軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

115、遺跡調査団

緊急会議が開かれてから数日後。王宮にある比較的大規模な会議室で、ハーディ王国に向かう調査団の面々が顔合わせをすることになった。

メンバーは国王とマルティナの話し合いによって決定され、まずはマルティナの護衛としてサシャとロランに加え、他にも全体の護衛として騎士が同行する。

さらにハーディ王国に詳しい外交官が数名と、雑務をこなすための官吏としてナディア、シルヴァンと他数名の政務部官吏。また、ラクサリア王家所属の探検家である女性も同行が決まった。

御者や馬丁に始まり、皆の身の回りを整える下働きの者たちも数名が同行するが、その者たちはこれから適切な者が選ばれる。

今日は下働きの者たち以外が全員集まり、初顔合わせを行う日だ。マルティナはロランとサシャ、さらにナディア、シルヴァンと共に指定の会議室へ向かった。

「もう顔合わせの日なんて、決まってからあっという間だったわ」

「本当に急だよね。出発も三日後だし」

探索はできる限り早く進めてほしいということで、次々と物事が決まっていったのだ。

「私に要請が来たのなんて昨日だからな。さすがに驚いた」

「すみません……同行する官吏の要望を聞かれて、ついナディアとシルヴァンさんの名前を出しちゃったんです。やっぱり一緒に仕事をしやすい人がいいかなって」

眉間に皺を寄せたシルヴァンだったが、マルティナの言葉に僅かに頬を緩める。そんなシルヴァンの変化を見逃さなかったのはロランだ。

「ははっ、嬉しいんだな。最近はお前の表情の変化がよく分かるようになってきた」

シルヴァンの肩に腕を回して頬をつんつんと突いたロランに、シルヴァンは照れ隠しなのか態とらしいほど大きく拒否を示す。

「馴れ馴れしいぞ! 別に嬉しくなどない。ただ今回の遠征に参加することが、私の官吏としてのキャリアに大きなプラスになるだろうと思って……」

「はいはい、分かった分かった」

ぶつぶつと呟かれた言葉をロランが軽く流していると、ナディアはマルティナに抱きついた。

「わたくしは素直に嬉しいわ。マルティナ、選んでくれてありがとう」

「ううん。こちらこそ受けてくれてありがとう。ナディアがいると凄く心強いよ」

「ふふっ、わたくしがマルティナを完璧に補助するわ」

二人が笑い合っていると、ニカっと輝く笑顔を浮かべてサシャも喜びを露わにする。

「俺も嬉しいっす! ハーディ王国ってどんな料理が美味しいんすかね」

いつも食欲優先なサシャに、戯れていたロランとシルヴァンは同時に苦笑と呆れを滲ませた。

「サシャは本当にブレないな〜」

「なんだかマルティナと似ているな……なぜ私の周りにはこんな者たちばかりが集まるんだ?」

本気で考え始めたシルヴァンをおいて、今度は少し真面目なロランが問いかける。

「そういえばマルティナ、今回は歴史研究家の皆さんは同行しないのか?」

「そうなんです。皆さんはあくまでも書物の研究がメインなので、陛下が王家所属の探検家に依頼を出してくださると仰いました。ラフォレ様たちはここに残って研究を続けてくださるそうです」

王家所属の探検家という存在を、マルティナは今回初めて知ったので、まだその存在についてイメージが固まっていない状況だ。

しかしマルティナの話を聞いて、ロランだけが表情を変えた。

「あの人か……」

「え、ロランさんはご存じなんですか?」

「ああ、俺が官吏になったばかりの頃に、一緒に仕事をしたことがある。あの人は国所属だが、いつもどこかしらの探索に行ってるから王宮にいることはほとんどないんだ」

そう説明しているロランの表情は苦々しいというか、どこか微妙な感じで、マルティナが不思議に思っていると――会議室に到着した。

マルティナはまた後で表情の意味は聞けばいいかと思い、扉をノックする。

「失礼します」

声をかけてから扉を開くと、中にはすでに数人のメンバーが集まっていた。その中に一際目立つ、王宮には似つかわしくないラフな格好の女性がいて、マルティナは一目でこの女性が探検家だと分かる。

