軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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秋も深まり、卒業アルバム作成のための写真選びが始まった。

私は卒業アルバム委員ではないけれど、なるべく積極的に委員の子に協力した。

大丈夫だろうとは思うけど、万が一あの鹿襲撃事件の醜態の写真が入っていたら、一生の恥になるからだ。

今のところ、私に関しておかしな写真はないけど、油断は出来ない。

卒業アルバムに載せる写真は、学院専属カメラマンが撮った行事の写真と、アルバム委員が撮ったり生徒達から載せて欲しい写真を募ったりした中から選ばれる。

まぁわかりきってたことだけど、写っている生徒に偏りがあるなぁ

生徒達から提出された写真は、ほとんど鏑木、円城メインで、提出者がそこに一緒に写りこんでいる写真ばかりだ。記念にしたいらしい。

これを全部載せたら、ただのふたりの写真集になってしまうので、ほとんど不採用に回す。

目立つような生徒達の写真はたくさんあるけど、おとなしくて地味な生徒は写っている写真を見落としがちなので、しっかりチェックする。

いざ卒業アルバムが出来て中身を見た時、「僕(私)の写真が1枚もない…」なんてことになったら、傷ついちゃうからね。楽しみにしていた保護者の方々も哀しむだろうし。

なので、生徒名簿と写真を念入りに照らし合わせる。

「麗華様が手伝ってくれるので、とても助かってます」

そう言って笑ってくれたのは、同じクラスの 本田美波留(ほんだみはる) ちゃん。

同じグループではないけど、真面目な子で去年は学級委員の副委員長をやっていた。

「集合写真以外で、生徒全員が載っているか確認するのって、結構大変なんですよね」

「そうね。つい見落としちゃったりしますものね」

おとなしい子は自分から写っている写真を提出したりもしないので、本当に1枚もない場合もある。

そういう時は、アルバム委員が給食風景などを撮ってあげる。出来ればひとりではなく、友達と楽しく過ごしている写真で。

卒業アルバム制作担当の先生も一緒にチェックしているので、たぶん大丈夫だと思うけど。

ついでに、私が写っている写真は、なるべく可愛く撮れている物を選んでおく。

手伝っているんだから、これくらいいいよね。

「これ、プティピヴォワーヌの写真ですね」

見せられたのは、先日カメラマンがサロンに来て撮っていった写真。

毎年、ピヴォワーヌは卒業アルバムに別枠で集合写真を載せられる。一応、学院の顔なので。

写真はソファの中央に座る皇帝とその隣の円城を中心に、ほかのメンバーが取り囲む構図だ。両サイドには会の名である赤い牡丹の花が飾られている。

しかし問題は、私が皇帝の隣に座っていること。

皇帝の隣に座りたい子なんて、ほかにもいるだろうに、なんで私が。

でも周りが「麗華様、どうぞ」と有無を言わさず勧めてくるので、拒否しきれなかったのだ。

露骨に嫌がれば、皇帝の不興を買いそうだし。

せめて円城の隣のほうが…と思ったら、その円城に笑顔で拒否された。……酷い。

おかげで何度もカメラマンに笑顔が固いと注意され、隣からは舌打ちされ、散々な目にあった。

これはそんな因縁の写真なのだ。

「これがピヴォワーヌのサロン。素敵。憧れます…」

そう言ってうっとりと写真を見つめるアルバム委員達。

うん、無駄に豪華な部屋だしね。“王者の風格”牡丹様が華やかさに拍車をかけてるし。

セレブ感たっぷりの瑞鸞校舎でも、ピヴォワーヌは別格だから。一般の生徒は入室できないしね。

内実は、お菓子食べてお茶飲んでだらだらしてるだけなんだけど。うん?それは私だけ?

