軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

137、本格的な探索開始!

「マルティナー! ギードの記憶では、この先に水が降ってくるトラップがあるらしいよ!」

「はいっ。皆さんの探索記によると、あと五分ほど歩いたところだと思います」

ギードがこうして覚えているように、分かれ道で全て一番左を選ぶ。などという進み方はほとんど全員がやっているので、探検記にはたくさんの情報が載っていたのだ。

それら全てを参照し、マルティナはこのルートならかなり正確な情報を持っていた。

「先頭に行きますね!」

マルティナがロランとサシャと共に先頭へ向かうと、ギードが警戒するような少し真剣な表情でいる。

「雨のトラップってかなり酷いのですか?」

「ああ、あれは雨というよりも滝って感じだぞ」

「それは、モロに食らったら最悪ですね。できれば避けたいですが、いくら調べても仕掛け一つ見つからないとか……」

「そうなんだ。どこからあんなに大量の水が流れてくるのかも、何も分からなかった」

「本当に不思議な遺跡だね〜」

ニコニコと楽しそうなアレットは、事前に準備しておいた外套を取り出して宣言する。

「じゃあ、あたしが皆から少し離れたところを先に進むよ。そうすれば、トラップの場所が正確に判明するからね」

「いいのですか?」

「もちろんさ。むしろあたしにやらせてくれないと困るよ」

やる気満々なアレットに皆が苦笑しつつ、トラップの発見役を頼むことになった。

マルティナたちから十メートル以上は離れたところを、ゆっくりと進んでいく。緊張感が場を支配し、誰も言葉を発さないまま数分が経過し――それは、突然起こった。

ザーーーッ。

本当になんの前触れもなく、外套を被ったアレットを滝のような雨が襲ったのだ。

トラップが仕掛けられているのなら、何かしら通路に変化があるかもしれない。そう思って通路を細部まで記憶しながら歩いていたマルティナだったが、雨が降る前と後で違いを発見できなかった。

(見た目にはなんの変化もないトラップ……? この遺跡が作られた時代には、そんな高度な技術があったのかな)

「凄いですね……」

「不思議だろ? ほんとになんの前触れもなく降ってくるんだ」

マルティナが考え込んでいる間に、他の皆も困惑を露にする。皆が今見た光景について話し合うが、何も有益なことは分からなかった。

そうしている間にアレットがトラップの範囲から出たのか、雨が止む。

「凄いね!」

トラップの向こう側で外套のフードを脱いだアレットは、頬を紅潮させていた。

「何か分かったかい?」

「すみません。何も分からなくて……今度はこちらに戻っていただけますか?」

「もちろんだよ」

フードを被り直したアレットがこちらに戻ってくると、さっきと同じ場所で雨が降る。

しかし、マルティナは何も変化を発見できなかった。

「その場所に足を踏み入れると、雨が降るのは確実ですね。ただ私の目にもトラップらしきものは分かりませんでした。壁も天井も床も、動いていないのですが……」

アレットが戻ってきたところで結果を伝えると、ギードは少しの落胆を露にした。しかしすぐに切り替えて、奥を指差す。

「とりあえず、今日はどんどん奥を目指そう。この道は俺の記憶が正しければ、あと三十分も歩けば最初の広場に戻るんだ」

「はい。大体の記録にそう書かれていました」

「じゃあ、進んでみようか」

ニッと口端を持ち上げたアレットに皆で頷き、マルティナたちは外套の数ごとに分かれて、雨の降るトラップを凌ぎながら奥に向かった。

奥からトラップの場所を越える形で外套を投げても、雨は降らない。

(あの場所に人が乗った場合に発動するのかな。たださっきから大量の雨が降ってる割には、地面にある水溜りの量が少ない気がする)

色々と疑問に思いながらも、詳しい検証は後回しにしようと思考を切り替え、全員がトラップを越えたところでまた奥に向かって歩き出した。

そしてそれから三十分後。今までの探検家たちと同じように、マルティナたちは最初の広場に戻ってきてしまった。戻ってきた通路は一番左だったので、最初に入った通路にそのまま戻ってきた形だ。

「なんだこの遺跡は。本当に面白いね。通路はずっと同じデザインだし、入り組んでるし、なんでここに戻ってきたのか全く分からないよ」

「そうなんだよ。この遺跡はまじでどう進んでもこうなるんだ」

楽しそうなアレットとギードの会話を聞きながら、マルティナは強烈な違和感を覚えていた。この広場に戻ってくる数分前に、景色が急に変化した気がしたのだ。

しかしこの遺跡の中はずっと同じデザインで、奥に行くほど入り込んだ土や植物などもほとんど存在しないため、確信は持てなかった。

マルティナはしっかり覚えようと通路全体を見ていなければ、さすがに全てを記憶することはできないのだ。実際に見ていないところを記憶するのは、さすがにマルティナでも無理だ。

(もう一回。そろそろ広場に戻るってところから、今度はちゃんと通路の詳細まで覚えながら歩いてみたい。そしたら何かが分かるかも)

探究心が抑えられなかったマルティナは、各々考察を語り合っている調査団の面々に向けて、声を張った。

「皆さん、同じ道をもう一度行きませんか?」

それからマルティナが詳細を説明すると、誰も反対せずもう一度一番左の通路に入ることになった。この調査団にマルティナの能力を疑っている者は、もういない。

ハーディ王国側の者たちも、赤点病の一件でマルティナには一目置いているのだ。

「じゃあ、さっそく行こう」

何かが分かるかもしれないと期待したギードは、最初よりも軽い足取りだ。アレットもその後に続き、先ほどと同じように他の皆も続いた。