軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

141、探索二日目

迷いの古代遺跡の探索二日目。マルティナたちは昨日と同じメンバーで、朝早くから遺跡に来ていた。

「皆さん、昨日話し合った通り、この遺跡には魔法陣が使われているという前提で探索をします。それで問題ないですか?」

すっかり探索の中心人物となったマルティナの問いかけに、まずはギードとアレットが頷いた。

「ああ、それで行こう」

「もちろん問題ないよ」

二人の後に騎士たちなど他のメンバーもやる気満々で頷き、皆で最初の広場に降りる。今日まずすることは、遺跡内にあるトラップが本当に魔法陣なのかどうかの調査だ。

マルティナはどうすれば魔法陣の有無を確認できるかと考え、魔法陣の発動には人の魔力が必要という部分に目を付けた。

この遺跡にある魔法陣が人間側から魔力を流す必要なく発動するとしても、魔法陣側から人間の魔力を取り込むような形で発動するのだろうと考えたのだ。

それならば、何度もトラップがある場所を同一人物が行き来すれば、そのうちその人物の魔力が尽きてトラップが発動しなくなる。

魔力切れと共にトラップが発動しなくなれば、なんらかの形で設置されているのは魔法陣であり、魔法陣側から魔力を取り込む機能を有すると、ほぼ結論付けられるのだ。

「今日はあたしが活躍するからね」

そう言ってグッと力瘤を作るように拳を持ち上げたアレットは、魔力が少ない人材として今日の検証役に選ばれている。

というよりも、マルティナの推測と検証内容を聞いて、アレットが立候補した形だ。

「アレットさん、今日はよろしくお願いします」

「あたしに任せておいて。バッチリ防水加工された外套を持ってきたし、何度も水を被るぐらいなんともないよ」

「心強いです」

そうして昨日と同じように滝のような雨が降る場所まで向かい、トラップがある手前でマルティナは足を止めた。

今日から、隊列の先頭にはマルティナがいるのだ。昨日の探索で通路を覚えたので、マルティナだけは正確なトラップの位置が分かる。

「ここなんだね?」

「はい、あと十歩ほどでトラップが発動する場所になります。――ではアレットさん、お願いしてもいいですか?」

「もちろんさ」

楽しそうな表情で外套を被ったアレットは、さっそく一人だけ隊列から離れ、トラップに足を踏み入れた。

するとその瞬間、ザーーーッ。

もの凄い量の雨が降ってきて、アレットが向こう側に抜けたら雨は止まる。このトラップは、雨が降ってくる範囲内に足を踏み入れている間のみ作動する仕組みだ。

ただ魔法陣の基本原理は変わっていない可能性が高いため、最初の発動時に魔力を勝手に取られるが、その後は自然魔力で作動し続けると推測される。

「改めて凄い雨量だな」

ロランの呟きにサシャが頷く。

「本当っすよね。ここで俺が魔法を使ったらヤバいっす」

「サシャは雷属性だもんな。水が近くにある時は俺に任せてくれ」

「はいっす!」

そんな二人の会話をマルティナが何気なく聞いている間にも、アレットはもう一度こちらに戻ってきた。その時にももちろん大雨が降り注ぎ、ザーーーッと他の音は一切聞こえなくなるほどの雨音が通路内を支配する。

まだアレットの体に変化はなさそうだ。外套の雨を軽く払ってよりキッチリと羽織り直したアレットは、またトラップが発動する場所へと戻っていった。

それを繰り返すこと、約十回。魔力が減ったことによってか、アレットの息が僅かに荒くなってきたのがマルティナにも分かった。

「アレットさん、大丈夫ですか?」

戻ってきたアレットにマルティナが咄嗟に声をかけると、アレットは少し疲れを見せながらも笑顔で手を上げる。

「問題ないよ。ただ魔力が減ってることは事実だね」

「ということは、やはりここにあるのは魔法陣で、その魔法陣は近くを通った人から魔力を勝手に取り込んで起動するってことですね」

「その可能性が高そうだね」

魔法陣が使われているという可能性を確信に近づけることができ、マルティナはつい口角を上げてしまった。

(必死にかき集めた書物からでも復元できなかった魔法陣の技術が使われている遺跡なんて、やっぱりこの遺跡には相当重要な情報が眠っているのかもしれない……!)

「とりあえず、もう一回行ってみるよ」

「はいっ、お願いします」

内心で高まっていたマルティナに声をかけたアレットは、少し休んだのが功を奏したのか、あまり疲れを見せずにまたトラップへと向かった。

しかし、さっきまで何度も繰り返してきた行動は、ここで初めて別の結果を出した。

「雨が、降らない?」

そう、アレットがトラップの効果範囲に足を踏み入れたにも拘らず、滝のような大雨は姿を現さなかったのだ。滝どころか、水一滴さえ降ってきていない。

「これって、魔力が足りないってことでしょうか」

マルティナの推測に、トラップの中心部まで歩いたアレットが振り返って告げた。

「そうかもしれないね。まだ魔力切れで動けないほど魔力が減ってるわけじゃないし、発動には結構な量の魔力が必要なのか、勝手に吸い出すにはあたしたち側に相応の魔力が残ってる必要があるのか、その辺かな」

そう口にしながら最終的にはトラップの向こう側まで足を進めたアレットは、何事もなく戻ってくる。

「うん、発動しないみたいだ」

「アレットさん、検証をしていただきありがとうございました。顔を拭いてください」

濡れているアレットの顔を見て布を差し出したマルティナに、アレットはニッと気持ちのいい笑みを浮かべながら受け取った。

「ありがとね。でも、あたしが立候補したんだからいいんだよ。それよりもこの検証で魔法陣の存在がほぼ確定したと思うけど、この後はどうするんだい?」

その疑問は他の皆も持っていたようで、全員の視線がマルティナに集まる。そこでマルティナは、魔法陣が発動しなくなってからも普通に動けているアレットを見て、先ほど思いついた作戦を口にした。