軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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瑞鸞学院初等科では、定期的な試験の結果が発表される事がない。

中等科以降になると、総合と教科別で上位20名までが貼り出されて、本人にも学年順位が通知されるらしいけど、初等科では本人告知もない。

一応通知表はあるけど、絶対評価なのであまり信用できない。

と言う事で、他の子達の学力がどれ程なのか、いまひとつわからないのだ。

そして自分がこの学校で、どれくらいのレベルなのかも。

大体、瑞鸞に初等科から通うような女子は、大学卒業と同時に政略結婚をしたり、親のコネで就職して、その間に結婚相手を探すような子達がほとんどなので、ガツガツ勉強して学力あげようなんて子は、あまりいないのだ。

しかし私は違う!

今のところ皇帝の怒りは買っていないが、主人公が入学してきて万が一私と衝突したら、皇帝の逆鱗に触れて、家ごと制裁される可能性は捨てきれないのだ。

それにお父様が仕事で不正発覚→退陣要求→財産没収→一家没落パターンが根強く残っているし。

あぁお父様、心を入れ替えて下さい。(そもそも不正しているのか知らないけど。冤罪であれ!)

家が没落すれば結婚相手もいないだろうし、自力で稼いで食べていかないといけない。

その為には勉強だ。

私立の学費を払えなくなった時を考え、国公立大学に入れるだけの学力が欲しい。

将来は、出来れば自分だけじゃなく親も最低限養えるくらいのお給料を稼ぎたい。

そこで私は、塾に通いたいと両親に頼んだ。

「女の子なのだから、勉強はそれほど頑張る必要はないのではなくて?」

案の定、お母様は否定的。

それよりフルートかバイオリンはどうかしら、なんて薦めてくる。

ちなみにお父様は子供達の教育はお母様に丸投げだ。こういう時にはなんの役にも立たない。

「でもお母様、私、勉強にとっても興味があるんです」

う~ん、説得の材料としては弱いか。

では、

「中等科に上がれば外部から優秀な方々が入ってきますわ。その時に落ちこぼれたくないんですの」

ダメ押しで「ピヴォワーヌメンバーとして恥ずかしくないように…」と言えば、お母様の眉がピクリと上がった。

お母様にはピヴォワーヌの呪文がよく効く。

「そうねぇ。だったら家庭教師をつけましょうか」

それは困る! 私は家庭教師ではなくて、塾に通いたいのだ。

学力向上のほかに、もうひとつの野望を果たすために。

「塾に行きたいの。よその学校の方々の様子も知りたいですし」

身を乗り出してお願いする。

お受験前にあれだけ幼児教室通わせたんだから、学習塾に行かせてくれてもいいじゃないか!

「でも吉祥院家の娘が一般の子供と仲良くする必要なんてないでしょう。それにああいうところは、公立の小学校に通ってるような子供もいるのよ。可愛い麗華さんが怪我でもしたら大変」

でたよ、選民意識。

「付き合う相手は選ばないとね」なんて言ってる。

付き合う相手を選んだ結果、君ドルの吉祥院麗華はあんなどうしようもないろくでなし令嬢になっちゃったんじゃないか。

「大丈夫よ、お母様。勉強をしに行くだけなのだから。お母様の教えはちゃんと守るわ」

元公立小学校出身としては、ちょっとイラッとしたけど我慢、我慢。

「ね、お願い、お母様」

胸の前で指を組んでお祈りポーズ。

どうだ、届くか、可愛い娘のおねだりビーム!

「いいんじゃないかな」

おぉっ! いきなり後方から援軍が!

私とお母様のやりとりを聞いていたお兄様が、味方についてくれた。

「せっかく麗華が勉強したいって言ってるんだし。僕が初等科の時に通っていた塾に行ったら? あそこは授業も丁寧でわかりやすいよ」

お兄様が通っていた塾! それは信用できそうですね!

どうです、お母様。お兄様も推薦しています。さぁ、さぁ、色よい返事を!

お母様は私達ふたりの顔を見て、ふぅと小さくため息をつくと、

「わかったわ。明日入塾手続きをさせましょう」

ひゃっほぉぉぉっ!!

やった! やったよ! 塾に通える!

「ありがとう、お母様!」

私はこみあげてくる笑顔を抑えきれなかった。

これで私の野望が叶う…。

「お兄様、さっきはありがとう」

リビングを出て部屋に戻る時、廊下でお兄様を追いかけてお礼を言った。

さすが私の優しいお兄様よね~。

うふふ。

「別にあれくらいいいよ。それよりやけに塾にこだわっていたけど、何か別の目的でもあるのかな」

ギクッ。そんなにわかりやすかったか?

「う~ん。家だとつい甘えて勉強する気がなくなっちゃうし~。瑞鸞以外の子達とも仲良くなりたいし~」

目を斜め上にさ迷わせながら、なんとか絞り出す。

「ふ~ん」

お兄様はしばらく私をジッと見つめていたが、私がつい口をむーっと突き出したら、

「わかったわかった。じゃあそういう事にしておこうか」

ポンポンと私の頭を叩いて、お兄様が笑った。

わかってくれましたか、お兄様。

「でもねぇ、麗華」

お兄様が耳元に顔を近づけて

「人は嘘をつくときには、目線が右上にいくんだよ」

そのまま笑いながら「じゃあね、おやすみ」と言葉を残してお兄様は自分の部屋に入っていった。

えっ、なに今の。

やだ、怖いあの13歳。なんでそんな事知ってるの?

優しく穏やかなお兄様は、実は腹黒?

嘘を見抜く術を知っているのは、自分が嘘をつく時に利用するためだったりして。

お兄様にはどうか、私の心のオアシスのままでいてほしい。

そんでもって、今度から嘘つくときには気をつけよ…。