軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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昼休みに体育祭の用事で生徒会室に行くと、引退したはずの友柄先輩がいた。

「友柄先輩!」

「あれ~吉祥院さん、久しぶり!」

うきゃっ!相変わらずかっこいい!

「今日はどうしたの?あぁ、校庭の使用許可ね」

「はいっ。先輩こそどうしたんですか?」

「ん?俺はお手伝い。まだ新体制になって間もないからね」

「そうなんですか」

当分は生徒会の用事はすべて私が引き受けよう。

「吉祥院さんは体育祭、どの種目に出るの?」

「私は毎年玉入れです。それから二人三脚にも出ますよ」

「そっか、怪我しないようにね」

「はいっ。友柄先輩は何に出られるんですか?」

「俺?俺は騎馬戦」

騎馬戦!

そうだ!友柄先輩こそ、あの伝説の騎馬戦バカにあと一歩まで迫ったつわものじゃないか!あの一戦のおかげで、皇帝は次の年に兵法まで学んできちゃったんだ。

そんな友柄先輩が出るとなると、皇帝は引退宣言したことを後悔するだろうなー。

「私、応援してますわね!」

「嬉しいけど、自分のクラスを応援しなくていいの?」

いいの、いいの。初恋の君の勝利のためなら、クラスなんて心の中でいくらでも裏切るよ。

「大丈夫です。ですから友柄先輩、絶対に勝ってくださいね!」

私はグッと握りこぶしを作った。

「よし!吉祥院さんが応援してくれるなら頑張っちゃおうかな。あ、そういえば、お前も出るんだっけ?騎馬戦」

友柄先輩が私の後ろに声を掛けた。

振り向くと同志当て馬が立っていた。

「あっ、同志……たの?水崎君」

あぶなーい!ナイスフォロー、私!

いつも頭の中で呼んでた癖が出そうになった。本人を目の前に「同志当て馬」なんて言ったら殺される。気をつけよう…。

そんな同志当て馬は、私を訝しげに見た。

「なに、今の」

「えっ?なんのことでしょう?」

あ、思わず目が右上向いちゃった。

益々怪しいといった顔で見てくる同志当て馬。まずい…。

「有馬。有馬も騎馬戦出るんだろ」

友柄先輩が同志当て馬の意識を自分に向けてくれた。ホッ。

「あ、はい。出ます」

あー、やっぱり。

「私のクラスでも、水崎君は強敵だと噂していましたわ」

「へぇ、有馬って強いんだ。じゃあ気合入れないとなー」

「友柄先輩ファイト!」

「おーっ!」

私たちの盛り上がりに同志当て馬は困惑顔だ。そして持っていた紙を友柄先輩に見せながら、

「…盛り上がっているところすみませんが、友柄先輩、体育祭の進行で相談が」

「うん?どれ?」

友柄先輩を同志当て馬に取られてしまった。だが仕方がない。同志の話のほうが重要だ。

それからふたりはなにやら来賓の挨拶について話し始めたので、これ以上邪魔しないように私もそろそろ失礼することにしよう。

「では私はこれで失礼しますね、友柄先輩。ついでに水崎君も」

「ついで…」

「あはは、ご苦労様」

私は友柄先輩の笑顔に見送られ、浮かれ気分で生徒会室を出た。

当て馬有馬が馬に乗る。うぷぷ、馬だらけだ。馬が三つで驫だね。

当って馬、有馬~と心の中で歌いながら教室に戻ると、佐富君を中心にクラスメート達が騒いでいた。

「佐富君、どうしたの?」

「あ、吉祥院さん。実は…」

佐富君の話によると、仮装リレーに出る女子がこの昼休み中に捻挫をして、突然出られなくなってしまったというのだ。その女子は今、保健室に行っているそうだ。

私のクラスではシンデレラの仮装をすることになっていて、シンデレラは柔道部に所属する、ガタイのいい 岩室崇(いわむろたかし) 君が女装することになっている。

そして捻挫をした子はネズミの仮装をして、かぼちゃを持って走る予定だった。

「代役はどうする?」

「出られる女子いない?」

昼休みで教室にまだ戻ってきていない女子もいるし、この場にいる女子達はあまり出たくはないようだ。まぁネズミ役だもんね。

う~ん、仮装かぁ。

私は手を挙げてみた。

「よかったら私が代わりに出ましょうか?」

「えっ吉祥院さんが?!」

「麗華様が?!」

クラスメート達が驚いた表情で私を見た。

「ええ。私は玉入れにエントリーしていますけど、玉入れなら捻挫をしていても出られると思いますの。だから種目を交換しましょうか?もちろんそのまま私が玉入れにも出場してもいいですけど」