下はダボっとした長ズボンを履き、上はタンクトップにブルゾンを腰に巻いている。そして髪型はまっすぐな茶髪を肩上で切り揃えていた。

「政務部官吏のマルティナです。今回はよろしくお願いします」

とりあえず室内にいる全員に向けて挨拶をすると、その目立つ格好の女性が座っていた椅子から立ち上がって、明るい笑顔と共に右手を差し出す。

「君がマルティナか! 話を聞いて会いたいと思ってたんだ。あたしはアレット。探検家をしてるよ。よろしくね」

勢いの凄い挨拶を少しだけ驚きながらも、マルティナはアレットと握手を交わした。

「は、はい。よろしくお願いします」

「随分と可愛い子なんだね! でも見た景色を全て記憶できるんだって? それを聞いた時には衝撃だったよ。なんて最高の能力なんだろうって! 探索した場所の全てを覚えておけるんだろう? あたしもその能力が切実に欲しいんだけど、どうすれば手に入るんだい!?」

前のめりでキラキラとした眼差しを向けられ、マルティナは僅かに体を逸らしながら眉を下げる。

「すみません。生まれつきの能力なので、手に入れる方法は分からなくて……」

「そっか〜まあ、しょうがないね。とにかく今回はよろしく頼むよ。迷いの古代遺跡の探索ができるなんて、もう楽しみで楽しみで楽しみで……」

アレットの勢いに完全に押されたマルティナは、さっきのロランの表情の意味を正確に理解していた。

(確かにアレットさんのことを知ってたら、あんな表情になるかも……)

どうすればいいのかと悩み、助けを求めるためにロランを振り返ると、マルティナと目が合ったロランは大きなため息を溢してから一歩前に出る。そしてマルティナとアレットの間に割って入った。

「アレットさん、その辺にしてください。俺の後輩が困ってます」

その言葉に顔を上げたアレットは、ロランの存在に少し目を見開く。

「ロランじゃないか! まさか今回の仕事も一緒なのかい?」

「そうみたいですね……」

遠い目をするロランとは裏腹に、アレットは嬉しそうな笑みを浮かべてロランの背中をバシバシ叩いた。

「ちょっ、痛いです! アレットさん力強いんだから、もうちょっと手加減を……」

「なんだ、貧弱だね。男だろう? あたしより強くなくてどうする!」

「いや、アレットさんよりも弱い人はたくさんいると思います」

そう呟きながらアレットから絶妙な距離をとったロランは、マルティナたちに紹介するようにアレットを示す。

「この人はこんな感じだが、実力は確かだ。遺跡を見ただけで大体の造られた年代が分かるし、知識量は凄いから頼りになる。それから剣とナイフ、弓、あと体術を使いこなしてかなり強い」

「ああ、今回は皆の役に立てると思う。他の皆もよろしく頼むよ!」

そうしてアレットとの少々強烈な初顔合わせが終わる頃には、会議室に他のメンバーも続々と集まり始めた。そして無事に初顔合わせは終わりとなり、今後の予定を確認したところで、今日は解散だ。

「これから急いで準備をしないといけないわ。忙しくなりそうね」

「うん、頑張らないとね。そうだナディア、持っていく服装とか化粧品の選定を、一緒にやってくれたら凄くありがたいというか……」

マルティナが荷物を準備していると、服や必需品よりもつい本を鞄に入れてしまうのだ。ナディアはマルティナの頼みですぐにその実情が分かったのか、呆れながら頷いた。

「分かったわ。今日の夜にさっそくやるわよ」

「うんっ。ありがとう……!」

そうしてマルティナたちは会議室を出て、そこから数日は慌ただしく準備を進めた。