軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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初等科の卒業式がやってきた。

全員このままエスカレーターに乗って瑞鸞中等科に進むことが決まっているし、校舎も離れているとはいえ、同じ敷地内なので、特に寂しいとかいう気持ちはない。

みんな似たような思いなのか、号泣するような子もいなかった。

ただこの初等科の紺の制服を着られるのも今日が最後ということで、みんな写真撮影に余念がない。

もちろん私も友達と一緒に撮ったりしていた。

今日の私の巻き髪も、晴れの舞台に気合の入ったお母様の指示で、いつも以上の巻きっぷりだ。

鏑木と円城も、朝から女子生徒に囲まれている。

騎馬戦の英雄は、わざわざ式に参加しにきた下級生の男子生徒達からも写真撮影を頼まれていた。

卒業式には両親のほか、花束を抱いたお兄様も来てくれた!

お兄様が贈ってくれた花束は、ピンク色の薔薇やカーネーション、ガーベラなどで作られた、とっても可愛いものだった。

ありがとうお兄様!安易に真っ赤な薔薇の花束にしないところがさすがです!お兄様の中では、私はこんなピンクの可愛いイメージなのね!

と感動していたら、お兄様がその中の濃い色の薔薇を指差して、

「この薔薇の名前はうららって言うんだよ。麗華の花だね」

ズッキューーーンッ!!

お兄様!貴方いったい何者ですか?!

私の花!私の薔薇!

乙女心がキュンキュンしすぎて、心臓が持ちません!

私のモテ期は、今日もお兄様限定でフル稼働のようです!

笑顔が眩しいっ!

などと心の中で身悶えていたら、周りのお友達のみなさんも「麗華様のお兄様、素敵…」とうっとり。

そうであろう、そうであろう。

私のお兄様、世界一!

未成年にして、この乙女心を確実に撃ち抜くスキルをどこで身に着けたのか、お兄様のプライベートに若干の不安を覚えるけれど。

お兄様、変なバイトしていませんよね?

そんなお兄様を、さすが私の息子と満足げなお母様と、何も持ってこなくてちょっぴり肩身の狭そうなお父様。

いいんですよ、お父様。こういうのは物じゃなく気持ちの問題ですからね。

むしろメタボ気味なお父様が、お兄様と同じことをしたら、私ちょっと引いちゃいます。

私の名前の薔薇の入った花束をもらって浮かれる私とその家族で、パシャパシャと桜の木の下で写真を撮っていると、1組の親子がやってきた。

「本日はおめでとうございます。吉祥院様」

「おぉ!これは鏑木様!こちらこそ雅哉君の卒業、おめでとうございます!」

うひーっ!天国から地獄!

なぜ声をかけてくるか!

「麗華さん、卒業おめでとう。そのお花とってもきれいね。麗華さんにぴったりよ」

「あ、ありがとうございます」

今日の鏑木夫人は鮮やかな深い青のスーツで、前回レストランで会った時よりもさらに美しかった。

白いエレガントなスーツを着た私のお母様とは対照的だ。

「麗華さん、ぜひ中等科でも雅哉と仲良くしてあげてね」

「まぁ、こちらこそ!ぜひ雅哉君には麗華と仲良くしていただきたいですわ。ねぇ、麗華さん?」

否定も肯定もせず、ひたすら笑顔でごまかす。

嫌な展開だ。とても嫌な展開だ。

お願いだから、穏便に早くこの場を去ってくれ。

私の祈りもむなしく、両家の親達の談笑は終わらない。

ふと前を見ると、退屈そうな鏑木と目が合った。

フンと目を逸らされた。

うわ~、思いっきり無関心。

私だってあんたとなんか、仲良くしたくないんだからね!

「麗華さん、この前のお話覚えてる?ぜひ今度我が家に遊びにいらしてね」

「は?」

鏑木が鼻にしわを寄せて自分の母親を見た。

「ありがとうございます」

とりあえず笑っておく。絶対行きませんから。

ほら、鏑木の嫌そうな顔。なんでお前がうちに来るんだよって顔してる。わっ、睨まれた!

「まぁまぁ!麗華さん、ぜひ遊びに行かせていただきなさいな!」

「良かったなぁ、麗華。いやぁ、麗華は雅哉君に憧れておりまして」

憧れてないし!なに勝手に話作ってんのお父様!

お母様、目が輝いてる!

あぁどうしよう…。

なんで鏑木の不機嫌オーラに気が付かないの!

憧れてないから!家に行くつもりないから!だからその不信そうな顔で睨んでくるのやめて!

隣のお兄様に縋るような目を向けても、お兄様も困った顔で成り行きを見守るしかないみたい。

誰か助けてー!

「母さん、秀介達が来たから俺行くよ」

「あら、秀介君?」

校舎から円城とそのお母さんらしき人物が出てきた。

円城のお母さん、初めて見た。儚げな美人だな~。

「おぉ、円城様の!ぜひご挨拶させていただきたいですね」

ぎゃあ!ますます話が大きくなってきてる!

「お父さん、お母さん。麗華はお友達と最後の初等科に名残を惜しみたいようですよ。行かせてあげてもいいですか?せっかくの卒業式ですから」

お兄様!

「いやしかし…」

「俺も、秀介と初等科を見て回りたいから」

鏑木も乗っかってきた。

「しかたのない子ねぇ。いいわ、いってらっしゃい。申し訳ありません、吉祥院様。わがままな子で」

「いやいや、そんな。雅哉君の優秀な評判は耳にしておりますよ」

鏑木は私の家族に挨拶をすると、足早に円城の元に去っていった。

私もそれに続かねば!

「では私もお友達のところに行って参りますわ。鏑木様、失礼いたします」

会釈をして、女子生徒の輪の中に急ぐ。

あとは頼んだ、お兄様!

親達からやっと逃げられたと思ったら、待ち構えていた芹香ちゃんと菊乃ちゃん達に鏑木親子との話を追求されまくった。もう勘弁して~。

せっかくの卒業式なんだから、もっと楽しく終わりたかったよ。

たかが数分の出来事に、ぐったりだ。

っていうか、入学式も同じパターンに陥ったらどうしよう…。

お兄様の花束をぎゅっと抱きしめた。

しかし、うららかぁ。そんな薔薇があったとは知らなかった。

ロココと薔薇。くっ、我ながら似合いすぎるぜ。

これぞ少女マンガ的展開じゃないか?私にそんなイベントを起こしてくれるのが、血の繋がった兄しかいないっていうのが、少し切ないけど。だがそれもまた良し。

これも末吉の呪いなのだから。

きっと中等科に上がれば、私にも素敵なラブな展開が待っているに違いない。

家に帰ると、興奮した両親に鏑木家訪問をせっつかれたが、鏑木は女嫌いだから行ったらむしろ迷惑になると、言い逃げた。

でもきっと、あの様子じゃ諦めてないだろうなー。

本当に、変な野心を抱くのはやめて欲しい。