軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

143、転移魔法陣がある場所へ

先頭はやる気満々のギードで、そのすぐ後にマルティナたちとアレットが続いた。

制限時間があるので、できる限り早足で奥に進み……転移魔法陣があるだろう場所まであと少しというところで、マルティナが先頭のギードに声をかける。

「止まってください。もう少し先ですが、壁面に小さな傷があるのが分かりますか? 以前はあそこを超えたあたりに先頭が差し掛かった瞬間、転移しました」

「うーーん、あ、あそこだね。分かったよ」

目を凝らしていたアレットにも分かったようで、顔を明るくする。

「じゃあ、あたしだけあの場所に行ってみればいいかな。皆はここに……って、万が一転移が発動した場合、この場所にいる皆はどうなるんだろうね?」

「それも知りたいですよね」

以前は先頭が魔法陣を発動させた瞬間、隊列全員が一斉に転移したのだ。したがって設置されている転移魔法陣の効果範囲は、魔法陣に乗っている者、でないことは明らかになっている。

ただそうなると、どこまでが効果範囲なのか。純粋に距離で決まっているのか、魔法陣を発動させた者の意識などによって変わるのか、もしくは今まで誰も転移に気づかなかったのだから、転移魔法陣の発動を目視できる者は全てなどという高度な指示が可能なのか。

今のところ何も分かっていない。

「ただその検証は迷いの古代遺跡の探索にはあまり関係がないかもしれないので……とりあえず、奥に行けるのかどうかを確認しましょう。転移魔法陣の範囲については、奥に行けないメンバーでいくらでもやれると思うので」

「確かにそうだね。じゃあ、あたしだけ行ってくるよ」

「はい。私たちはここにいます」

そうしてアレットだけがマルティナたちから離れて、一歩ずつゆっくりと転移魔法陣が発動する場所に向かった。全員が固唾を飲んで見守る中、アレットが魔法陣の発動する場所に足を踏み入れ――しっかりと地面を踏み締めたが、特に何も起こらなかった。

誰もが息を潜めてアレットの動向を見守り、約十秒後。ロランがマルティナに問いかけた。

「マルティナ、俺たちも一緒に転移したなんてことはないよな?」

「はい。転移していません。あの傷跡もそのままですし、他の場所もさっきまでと全て一致しています」

その言葉が響き渡り、アレットがもう一歩前に出た。そこからは躊躇いなく足を進め、十歩ほど歩いたところでガバッと振り返る。

「転移しないみたいだね!」

「そのようですね。これで奥に行けます……!」

マルティナが喜びを滲ませてそう告げると、ギードたち探検家が飛び上がって喜びを露わにした。

「ついにこの時が来たぞ!」

「迷いの古代遺跡の奥に行けます!」

「やりましたね!」

その喜びが全員に伝播し、皆で大きな成果を喜び合う。しばらく遺跡の通路内には、賑やかな声がこだましていた。

数分でその喜びも少し収まり、マルティナが冷静にこの先の問題を皆に共有する。

「皆さん、この先を探索する上で問題となるのは、まず転移魔法陣の有無です。もしこの先にも転移魔法陣があるのなら、そのすべての場所を明らかにして、そこを通る前に別の魔法陣で魔力を減らす必要があります」

この遺跡がどのぐらいの広さを誇るのか、誰も分からない状況だが、ここからの探索は根気が要る作業となるだろう。

地道に通路を地図に起こして、その地図に各種魔法陣の場所を書き入れていく必要がある。

「それからこの先は未知ですので、今まで以上の準備が必要でしょう。迷って遺跡内を彷徨うなんてことになれば、凄く危険です。とはいえ、この辺りは探検家の皆さんがプロだと思いますが……」

マルティナがそう告げると、ギードが握った拳をぐっと掲げて口端を持ち上げた。

「ああ、そこは俺たちに任せてくれ。地図を起こすのは得意だ。今までこの古代遺跡の地図が完成しなかったのは、どうしても地図に矛盾が生まれてしまうからだったんだが……その理由が転移だと分かったからな。それさえ分かれば、いくらでもやりようがある」

今までの古代遺跡探索でも、明らかに進んだ方向や距離と辿り着く場所がおかしいことは判明していたのだが、その理由は分からなかった。魔法陣という技術はとうに廃れており、誰も転移など想像もできなかったのだ。

「とても心強いです。では探検家の皆さん一人につき騎士さんたち数名ついてもらい、少人数の班で探索を進めることにしますか?」

マルティナの提案に、アレットが少し眉尻を下げながら口を開いた。

「でもあたしたちだけじゃ、どこで転移したのか気づかないと思うよ?」

「確かにそうだな。何か目印となるものを置くとしても、奥に進む間、定期的に置けるほどに大量の何かを持ち運ぶのは難しい。遺跡を故意に傷つけたり、色を付けたりするのも認められてないしな……」

基本的に発見された遺跡は保存のため、直接印をつけたりする行為は認められていないのだ。印を付けたい場合には、簡単に除去できる物を置くことになっている。

ただ迷いの古代遺跡はかなり広く、中に魔物や動物もいることから、以前の探索の時には目印があまり機能していなかった。

広さゆえに大勢のグループが中に入り、いくつもの目印が入り混じってしまったことも、混乱の原因となっていたのだ。

「そうですね……」

マルティナはどうすれば効率よく探索ができるのか考えたが、何も良い案が思い浮かばなかった。マルティナが全ての転移魔法陣の場所を明らかにするというのも、体力的な問題や護衛のサシャとロランが奥に入れないという理由で、現実的ではないのだ。

「とりあえず、奥にも転移魔法陣があるかどうかを確認してから話し合いましょうか。なければ最高ですし、もしあったとしても少しなら広場に戻ってしまった時間から逆算して、大体どの辺に魔法陣があるってことは分かると思います。そうすれば短い距離なら、目印を置いて確かめることもできるはずです」

その提案に皆は納得し、アレットが笑顔でまとめた。

「じゃあまずは、一旦広場に戻って班を作ろう。ここに来てる騎士は魔法を使える人が多いし……ハーディ王国の騎士団に追加の人材を頼めるかね」

「それは大丈夫なはずだ。今回の探索は陛下主導のものだからな。色々と融通が効く」

ギードの言葉にハーディ王国の騎士たちも頷き、今後の方針は決まった。

ここからはマルティナの能力というよりも、人手が必要な調査だ。早く結果を出すには人海戦術で頑張るしかない。

マルティナは皆の探索を待つ間に自分は何ができるのか、色々と考えながら広場までの道のりを歩いた。