軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔族軍VS誠一

俺はルーティアの言葉に間抜けな表情を浮かべた。

「え、連れて行くって……」

「私は誠一について行くってこと」

「ルーティア様!?」

ルーティアの言葉に驚いたのは俺だけじゃないようで、すごく綺麗な人も驚いていた。

「ルーティア様、いけません! つい先ほど襲われて、危険な状態だったというのに……我々から離れられては御守りする事が出来ません!」

「そうです! 確かにソイツは恩人かもしれませんが、それとこれは話が違いますよ!」

綺麗な人だけでなく、白髪のイケメンもそう口にする。

でも二人の言いたいことも分かる。

そもそも俺自身が急に連れて行けって言われて困惑してるし、魔族の人たちからすればとても大切な人を得体の知れない俺なんかに任せるのは不安だろう。

「レイヤ、ゾルア。大丈夫。誠一は強いから」

「強いって……そんなの信じられませんよ! 確かに『呪い』を解いたのはスゲェが、それで強いと言われても納得できねぇ!」

白髪のイケメンの言葉のあとに、貫禄のある魔族の人も口を開いた。

「……ルーティア様。私もゾルアと同意見です。そこの人間が強いようにはどうしても見えないので……」

「ゼロス……」

ルーティアもさすがにここまで言われたら考え直した方がいいんじゃないか?

口にはしてないが残りの魔族たちも似たような反応をしているし。

……そこ、ルシウスさん! 何でちょっと面白いことが起きそうって顔してるんですか! 何を考えてるのか分かりませんが、そんな面白いことは――――。

「――――分かった。なら、レイヤたちが誠一と戦って、誠一が勝ったら文句はない?」

「あらヤダ」

知ってたよ! もうここまで来るとフラグじゃんって思ってたよ! ついオネェ口調になっちゃたしさ!

でも現実逃避させてください。俺はただ平穏に暮らしたいだけなんです。

ルーティアの言葉を受けた貫禄のある魔族は顔を顰める。

「……ルーティア様、本気ですか? 我々全員とそこの人間が戦うと?」

「本気。誠一は強い」

おーい、ルーティアさーん? そんなに持ち上げてもいいことないですよ?

「ルーティア様、冗談はやめてくださいよ。俺やゼロスが一人で相手をするんじゃなくて全員ですって?」

「冗談じゃない。全員が束になっても……誠一には勝てない」

「――――おい人間。いい度胸じゃねぇか」

「理不尽すぎません!?」

俺が言ったわけじゃないのに何で俺が怒られるの!? これが権力のある者とない者の差か!? 世知辛いね!

「なんだなんだ? 面白い展開じゃねぇか。いいぜ? ウチの訓練場を貸してやるよ」

「環境整っちゃったよっ!」

いいよ、やってやるよ! やれば文句ないんでしょ!?

結局いいように流された俺は王城の訓練場へとやってきた。

しかも、戦う魔族たちとルーティアだけでなく、父さんたちやお城の兵士さんたちまで集まってきて予想以上に大事になっている。どうしてこうなった。

げんなりする俺の前には、やる気――――というか、殺気十分な魔族の方々が。あれ? これ模擬戦だよね? 殺し合いじゃないよね!?

思わず体を震えさせていると、白髪のイケメンが首を鳴らした。

「さて、 殺(や) るか」

「絶対漢字おかしいだろ!」

アカン! コイツら目がマジだ!

俺のツッコミを完全スルーする魔族の方々をよそに、ランゼさんが俺たちの間に立つ。

「さて、んじゃあ模擬戦を始めるわけだが……殺さなければ何をやってもいいぞ」

「……チッ」

「ランゼさん、彼今舌打ちしましたよぇ!?」

「気のせいだろ」

「ウソでしょ!?」

「一つ質問いいかしら?」

白髪イケメンさんの舌打ちがスルーされると、今度はすごく綺麗な人が手を挙げた。

「ん? どうした?」

「殺さなければ何をしてもいいってことは……存分に痛めつけても?」

「いいだろう」

「よくないよ!?」

なんでそんな物騒なこと許可しちゃうの!? てかそんなこと聞いてくるあたり、確実に痛めつけようとしてるじゃん!

「そう心配するな。誠一なら問題ないだろ」

「俺を何だと思ってるんですかねぇ?」

「………………よし、始めるか!」

「そこスルーしないでっ!」

俺の抗議は無駄に終わり、魔族の方々はいつでも戦えるように距離をとった。

それを見届けたランゼさんは俺のほうも確認して――――。

「魔族軍対誠一……始めッ!」

「呑まれろッ!」

ランゼさんの合図と同時に、白髪イケメンさんは全身が真っ黒い闇のようなもので覆われ、そこから無数の漆黒の触手らしきものが俺めがけて射出された。

一瞬魔法かと思ったが、俺の体が特に反応をするわけでもないため、スキルや魔法ではないようだ。

……あの不気味な男もそうだったけど、この世界にはスキルと魔法だけでは説明のつかない不思議な力がほかにもあるんだな。

迫りくる漆黒の闇を前にそんなのんきなことを考えていると、ゴリゴリマッチョの鬼っぽい人が勢いよく殴りかかってきた。

「ゾルアの『闇』に触れるまでもなくやられるがいい!」

見た目からすごい力があるんだろうなぁとか思いながら、その鬼の拳を俺は右手で受け止めた。

「へ!?」

すると鬼は間抜けな表情を浮かべて硬直した。いや、その硬直はかなりの隙だと思うんだけど……。

「ウルス、そこをどきなさいッ!」

「ま、待て、レイヤ! 吾輩がまだ――――」

「『不死炎の円舞』!」

「ノオオオオオオオオン!」

ゴリマッチョの鬼の攻撃を受け止めていると、すぐさますごく綺麗な人が金色に輝く炎の輪をいくつも射出してきた。

これも俺の体が特に反応しないので、スキルや魔法の類ではないのだろう。

それよりも、俺の手から抜け出せないゴリマッチョさんは巻き添え……というか、すべての炎が直撃したため俺にダメージは一切なかった。

だが、その反動で思わず手を放してしまったため、彼は火だるまになりながらもその場から離脱した。

「ちょっと、アンタのせいで当たらなかったじゃない!」

「吾輩被害者なんですけど!?」

いや、ゴリマッチョさんにも同情するけど、一番の被害者は何故か戦わされてる俺だからね?

