軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

予想外の……

「さて、ある程度出すための料理は決まったし、これで――――」

「ちょっと待って」

「ん?」

皆の作った料理を食べ、調理係やメニューを軽く決めたところ、突然ヘレンからストップがかかった。

ヘレンは俺を指さし、堂々と言い放つ。

「誠一先生……貴方も料理してちょうだい」

「え? ……ええええ!?」

まさかの発言に俺は驚く。いや、俺が料理って……。

「だってそうでしょう? 幼いオリガちゃんと料理を知らないゾーラさんは別にして、ベアトリス先生とルイエスさん、そしてルーティアさんは料理が出来るからいいけど、誠一先生はどうなのよ?」

「え、えっと……俺も料理したことないし、だから俺が料理する必要は……」

「私も料理できないって言ったわよね?」

「あ、はい」

もはや俺に拒否という選択肢は残されていなかった。チクショウ。

「つっても……食べ物系はある程度出揃ったんだよなぁ」

完全な料理初心者の俺には、手の込んだ料理なんて……いや、それどころかレシピすらほとんど知らないぞ。

「あ、ハンバーグならまだいけるぞ」

昔授業で作ったハンバーグだけは何となくレシピを覚えているので、多分作れるだろう。

そう思った俺はとりあえず食材を用意して、いざ始めようとすると――――。

『スキル【料理】を習得しました』

まだ料理すらしてないんですけど!?

予想以上に用意のいい体に驚きながらも、気を取り直して料理を始める。

「えっと……ひき肉をこねた後は確か空気抜きとかいう作業が必要なんだっけ」

片手に少し平たくした肉の塊を軽く投げつけた。

ドッパァァァァァァン!

「……」

『……』

俺の手には何も残ってなかった。

どうしてだよぉぉぉぉおおおお!

たったさっき『料理』スキルを習得したばっかじゃないの!? ねぇ!?

この悲惨な結末は何!? ヘレン以上に跡形も残ってねぇよ! 手にあの肉の感触が一つも残ってねぇ! 逆にすごくない!? 開き直らなきゃやってらんねぇ!

全員が無言の時間が進む中、再び俺の脳内にアナウンスが流れた。

『……【料理】スキルを進化させ、【料理の鉄人】スキルへと変更いたしました』

アナウンスにまで気を遣われてるぅぅぅぅうううう!?

まさかここまで酷いことになるとは思っていなかった俺は、何事もなかったかのように調理を再開した。

すると今度は消し飛ぶような事態は起こらず、綺麗に空気抜きを終えることが出来た。

「うん、上手くいったね!」

「さっきの無かったことにはできないからね?」

「ですよねー」

ヘレンの鋭いツッコミにそう返すしかなかった。

だがその後は特にトラブルもなく、さらに進化したスキル……【料理の鉄人】の効果により、どんな手順で調理すればいいのか分かるようになったので、よりスムーズに進められた。

「完成したよ」

『おお……!』

何とかソースも作り、綺麗に皿に盛り付け終えると、俺はみんなの下へハンバーグを運んだ。

一応全員分作ってあるし、何ならルルネ用におかわりも用意してある。

「や、やるじゃない。ここまで出来るんならなんであんな悲惨なことに……」

「それ以上は俺の心が死ぬから聞かないでくれ」

あれは不幸な事故やったんや!

ともかく、一口食べてくれればあの失敗は帳消しにできるだろう。

味見をしたら、それくらい美味しくできたと思う。

「では、早速誠一さんのをいただきましょう」

ベアトリスさんがそう言って俺のハンバーグを口にしようとすると――――。

「誠一君の手作り料理ぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいい!」

「へ? ひぃぃぃぃぃぃいいいいいい!?」

突然、家庭科室の扉が開け放たれ、長い黒髪の女性が地面を這いながら入室してきた。

「最初に食べるのは私だあああああああああああああああああ!」

「どちら様ああああああああああ!?」

まるで貞子とテケテケを掛け合わせたような超ホラーな女性はルルネ用に残しておいたハンバーグに飛びつくと、そのまま貪り食った。

「ああ……最高……もう死んでもいい……」

「あああああ! 私のハンバーグがああああ!」

確かにルルネのハンバーグの予定だけども。

ルルネの悲鳴を聞きながら突然の乱入者に視線を向けると、俺はその存在がよく知る人物だと気づいた。

「え……神無月先輩!?」

「そうだとも! 君の神無月華蓮だよ!」

「信じたくねぇ!」

誰があんな妖怪や黒光りするアイツも真っ青な這いずり方で入室してきた人物を尊敬する先輩だと認められるだろうか。少なくとも俺の通ってた高校の人間は誰も信じないと思う。

いや、そんなことより……。

「ど、どうしてここに?」

「ん? ああ、それは――――」

神無月先輩がそこまで言いかけた瞬間だった。

「俺、神無月先輩のあんな気持ち悪い動き初めて見たぞ……」

「絶対他の連中には見せられねぇだろ? あれ……」

「いや、他の連中もそうだが、誠一にはもっと見せられなくないか?」

「ああ……確かに……」

家庭科室にぞろぞろと新たに人間たちがやって来た。

サリアたちはみんなその人物に驚いているが、俺はさらに驚いていた。

「え……どうして翔太たちが……?」

「私が連れてきた」

「なんでだよおおおおおおお!?」

俺のツッコミが家庭科室に響き渡るのだった。