軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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先生に、授業で使っているノートを集めて放課後に持ってくるよう頼まれた。

委員長とふたり、職員室に集めたノートを持っていくと、ちょうど先生が生徒会に渡す書類を作っていた。

これ幸いと私が届けに行くと立候補した。

委員長はまたもや生暖かい目で見てきた。うるさいうるさい。

生徒会室に行くと、ロミオ先輩が銀座の高級ラスクを食べていた。

先生から預かった書類を渡すと、眩しい笑顔を返された。うっ、目力に射抜かれるっ!

「吉祥院さんて働き者だよね。来年、生徒会入る?俺、推薦しようか?」

「いえっ、私にはとても務まりませんからっ」

ロミオ先輩のいない生徒会になんの意味があるか。私がこんなに働き者なのは、別の目的があるからだ。

「そんなことないと思うけど。でもピヴォワーヌだもんね。生徒会に入るのは無理かぁ。俺としては、ピヴォワーヌの吉祥院さんが生徒会との懸け橋になってくれればいいと思ったんだけど」

「それは…。でも私に出来ることがあれば、精一杯お手伝いさせていただきます」

「ほんと?じゃあ何かあったらよろしくね?」

「はいっ!」

素敵な先輩の笑顔に見送られ、私は生徒会室を出た。

相変わらず、かっこいいなぁ先輩は。

しかし…。

……銀座の高級ラスクか。

私はそのままピヴォワーヌのサロンに向かった。

サロンには何人かのメンバーがいて、優雅にお茶を飲んで談笑していた。

高等科のお姉さまがショパンを奏でている。

私は、テーブルの上の大皿に盛られたお菓子類を見た。

フィナンシェ、ダックワーズ、ヌガー、ガレット、ラスク…

銀座の高級ラスク。

間違いない。

ピヴォワーヌには私以外に先輩にお菓子を横流ししている人間がいる。

初めて先輩と会った時のセリフを聞いて、あれ?と思った。

「ピヴォワーヌからパクってこようと思った」って、どうやって?サロンはメンバー以外基本立ち入り禁止だから、勝手に入って盗ってきたら立派な犯罪だ。しかも相手はピヴォワーヌ、大問題になる。

でも誰かが侵入したなんて話、聞いたことがない。もちろん許可を得て先輩がこの部屋に入ったって話も。

なのに先輩は時々、お菓子を食べている。瑞鸞は基本、お菓子の持ち込みは禁止だ。バレンタインなどのイベント時は黙認されているけど。

学院でお菓子を食べられる特権はピヴォワーヌのサロンのみ。一般生徒の模範になるべき生徒会には許されていない。

だったら、あのお菓子はメンバーの誰かが差し入れているのだ。

誰だ。

私はスパイに復帰した。

次の日からピヴォワーヌのサロンを見張り、誰がお菓子を持って帰るかをチェックした。

普通はお菓子を持って帰る様なことをするメンバーなどいない。

私だって周りの目が気になって、先輩への貢物は数回しか調達できなかった。

すると、ひとりの先輩がこっそり、コンシェルジュにいくつかのお菓子を分けてもらっていた。

先輩がサロンを出たので、後をつける。

確かあの先輩は、中等科3年の 深草香澄(ふかくさかすみ) 様。

ピヴォワーヌ主流派の優理絵様達のような華やかさはないけど、清楚で穏やかな方だ。

深草先輩は校舎裏の小さな花壇までやってきた。

誰かを探すように深草先輩があたりをキョロキョロしていると、「香澄」と呼びかける声がした。

ロミオ先輩だった。

深草先輩は嬉しそうに駆け寄った。そしてふたりは花壇のそばに座って、楽しげに話し始めた。

小さな声だったので内容までは聞き取れなかったが、お菓子をおいしそうに食べるロミオ先輩を見る深草先輩の幸せそうな笑顔とか、ロミオ先輩が深草先輩の頭を撫でたりしているのを見て、まぁ察した。

