軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

207、王宮図書館の書庫へ

半ば無理やりという形でディアスの背に乗ってラクサリア王国の王宮へと帰還したマルティナたちは、集まっていた各国の代表者たちに説明する時間も与えられないまま、ディアスに引きずられるような形で王宮図書館にやってきた。

書庫へと突撃したディアスに続いて、マルティナとロラン、サシャ、そしてハルカとフローランも続く。ソフィアンは説明役として各国の代表者たちのところへ残ってくれていた。

『お、お前たちも研究者なのか?』

中に入ったディアスはラフォレたち歴史研究家を見つけると、嬉しそうに口角を上げる。しかし突然見知らぬ者、しかも背が高くガタイが良く存在感のありすぎるディアスの登場に、ラフォレたちは焦りと恐怖を滲ませていた。

「お前は誰だ!?」

「こ、ここは関係者以外立ち入り禁止だ!」

ディアスの話す魔法陣言語の基本は理解できているはずのラフォレたちだが、同じ魔法陣言語で返す余裕もないようだ。リール語でディアスに向かって必死に告げながら、書庫の端に下がった。

『ディアス様!』

そんな中でマルティナが声を上げ、ディアスを止めるように前に出る。大きな体でマルティナたちが見えなかったのだろうラフォレらは、その姿に安堵の表情を浮かべた。

『突然突撃しては驚かせてしまいます!』

『すまないな。しかし早く帰還の魔法陣とやらを確かめたいのだ。して、それはどこにある?』

とにかく研究成果を見なければ気が済まない様子のディアスに、マルティナはまず帰還の魔法陣の現在の状況を説明することにした。

マルティナの脳内に全てを記憶しているのだが、情報の保管と他の者たちへの共有のために作った書類を取り出す。書類は書庫の中の棚に仕舞ってあった。

『ひとまずこれを。今までの研究成果です』

とりあえず書類を手渡してから、ラフォレたちに向き直る。強襲して何も説明なしでは申し訳なさすぎるのだ。

「皆さん、騒いでしまって本当に申し訳ありません」

「いえ、それは構わんのだが……その方は誰だろうか。それに、マルティナたちはここに帰還するには早すぎないか? ハルカ様もいらっしゃるようだし……」

もっともすぎるラフォレの疑問に、まずはディアスの紹介からすることにした。魔法陣言語も使われているが、基本的にはリール語で書かれた書類を難しい顔で眺めるディアスを手のひらで示す。

「この方はディアス様、別の世界からこちらにきた竜であるお方です」

竜。その言葉に誰もが言葉を失った。それはこの世界が滅びかけた原因となった存在だからだ。そして過去の人類の所業を知っている者からしたら、明確に敵視されていても全くおかしくない相手だった。

「りゅ、竜とは、人になれたのか……? それに、なぜ生きて。何千年も前の話では――」

「竜とはとても長命で、長生きならば万年を生きるそうです。そして人型になるのは当たり前のことだと。過去にある方から教わり、魔法陣言語のみ扱えるようです」

「まさか、そのような存在だとは……我々は、恨まれてはいないのだろうか」

「私の謝罪を受け入れてくださいました。もう長い年月が経っているからというのが一つと、もう一つは――」

マルティナがディアスの子孫である可能性を告げようとして、少しだけ躊躇う。しかし言わないわけにもいかないので、深呼吸をしてから大袈裟にしないように努めて伝えた。

「私に微かな竜の匂いがするそうです。子孫ではないかと言われました」

「なんと……!」

ラフォレたちは一番の驚きを見せた。しかしマルティナが懸念していたような怖がったり気味悪がったり、そういうことは全くなく、むしろ真剣な表情で考え込む者が多い。

「竜と人は子が成せるのか……」

「数千年後の子孫でも分かるとは凄いことだな」

「特殊な能力を有した者の歴史が残っていることがあるが、すべて眉唾物だと思っていた。いわゆるお伽話だと。しかし中には事実もあるのかもしれないな」

「また歴史書を端から確認したい案件が……!」

「ん? つまりマルティナの能力は竜の子孫だからなのか?」

歴史研究家らしい感想に、マルティナはつい頬が緩んでしまう。そして最後に発された疑問は、マルティナ自身もディアスに聞きたかったことだ。

未だに書類と睨めっこをするディアスを見上げると、ちょうどディアスも顔を上げた。

『マルティナ、これは言葉が分からない。何語なのだ?』

『それはリール語と呼ばれる言語で、この国の第一言語ですし、今のこの大陸で最も使われている言語です。実は、魔法陣言語を話せる人はほとんどいないんです』

『それは不便だな――』

また考え込んでしまったディアスに、ひとまず気になったことを問いかけてみる。

『あの、ディアス様。一つお聞きしてもよろしいでしょうか』

『なんだ?』

素直に顔を向けてくれるディアスに、緊張しながら問いかけた。