軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

試着会

「おーい、そっちにある釘とってくれー」

「その看板は向こうにお願い!」

「教室の申請した? え? まだ?」

「先生どこにいるか知らない?」

学園祭の日が近づき、どこのクラスも出し物の準備で忙しそうにしていた。

俺自身も教室で使う追加の机や椅子の申請をしに行ったりと準備に参加し、今もその机や材料を運んでいた。

「バーナさんの狙い通り、皆活気づいてるねぇ」

「……ん。生き生きしてる」

俺のお手伝いをしてくれているオリガちゃんも、今回の料理で使う食材を運びながら少しだけ笑みを浮かべた。

「……そういえば、勇者たちは参加するの?」

「あー……そういえばあれから全然見かけないなぁ」

オリガちゃんの場合は以前神無月先輩たちが家庭科室に突撃して以来。

俺は廊下で日野と再開して以来勇者たちを見かけていないのだ。

気にならないと言えばウソになるが、神無月先輩が何とかするって言ってたし、大丈夫だろう。あの変態性さえなければ、超頼りになる人だからな。

他のクラスの様子を観察していると教室に辿り着いた。

「ただいま――――」

「ア、誠一! 見テ見テ!」

「へ!?」

教室に入った瞬間、ミニスカートタイプのナース服に身を包んだゴリラ――――否、サリアが、「ウッフーン」と言いながらセクシーポーズを決めていた。

あまりにも衝撃的すぎる光景に、思わず固まる。

「モウ……私ガアマリニモ可愛イカラッテ見ツメ過ギ。イヤン」

「ちっがああああああああああああああう!」

いや、そういう意味で見つめてたんじゃねぇよ!? ちょっと脳内処理が追い付かなくて呆然としてただけだからね!?

そもそも何がどうしてゴリラ状態でナース服を着ることになったの!? 人間じゃダメなわけ!?

誰かに説明を求めるように教室内を見渡すと、何故か男性陣の姿しか見えない。

ただ、いつの間にか教室内に作られていたカーテンの仕切りがあり、その中に女性陣がいるのだろう。

「い、いや……俺にも何が何だか分かんねぇっス……」

「……女子たちはそのカーテンの向こうで衣装に着替えているが、サリアは出てきた瞬間からその姿だったぞ」

俺の説明を求める視線に対し、アグノスは頬を引きつらせ、ブルードは目を逸らしながら答えた。いや、まさかの理由がねぇの!?

愕然とする俺に、ゴリアは驚くほど力強く俺の肩を掴んだ。

「誠一」

「はい?」

「コレデ、誠一ヲ悩殺」

「物理的に殺されそうなんですが!?」

手が置かれてる肩からミシミシ音が鳴ってるんですけどね!

てか、やっぱりゴリラの時の思考回路が人間の時と違いすぎて慣れねぇ! いや、そんなサリアもいいなぁと思う俺は末期なんだけどさ!

「……サリアお姉ちゃん、似合ってる」

「アリガトウ、オリガチャン。ア、オリガチャンノ衣装モアルカラ、着替エテオイデ」

オリガちゃんに褒められたサリアは優しく微笑むと、そのままカーテンの向こうにオリガちゃんを連れていった。

……おかしい。今一瞬、ナース服が尋常じゃなく似合って見えた。もうダメだ俺。

「……あ、男子たちも着替えたんだな」

「は、はい! ただ、僕たちは基本的に執事服で統一らしいのですが……」

レオンの言う通り、アグノスたちは同じ執事服に身を包んでいた。

ただ、それぞれ個性が出ていて、アグノスは執事服を着崩し、逆にブルードは完璧に着こなしており、ベアードはジャケットを脱いだ状態で腕をまくった格好、レオンは他が紐状のネクタイに対し、ちゃんとした蝶ネクタイ姿だった。

うーん……こうしてみると、アグノスも含めて男子の美形率高いな。メチャクチャ似合ってる。

まだ分からないが、この四人がいるだけで、学園中の女性たちが集まってきそうだ。

思わず四人の姿に感心していると、突然今まで仕切られていたカーテンが開けられた。

「皆、着替エ終ワッタヨ」

未だにゴリラのサリアがそういうと、女性陣が恥ずかしそうにしながら出てきた。

「あ、あんまりジロジロ見るんじゃないわよ……殺すわよ!?」

「物騒だなおい!?」

その格好で接客をするわけだから、見るたびに殺すって言ってたらお客さん全員死んじゃうよ。

俺のツッコミを受けながらも頬を赤く染め、睨みつけてくるヘレンはメイド服に身を包んでいた。

「まあまあ、いいじゃないですか~。ヘレンちゃん、可愛いですよ~?」

「で、でも……」

「どうせこの姿でお客さんの前に立つんですし、諦めた方がいいですよ~」

「うぐっ……それはそうだけど……あ、そうよ! それなら私は料理を――――」

「お客様を殺すつもりですか~?」

「そこまで言う!?」

ヘレン、すまない。俺もレイチェルと同意見だ……。

そもそも、お皿の上に何もなければ客は食べれないしな。せめてお皿の上に『モノ』を用意できるようになってからもう一度言ってほしい。言われても答えはノーだけど。

ヘレンを説得しているレイチェルはシスター服に身を包んでおり、かなり似合っている。

「フッ……これは中々面白い衣装ですね。私を輝かせるのに一役買ってます」

「ぼ、ボクのはヘレンのより酷いんじゃないかな!? これどうなの!?」

イレーネは婦警さんの格好で髪をかき上げ、フローラはバニーガールの格好で何か身を隠すものがないかソワソワしながら周りを見渡していた。

イレーネはともかく、フローラは……うん。どちらかといえば親父っぽいイメージのフローラが、逆に女の子らしい姿でいるのは新鮮だ。本人はどう思ってるか知らないけど。ご愁傷様です。