私はその場を後にした。

しばらくすると、深草先輩が校舎裏から出てきた。そのまま帰るようだったので、駐車場の手前で声をかけた。

「深草先輩」

「きゃっ」

深草先輩は可愛らしい悲鳴をあげた。

「えっ、麗華様?どうなさったの?」

「先輩、単刀直入にお聞きしますわ。生徒会長とお付き合いされてますの?」

深草先輩の顔がサッと強張った。

「どうして?」

「さっき偶然ふたりをお見かけしてしまったものですから。それに生徒会長は時々ピヴォワーヌのお菓子を食べていますし。誰か親しい方がピヴォワーヌ内にいらっしゃるのだろうなぁ、と」

「……」

その後、深草先輩から聞いた話は、

2年生の時同じクラスになって徐々に親しくなったこと。3年生になってクラスが変わってからロミオ先輩に告白されたこと。

ロミオ先輩は生徒会長なので、ふたりのことは誰にも言えず秘密にしていること。

食べ盛りのロミオ先輩の為に、時々ピヴォワーヌのお菓子を持っていってあげてること。それがばれないために、ロミオ先輩が「パクってきた」とごまかしていること、等々。

「別にそこまで隠す必要はないのでは?」

「だってピヴォワーヌと生徒会は代々水面下で対立しているわ。特に今のピヴォワーヌ会長の沖島先輩は生徒会嫌いよ。千寿も隠すことない、堂々としていればいいって言うけど、私は怖いの。ピヴォワーヌで白い目で見られるのが」

あ、なにげに千寿って呼んだ。

「香澄」と「千寿」。へー、ほー、ふーん。

「お願い、麗華様。このことは誰にも言わないで」

「言いませんわ。私ではなんの力にもなれないと思いますけど、おふたりのことは祝福いたします」

「本当に?!ありがとう!千寿がね、麗華様ならピヴォワーヌと生徒会の垣根を越えられる存在になれるんじゃないかって言ってたの。私もそう思うわ!」

「買い被りです。私は生徒会に入る気はありませんし」

ロミオ先輩の勧誘は、思いっきり私情が入っていましたか。

このぶんじゃ高等科に進学しても、周囲に公表することは出来なさそうだもんな。

でもあんなに堂々とピヴォワーヌのお菓子を食べてたら、いつかバレると思うな。

もしかしたらそれも、ロミオ先輩の計算か?

「麗華様は強いから。年下だけど私、麗華様に少し憧れているのよ?あのね、私麗華様ともっと仲良くなりたいと思っていたの。ダメかしら」

「いえ光栄ですわ」

深草先輩は嬉しそうに笑った。頼りなげで可愛らしい、こういうところをロミオ先輩は好きになったのかもしれないな。私とは正反対だ。

それから深草先輩のことは名前で呼ぶことになり、たまに恋の相談にまで乗る約束をしてしまった。

私は迎えの車に乗って帰り、自室のベッドに突っ伏した。

友柄先輩はロミオだったけど、ジュリエットは香澄先輩だった。

私なんてその他大勢か、せいぜいジュリエットのばあやくらいの役回りだった。

……私だってきゃあきゃあ恋に浮かれたかったんだ。みんな楽しそうに恋しているのに、私だけボーッと毎日を過ごしているだけなんてつまらないもん。

なんだよ、もう少し夢を見させてくれてもいいじゃないか。

後をつけて確かめるようなことしなきゃよかった。余計な現実を知ってしまったよ。

うおーん!私このまま、一生片思い人生だったらどうしよう。

なんだか私が誰かと両思いになるっていう未来が全然想像つかないんだけど。

だって凶だし!

前世も今世もモテない人生を宿命づけられているんだ、きっと。

うおーん!当て馬人生なんてヤだよぉ!うおーん!

うおーん!……。

次の休みに、お兄様が北海道の動物園に連れてきてくれた。前からずっと来たかったから凄く嬉しい!

白クマ!アザラシ!ペンギン!

「お兄様、また連れてきてくださいね!」

「そうだねぇ。今度はいつになるんだろうねぇ」

??お兄様は忙しいからって意味かな?

でもいつかまた絶対連れてきてくれると約束してくれたので、良しとした。