「それより、ほかの写真も早く決めましょう」

脱線しそうなアルバム委員達に声をかけて作業再開。

お、リレーの時の秋澤君の写真だ。蕗丘さん、この写真持ってるのかな。話したらもらってきてとか言いそう。

騎馬戦の鏑木の写真はもちろん絶対載せる。むしろ載せなかったら相当なブーイングを受けるに違いない。

今年の運動会でも、騎馬戦は皇帝陛下とその馬の独擅場だった。陰で相当練習してたらしい。クールな顔して実はかなりの負けず嫌いだ。

2年連続で桁外れの強さを見せた皇帝は、伝説となった。うぷぷ。

大量の写真選びは大変だけど、あまり接点のない子の意外な姿を知ったりして、なかなか面白い。

1年生の時からの写真だから、顔が今と全然違っている子もいるし。6年間というのは、子供を驚くほど成長させるのだなぁ。

私は1年生の頃からいんちきロココだ。いい加減、イメチェンしたい…。

しばらく前からよく、委員長と目が合う。

こちらを見ては目が合うとパッと目を逸らす。

何回か用事があるのか聞こうと思ったんだけど、赤い顔で誤魔化された。

さっきも給食のときに目が合った。

いったいなんだろう。

「麗華様、どうかしました?」

一緒に写真を見ていた本田さんに声をかけられた。

「いえ、なんでもありませんわ」

笑顔で返事をする。

まぁ、気のせいかな。

「…私、麗華様とこんな風に仲良く話せる日が来るとは思ってなかったので、なんだか嬉しいです」

そう言って本田さんがはにかんで笑った。

わぁ、可愛い!

本田さんは学級委員をやるような真面目な子で、私のグループとはちょっと違うので、連絡事項以外であまり話したことはなかったのだ。

でもこの子、葵ちゃんに通じる可愛さだ。

きっといい子だ。友達になりたい。

「私も、美波留さんとお友達になれて嬉しいわ」

修学旅行以来、私は友達の押し売り作戦に味を占めている。言ったもん勝ちだ。

陰で「こっちは友達だなんて思ってないのに、押し付けがましい」とか言われてたらどうしよう…と、ちょっとドキドキしているんだけど。

「えっ友達?!あ、私も嬉しいです」

うふふ、友達またひとりゲット。

卒業が近づくと、恒例のサイン帳なるものが出回る。

そういえばあったなー、サイン帳。懐かしい。

前世でズボラだった私は、最初は張り切って書いてたけど、途中から面倒くさくなって適当に書いて渡してたな。

一言メッセージって案外書くことなくて困るんだよね。バリエーションが年賀状並みにあまりない。

ほかの子とは違う、個性的でおしゃれなことを書こうと張り切ると、大人になってとんでもない黒歴史になることがあるので、とても危険だ。

私にも、思い出すだけで壁にガンガン頭を打ちつけたくなるような、恥ずかしいメッセージをいくつか書いてしまった覚えがある。

変なポエムとかね…。

あぁっ!私に思念であのサイン帳を燃やす超能力があれば!

そんなサイン帳の記入の依頼が私にも来る。

瑞鸞はほぼ全員がそのまま中等科に進むのに、サイン帳なんているのかねーなんて思いつつも、面倒だけど誰にも頼まれないのはもっと切ないので、笑顔で引き受ける。

きれいなシールと色ペンを使ってごまかす。

「麗華様、サイン帳書いてもらえますか?」

本田美波留ちゃんからも頼まれた。友達なのでもちろん引き受け、私のサイン帳も書いてもらう。

ちなみに私のサイン帳はお母様が用意した、ヨーロッパの王室御用達文具メーカーのものだ。キャラ物で充分だよ…。

例のふたりにはサイン帳の依頼で長蛇の列が出来ているみたい。

私の周りの子達もぜひ書いてもらいたいと意気込んでいる。

鏑木も優理絵様に怒られて以来、前よりはきちんと対応するようになったようで、サイン帳も面倒くさがりながらも、一応書いてくれるらしい。でも名前だけ。まさにサイン帳。

中には「○○へ、って名前書いてください!」というお願いもあるそうだ。芸能人か。

書いてもらった子のサイン帳を見せてもらったけど、本当にノートの真ん中に“鏑木雅哉”と書いてあるだけだった。

ちなみにその子もしっかり名前を入れてもらっていた。字はさすがに上手かった。

円城のは名前のほかに“卒業おめでとう”が付いてくる。

まぁ、どっちもどっちだ。

メッセージを考えるのに苦労している私としては、その潔さがちょっと羨ましい。

そんな事をつらつらと考えながら、放課後ピヴォワーヌのサロンに行くために、ひとり廊下を歩いていると、緊張した顔の委員長に声をかけられた。