「クラウディアはよく男装をしていましたが、まさか私がすることになるとは……」

「この服……東の国の民族衣装とよく似てる」

「制服というのも私には新鮮でしたが……私の知らない服が世の中にはたくさんあるんですね!」

ルイエスは男性陣と同じ執事服に身を包んでおり、背筋もピンとしているので非常にカッコいい。

ルーティアは日本の和服を着ており、髪型もそれに合わせて結い上げている。

久しぶりに東の国って言葉を聞いたけど、本当に昔の日本と似たような国なんだな。いつか行ってみたい。

そして今までダンジョンに封印されていたゾーラは、キャビンアテンダントの姿ではしゃいでいる。……今までのことを考えたら、ちょっとしたことでもゾーラにとっては新鮮で、嬉しいんだろう。まあ異世界の衣装は誰から見ても新鮮かもしれないが。

それよりもゾーラが本当に楽しそうに笑っているので、ダンジョンから連れ出せて本当に良かったと思う。このまま楽しいことをどんどん知っていってくれたらいいな。

「わ、私もこんな格好をしないといけないんですか!?」

「お、おい! これ何の衣装だ!? モコモコしてる割にスカートの丈が短ぇし……!」

「ふむ……これはずいぶんと動きやすい……というより、蹴りやすいな」

「……私の服も不思議。なんの衣装だろう」

ベアトリスさんもやはり着替えて参加することになったため、今は女海賊の格好をしている。普段、キッチリした格好をしているから、ワイルドな姿がこう……うん!

あといつの間にかアルも着替えており、ミニスカートのサンタ姿で顔を赤らめながら必死にスカートを押さえていた。

その隣では際どいスリットの入ったチャイナドレスのまま、無防備に蹴りを繰り出すルルネ。おい、見え……てか下着穿いてるよね? 大丈夫だよね!?

オリガちゃんは可愛らしい巫女さんの格好で、興味深そうに自分の服を見まわしていた。

こうして全員の着替えが終わり、みんな綺麗で可愛い女の子たちばかりなので、コスプレのレベルがすさまじいことになっていた。

「うおおおおおおおおお! す、スゲェ! 兄貴、俺超感動してるっス!」

「……まあ、いいのではないか? ……ん」

「皆、似合っている」

「き、綺麗ですね! あ、ごめんなさい! 僕ごときが綺麗だなんて……! 畏れ多いですね!? すみません! 許してください!」

アグノスは女性陣の姿に鼻息を荒くし、ベアードやレオンがいつも通りの反応をする中、ブルードが珍しく視線を逸らしているのが印象的だった。

いや、確かに視線に困るよね! 俺もさっきからどこに視線を持っていけばいいのか迷ってるからさ!

「ドウ? 皆、キレイデショ?」

改めてサリアがみんなの横に並び、セクシーポーズを決める。いや、サリアだけ異次元過ぎて浮いてるからね?

……あ、サリアを見てると落ち着くぞ! 初めてゴリラの姿に感謝することになった! ありがとう、ゴリラ! 俺の理性が保たれた!

一人で精神を安定させてると、ルイエスが皆の衣装を見渡しながらふとした疑問を口にした。

「そういえば……詳しい話を聞いたわけでもないのですが、師匠は勇者なのですか?」

「え?」

「それは私も気になる。前にダンジョンで【魔王魔法】を習得したときに【聖属性魔法】はすでに使えるって言ってたし、この間の試食会に勇者たちがやって来たから……」

そういえば、ヘレンたちは知っているがルイエスたちにはきちんと説明してなかったな。

勢いでダンジョンを攻略して、そのまま嵐のように神無月先輩たちがやって来て、そのまま去っていったわけだし……。

「うーん……勇者として召喚されたわけじゃないから勇者じゃないけど、勇者たちと同じ世界の人間だよ。だから、異世界人ってワケ」

「なるほど……これらの服も異世界では普通なのですか?」

「別に普通ってわけじゃないかなぁ。もちろん、仕事で着ている人もいるけどね」

俺の説明に納得し、ルイエスは再び皆の服を観察していた。

婦警さんの服なんかはけっこう忠実だと思うけど、それ以外は日本的な……というより、コスプレように改造されたものとなっている。

「さて、今日はこの試着だけで終わりかな? メニューも決まったし、あとは当日に動いてみないと分からないだろうけど……」

「何言ッテルノ? マダダヨ?」

「え?」

まだ? 何か準備しなきゃいけないことあったか?

サリアがそう言った理由が特に浮かばず、首をひねっていると再び肩を力強く掴まれた。あ、あれ?

「誠一モ、着替エル」

「………………えっ!? 俺もやるのか!?」

「当たり前だろ!? そもそも担任でもないこのオレが着替えてんだぞ! お前も着替えるんだよっ!」

「ささ、主様! こちらへどうぞ!」

「……わくわく」

いつの間にか囲むようにして迫っていたアルたちにより、俺は逃げ場を失った。ば、馬鹿な!?

「あ、ちょっと待って! き、着替える! 自分で着替えるよ!? だから引き摺らないで!? ついてこないで!?」

「大丈夫。優シクスルネ?」

「優しくって何されるんですかねぇ!?」

「ヨイデハナイカ、ヨイデハナイカ」

「や、止めろおおおおおおおおおおおお!」

必死の抵抗もむなしく、俺はサリアに連行される形で着世界え人形のごとく、色々な衣装を着る羽目になった。

――――ちなみに後で知ったが、俺のイメージを聞いただけでサリアがこれらの衣装をすべて作り上げたらしい。さすが過ぎるだろ!