軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

60

カップラーメンが無性に食べたくなった。

そもそもラーメン自体を食べていない。吉祥院家が行く高級中華料理のお店では、精々お上品な五目そばくらいしか食べられない。

私はもやしとコーンがどっさり乗った味噌ラーメンが食べたい!

しかしこれは、ファーストフード以上にハードルが高いだろうなぁ。

中学生の女の子が、ひとりでラーメン屋さんに入るってかなり目立ちそうだし。

なのでカップラーメンでもいいやと思ったのだけど、これも部屋に臭いが充満してバレそうだし、食べ終わった後のゴミの始末にも困る。本格的なタイプのものは湯切りが必要だったりするので、厨房でごそごそやっていたら絶対見つかる。

でも食べたいなぁ…。

そんなことを考えていたら、素晴らしいアイデアが閃いた。

クローゼットの奥に隠してあるべびーらーめんにお湯をかければ、インスタントラーメンになるんじゃないか?

早速、マグカップとお湯を持ってきた。

マグカップにべびーらーめん投入。お湯投入。フォークでぐるぐるかき混ぜる。いただきます。

………薄い。

え、なにこれ。全然おいしくない。汁はお湯にちょこっとお醤油を垂らしたような薄い味だし、らーめんはふにゃふにゃだし。

こんなはずじゃなかった。貴重なお菓子をムダにしてしまった。

しかし残すのはもったいないし、証拠隠滅をしないといけないので、むりやり食べる。早くしないとふやけてどんどん嵩が増す。なんと恐ろしい食べ物!

既製の食べ物を変なアイデアでアレンジすると、ろくなことにならないと学んだ夜だった。

璃々奈はあれから鏑木に纏わりつくこともなくなり、ピヴォワーヌに入れろと駄々を捏ねることもなくなった。円城に感謝だ。

ただ完全におとなしくなったかというと、そうでもないらしく、1年生の中では相変わらず高飛車な振る舞いらしい。

まぁ突然別人のように低姿勢になったら、逆に心配になってしまうので、これくらいならちょうどいいかと思っている。同級生の子達には申し訳ないけどね。

一度こっそり1年の教室に様子を見に行ったら、璃々奈の手下の子達がおとなしそうな子ばかりだったので、かなり胸が痛んだが。

でも璃々奈の暴走が解決して、一応の平和が戻ってきたので、私の胃痛と暴食も治まった。良かった良かった。

このまま夜中に食べ続けたら、また子狸になるところだったからね。

あとは円城の“貸し”だけなんだけど、なにも言ってこない。不気味だ。あれは冗談だったのかな?いや、それはない。

前世のお母さんからも、借金は絶対にするなと口を酸っぱくして言われていたので、返せるものならさっさと返したいんだけどなぁ。

そんな毎日を過ごしていたある日、“夏合宿のお知らせ”が配られた。

夏休みに瑞鸞が提携している保養所で、2泊3日の夏合宿が開かれるのだ。

去年は補習もあったので私は不参加だった。しかし今年は補習もないので、できれば参加してみたい!

ただ夏合宿なんて面白そうなのに、参加者はそれほど多くはないらしい。私の周りの子も興味があまりなさそう。

なんで?と聞いたら夏休みはそれぞれすでに予定が入っていたり、早朝から起こされるのが嫌だとか、なにもない高原に行っても楽しくなさそうという意見が多かった。

そうだよね、お坊ちゃん、お嬢ちゃんにはあまり魅力的ではないかもね。

でも私は行ってみたい。

家に帰ってすぐに、両親に参加の意思を示した。

しかしお母様はあまり良い顔をしなかった。理由は、「吉祥院家の娘がこんな庶民的なイベントに参加するなんて」「日焼けしてしまうわ」「麗華さんにこんな不自由な生活耐えられない」などがあげられた。

不自由な生活と言っても、瑞鸞の夏合宿だから保養所もホテル並みで、掃除や食事の支度もすべて従業員さんがやってくれて、ただの旅行と同じなのに。

でもお母様みたいな考え方が主流だから、参加者が少ないのかな?そういえばお兄様が中等科時代に参加したという話は聞いたことないな。

それでもどうしても行ってみたかったので、なんとか頼み込んで参加させてもらえることになった。

先生に申込用紙を渡すと、まさか私が参加するとは思っていなかったようで、かなり驚かれた。そんなにマイナーなイベントなのか?

確かに私と同じグループの子は誰ひとり参加してないけどさぁ。そしてそれを知って、ちょっと不安になったけどさぁ。去年の補習みたいにひとりぼっちになったらどうしようって。

そんな私の考えを知ってか知らずか、最初驚いていた先生は、すぐに「だったら女子の合宿リーダーをやって欲しい」と言い出した。え~っ。

「私は夏合宿初参加ですし、リーダーなんて務まるかどうか…」

「大丈夫!吉祥院さんなら絶対やれる!」

結局押し切られ、またもや雑用係に任命されてしまった。あ~ぁ。

そして男子のリーダーは乙女な委員長だった。

お久しぶり、委員長。

「吉祥院さんが夏合宿に参加するの?!」

「ええ。何事も経験ですから」

「そうなんだ。でもリーダーを一緒にやるのが吉祥院さんなら安心かな。よろしく」

「こちらこそ」

日程表を見ると、バーベキューに花火と書いてある。これよ、これ!

私が求めていた、お母様曰く“庶民的なイベント”が体験できる!

花火、ずっとやりたかったんだけど、一度もやる機会がなかったんだよね。楽しみ、楽しみ。

こんな庶民的でマイナーなイベントには、もちろんあのふたりも参加しないし、ギャル達もいない。

あぁ、伸び伸びできそうだー!

あまりに楽しみすぎて、予定はまだまだ先なのに、荷造りを始めてしまった。

お母様がうるさいから日焼け止めは必須。虫除けスプレーに懐中電灯に常備薬に非常食に、あと鈴と笛も必要かな…と詰め込んでいたら、たった2泊なのにとんでもない量になってしまった。

2泊3日でスーツケースはないよねぇ。

でもなにを減らしたらいいのか、わからない。いっそ送っちゃおうかな。

あー、楽しみ!