「吉祥院さん、本当にいいの?」

佐富君が遠慮がちに聞いてきた。仮装リレーってキワモノ競技だからなー。まさかこの私が出るとは思わなかったんだろう。まぁ私もこんなハプニングがなければ率先して出ようとは思っていなかったけど。

「かまいませんわよ。足はあまり速くありませんが」

私は頷いた。私の返事を聞いて佐富君が笑顔になった。

「じゃあ代役は吉祥院さんということで決まりだね」

話が纏まりかけた時に、今度は私のグループの子達が不満を言い始めた。

「麗華様がネズミの格好なんてあんまりだわ」

「そうよネズミの仮装なんて麗華様に相応しくないわ!」

再び場がざわついた。ほかの女子達もなぜか酷いと言い出した。

いや、私は全然不満に思ってないんだけど?それに酷いといっても元々ネズミ役だった女子もいたわけだし。

なんとか宥めようとしても「麗華様がネズミの着ぐるみなんて!」と引かない。さてどうしようと思っていると「じゃあさ!吉祥院さんにはシンデレラをやってもらえばいいんじゃないか?」と、ひとりの男子が提案した。するとクラスメート達もそれに次々と賛同し始めた。

「吉祥院さんならお姫様役ぴったりだし」

「ゴツイ岩室に女装させて笑いを取ろうと思ったんだけど、正統派でもいいよな」

私のグループの女子達も「シンデレラなら」と納得したようで、あれよあれよと私がネズミからシンデレラに変更になってしまった。

私がシンデレラ。でもなぁ…。

「岩室!良かったな!女装するはめにならなくてさ!」

「お前もやりたくねーって言ってたもんな!」

シンデレラの仮装をするはずだった岩室君は友達に肩を叩かれていた。岩室君も「そうだな、ホッとしたよ」となどと言っている。

…でも私は知っている。面白がって柔道部の岩室君にシンデレラの仮装をさせることに決まった後、時々ドレスを試着した岩室君がちょっと嬉しそうだったのを。

「ホッとした」なんて言ってるけど、内心かなり落胆しているんじゃないだろうか。今もちょっとしょんぼりしているように見えるし。

「待ってください。私はネズミでいいですわ」

全員がえっ?!という顔をした。

「シンデレラの衣装は岩室君に合わせて作られていますし、私では身長が合いませんもの。それにシンデレラはアンカーですから、私には荷が重いですわ」

「でも麗華様…」

「その代り、着ぐるみではなく、グレーのワンピースにネズミの耳のカチューシャを付けて、ネズミの足型スリッパに手袋にしていただける?」

私としては着ぐるみでも全然いいんだけど、私の周りが納得してくれなさそうなので妥協案。結構可愛くなると思うんだけど。

「麗華様、本当にそれでよろしいのですか?」

「ええ。無理に丈を詰めたドレスで走っても怪我をしそうですし。それに私、岩室君の女装を楽しみにしていたんですもの!」

私の言葉にクラスメート達が笑った。

「岩室!吉祥院さんのご指名だからもう逃げられないぞ!」

「頑張れよー、女装シンデレラ!」

岩室君は「参ったなぁ」などと言いながらも口元が嬉しそうだ。本当に着たかったんだな、シンデレラのドレス。

岩室君には明日、家にある未使用の化粧パレットをプレゼントしよう。

ドレスだけじゃなくメイクもしたら、もっと喜ぶと思う。禁断の扉の向こうから帰って来られなくなるかもしれないけど。

次の日、化粧パレットを持ってくると岩室君は「ええーっ!」と言いながらもほとんど抵抗しなかった。ほっぺをピンクに塗って口紅を塗っただけだけど、本人は鏡を見ながらご満悦だった。

私はそんな岩室君に、体育祭の前日に使うようにと、高級シートパックをこっそり渡した。これを使うとお肌がつるつるになるのだ。岩室君は目を潤ませながら「俺、吉祥院さんについていきます」と言った。それは遠慮します。

女装癖のあるゴツ男子に懐かれてしまった……。