そんなことを考えているうちに、ついに漆黒の触手が俺へと到達した。

ここまですでにいろいろとあったが、実際数秒にも満たない間の出来事である。

それだけでもこの魔族の方々がすごいと分かるんだけど……。

とりあえず避けようと考えていると、すごくセクシーな魔族の女性が俺に近づき、妖しい視線を送ってきた。

「止まりなさい! 『魅惑の眼差し』!」

「ん?」

この感覚は……【果て無き悲愛の森】で『魅惑茸』を食べた時の感覚に似ている。

つまり、このセクシーな魔族に俺は魅了の状態異常をかけられそうになっているのだ。

だが、先にも言ったが、【果て無き悲愛の森】で魅了耐性はすでに得ているので、俺への効果はない。

まったく魅了される気配のない俺を見て、セクシーな魔族は目を見開く。

「また私の魅了が効かない相手だなんて……そろそろ【サキュバ・クイーン】としての自信を失いそうなんですけど……」

「えっ……な、なんかすみません……」

思わず謝っていると、ついに漆黒の触手から逃げる機会を失ってしまった。

いや、無理やり逃げることもできるんだろうけど……。

そんなことを思っているうちに漆黒の触手は俺を囲むと頭上から一気に襲い掛かってきた。

「これ、殴ったらどうなるんだろう……?」

ふとそんな疑問が浮かんだ俺は、目の前の漆黒の触手を殴ってみた。

「えい」

漆黒の触手は消し飛んだ。

「はっ……はああああ!? 俺の『闇』が……!?」

「おおう……まさかアッサリ消し飛ばせるとは……」

ていうか、殴った感覚がしなかった。おそらく拳圧だけで消し飛んでるわ。我ながらデタラメすぎる。

思わず頬を引きつらせていると、この光景を見ていたルシウスさんが爆笑している。

「アハハハハハハハハ! 誠一君、すごいねぇ! 彼の『闇』は本当に特殊なモノなんだけど……それをただ殴るだけで消し飛ばすなんて……!」

やっぱり俺はヤバいようだ。チクショウ!

「……ゾルア、下がってろ。『消滅球』」

すると今度は威厳のある魔族さんが何やら半透明な球を俺にめがけて撃ってきた。

これも殴ったら消し飛ばせるのかな?

「えい」

半透明な球は消し飛んだ。

「何……!?」

「おいおい、トカゲ野郎の『消滅球』まで消し飛ばすってどんな化け物だよ!?」

「諦めちゃだめよ、ゾルアちゃん! どこかに弱点があるはずよ!」

「ん?」

オネェ口調の魔族がそう口にした瞬間、俺は周囲の雰囲気というか、気配が変わったことを察知した。

なんだ? これ……。

「あら? 私の魔力を察知するなんて……いよいよ人間か疑わしいわね?」

「失礼な! 俺は人間だ! …………多分!」

「説得力ゼロね……」

俺の言葉にオネェ口調の魔族は苦笑いすると、すぐに真剣な表情へと切り替わる。

「さて、そろそろお遊びはお終いよ? 吹っ飛びなさい!」

「!」

俺は反射的に『 憎悪渦巻く細剣(ブラック) 』と『 慈愛溢れる細剣(ホワイト) 』を抜き、違和感の覚える方向を斬りつけた。

その瞬間、何もない空間を斬ったはずなのに、確かな手ごたえを感じた。

それを見て、オネェ口調の魔族は目を見開いていた。

「ウソでしょ!? 私の攻撃は見えないはずなのに……!」

どうやらオネェ口調の魔族は見えない攻撃をすることができるようで、俺は違和感の感覚える場所をひたすら斬りまくった。

すると体勢を立て直したゴリマッチョさんやすごく綺麗な魔族も含めて、本格的に全員が俺を倒すために攻撃してきた。

しかもそれぞれの攻撃が絶妙なタイミングで繰り出されており、連携がすさまじい。

そんなプロの連携を相手にできる機会なんてそうそうないだろうし、そもそもせっかく戦ってるからには俺も得したいなぁということで、俺は俺で魔族の方々を相手に戦闘の練習をさせてもらった。

いやぁ、力でごり押しするんじゃなくて、技術力で隙を見出すのは難しいなぁ。

有難い訓練相手だと思いながら戦い続けていたのだが、ついに魔族の方々の体力がなくなったようで、それぞれが息も絶え絶えといった状態になっていた。

「こ……こいつ……ど、どうなってやがるんだよ……!」

「ぜぇ……ぜぇ……わ、吾輩……も、もう動けない……」

「しょ、正直に言って……お、同じ星に住む生命体とは……思えないわね……」

失礼すぎじゃない? 俺宇宙人じゃないからね? ……いや、この星の人間でもないから宇宙人なのか?

でも宇宙人ってあの魔物販売店にいたUMAのことだろ! 俺は断じて違うからね!

それはともかく……。

「あの、もう訓練は――――」

『無理に決まってるだろ!』

「あ、はい」

魔族軍全員からそう言われてしまうのだった。