見ていた。

「貴方のおかげで、俺たちはまた、家族と会うことができます!」

「俺も、恋人に会えるんです!」

「俺は……いなかった……」

「「「お前はちょっと黙ってろ!」」」

約一名、切なくなる人もいるが、皆俺にそういうと、一斉に頭を下げた。

「「「本当に、ありがとうございましたあああああああっ!」」」

「……」

俺としては、本当に見てられないというか、見過ごせなくて、別にお礼が欲しくてやったわけじゃない。

でも、こうして喜んでくれると……ちゃんと役に立ててよかったなあって、そう思った。

そんな俺たちのやり取りを見ていたアメリアは、ふと思い出した様子で俺がくり抜いた跡地に目を向ける。

「そういえば……この地面とか、どうしたらいいのかしら……」

『あっ……』

皆、本当だと言わんばかりの反応だが、そこは安心してほしい。

「大丈夫。ちゃんと元に戻すよ」

「え?」

「まあ元に戻すと言っても、【封魔の森】の木と同じにはならないけど……」

「えっと……何を言って――――」

早い方がいいだろうと、俺はひとまず土魔法を発動させた。

すると俺がくり抜いた跡地の上空に超巨大な土の塊……それこそ、俺がくり抜いた部分と同じだけの量の土塊が出現したのだ。

それはそのまま跡地に落とし、魔法で綺麗に整地する。

「んで、ここで植物」

そこからさらに魔法で適当な植物を生やすと、なんかいい感じに配置した。

「……っとこんな感じでどう?」

『………………』

振り向くと、顎が外れそうなほど口を開く皆さん。

そして――――。

『えええええええええええええええええええええええええええ!?』

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

皆の絶叫と、木の笑い声が響き渡るのだった。